【中華主義】中国人が韓国よりも日本を”好き”な理由

サッカーや野球の日韓戦が行われたら、中国人はどっちを応援するのか？

あるとき知り合いの中国人にそんなことを聞いたら、「それなら日本だろうね。実際ネットにはそんな声をよく見るし」と言う。
過去の歴史を考えると日本を嫌ってもおかしくないのに、なんで日本のサポーターになのか？

中国語メディア『日本華僑報』のこの記事にそのヒントがある。

Record China（2023年5月13日）

韓国はなくしたのに、日本はどうしてまだ漢字を残しているのか―華字メディア

「日中韓は互いに気に入らない存在ではある」と中国人らしいストレートな表現をするこの記事は、それでもこの３国には漢字で固く結ばれた歴史があると主張する。
これが具体的にいつの時代を指しているのかはナゾ。
でも、中国が唐王朝だったころ、日本と韓国は遣唐使を派遣して先進的な文化や制度を学んでいたから、このときなら３カ国の人間が漢字を使って筆談していたことは想像できる。

それが韓国では戦後になってから、日本や中国への反発や愛国主義的な雰囲気から、漢字を追放してハングルだけで表記しようとする動きが高まり、朴正煕（パク・チョンヒ、ぼくせいき）大統領が漢字廃止宣言を出す。
それで1970年代に、韓国社会から漢字が急速に消えていく。（朝鮮日報における漢字）
知人の韓国人に話を聞くと、いまでは漢字を使う機会がまったくないから、普通の韓国人は自分の名前ぐらいしか漢字を書けないらしい。
漢字を廃止した理由について、記事には韓国人のこんな意見を紹介する。

「漢字は煩雑で後進的な物。世宗大王が言ったように、ハングルは容易に習得できるため、漢字よりハングルの方が完璧な表記システムだ」

＊1446年に朝鮮国王だった世宗（セジョン）がハングルの解説本「訓民正音」を公布した。
言ってみれば世宗はハングルの生みの親。

韓国はサヨナラしたのに、日本はどうしてまだ漢字を残しているのか？
その理由を記事は説明する。

「日本は中国文化を尊重しているためネガティブな感情はなく、漢字廃止を叫ぶ人もいない」

ほかにも、そもそも漢字を廃止する必要がないからとも書いてあるが、日本がいまも漢字を使う理由について中国へのリスペクトを指摘する中国メディアはよくある。
とても中国人らしい視点だ。

世宗大王

ハングル文字

記事のこの文からも、韓国と日本へ対する中国人的な見方がよく表れている。

「憎らしいのは生来の反骨者である韓国が率先して精華である漢字を捨てていることだ」

＊精華（せいか）：最もすぐれているもの。真髄。美しくてはなやかなこと。

漢字を使っていることを理由に「日本は中国文化を尊重している」と考えるのなら、その反対の選択をした韓国は「生意気（憎らしい）」となる。
中国という権威に逆らう（反骨）と言っているのは、韓国は中国に従うべきという意識があるからだろう。

そう言えばきのう韓国の全国紙・朝鮮日報がコラムで、韓国を「格下あつかい」する中国を批判していた。（2023/05/13）

中国の傍若無人は、「小国は大国に追随すべき」という時代錯誤的中華主義に起因する。韓国を同等の主権国とは見ていないから、外交ではなく訓戒を行い、内政に干渉する。

中国はなぜ韓国をないがしろにするのか

中国旅行でお世話になった日本語ガイドが、日韓を旅行して感じた違いをこう話す。

「ソウルにある王宮は北京にある王宮に似ているし、韓国の伝統建築はまえに中国のどこかで見た感じがした。でも、街中にあるハングルはまったく理解できない。
日本ではお城とか独特な建築があって、日本語がまったく分からない人でも、漢字を見れば少しは内容が理解できるから親しみを感じる」

韓国は全体的には中国の強い影響を受けていても、文字では強烈にそれを拒絶して個性や民族性をアピールしている。
そんな韓国を見て「小国は大国に追随すべき」ほどじゃないとても、それに通じる感想を持つ中国人がいると思う。
だから、”精華”である漢字を廃止した韓国に「憎らしい」「生来の反骨者」と感じて、そういう気持ちがどこかで「中国はなぜ韓国をないがしろにするのか」という韓国の不満につながる。

中国では歴史をめぐる日韓の争いなら韓国を、スポーツの日韓戦なら日本を応援する人が多いと言った知人の中国人は、その理由のひとつにいまでも日本が漢字を使っていることを挙げた。
自国を誇りに思う「中華主義」の立場からすると、たしかにこれは日本を好きになる重要ポイントだ。