【江戸小紋】反骨精神や“粋”の美意識が生んだ日本文化

 

北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げると日本に通告したからいま大騒ぎだ。
これまで北朝鮮はこう言いつつ長距離弾道ミサイルの発射実験をしてきたし、今回も実際には軍事偵察衛星の可能性が指摘されている。
日本の領域内に破片が落下する可能性もあるから、政府は自衛隊に破壊措置命令を出した。

ロケットを打ち上げる技術は弾道ミサイルとほとんど変わらないから、こんな言葉遊びやこじつけができてしまう。
こういうズルがしこい知恵は別のところで使うべきだ。
たとえば江戸時代に流行った「江戸小紋」みたいに。

 

現代の日本人にとっては「ぜい肉は敵」だけど、日中戦争が行われていた昭和初期には「ぜいたくは敵だ」というスローガンがあった。
人間の欲望は無限だから、ぜいたくにもキリがない。
人々が際限なくそれを求め出すと国が乱れたり、ついには滅びたりするから、身のほど知らずのぜいたくは世界中で敵視されてきた。
王が豪華な象牙の箸を使うのを知って、国の終わりを予言した賢者もいる。

【腐敗する権力】酒池肉林からの自殺、箕子の憂いから国王

キリスト教世界でぜいたくは「七つの大罪」のひとつ(ごう慢)だ。

 

日本では江戸時代に、平和な世の中が到来すると生産活動が盛んになって、時間とお金に余裕のある人々が増えてきた。
すると「ぜいたくは敵」という考え方が強く出てきて、国民が一線を越えないように、幕府はぜいたくを禁止する「奢侈(しゃし)禁止令」を何度も出す。
幕府の要人なら中国の古典を親しんでいたから、象牙の箸を国家滅亡の始まりとした「箕子(きし)の憂い」の話を知っていた人も多いのでは。

この「ぜいたく禁止令」によって、庶民が身につける服の素材は布や木綿だけで、飾りを付けるのもダメになった。
帯に絹を使うのも禁止され、紫や紅梅色といった派手な色もNGとなる。

*この禁令は農民・町民・武士・皇族といろんな立場の人間を対象に何度も出されたから、くわしい内容はリンク先で確認されたし。

使う布地の種類や色まで幕府に厳しく限定されたから、日本の衣装・装飾文化は衰退していくしかない。…ということでもなかった。
江戸時代の人たちには反骨精神がある。
民衆が楽しんでいた「いかのぼり」が問題になって幕府が禁止令を出すと、人々は「これはイカじゃなくてタコです」と言い出して、名前だけ変えて同じ物を空へ上げて楽しんだ。
これが「凧」の由来になったという。

【凧の由来】江戸時代に、なんでイカが“タコ”になったのか?

 

この時代には参勤交代があって全国の武士が江戸に集結していたから、どこの藩の人間か見て分かるように、武士の礼装(裃:かみしも)にはそれぞれの藩を表すデザインが付けられていた。
するとそのうち、平和ボケした大名たちが模様の豪華さを競い合うにようになったから、「調子にのんな」と幕府が規制をもうける。
それで、遠くからだと無地にしか見えないけど、近くに寄ってみると実は細かい模様がたくさんある「江戸小紋」が発達した。
時代が進むと、庶民もそんな着物を着るようになる。

「着物は無地で、デザインを付けることは禁止する」というぜいたく禁止令を幕府が出すと、職人はかえって燃え上がり、模様を極限まで小さくした着物を作るようになった。
限界へのチャレンジを繰り返すことで、職人たちのテクも上がっていく。
無地のものを「無地に見えるもの」と解釈した江戸時代の人たちの反骨精神や、近くで見て初めて分かる“粋”の美意識から江戸小紋はドンドン発達していく。

着る人がハッピーな気分になれるように、めでい七福神や「大根と金おろし」のデザインも考案された。
薬味の大根をおろすことが「薬(やく)をおろす」になって、それが「厄を落とす」に転じる。
そんな縁起の良い模様の江戸小紋も作られるようになる。
そしていまでは、日本が世界に誇れる文化のひとつになった。

 

参考:染一会のサイト「日本に〝粋〟という「美」を完成させた江戸小紋

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。