日本に対する韓国人の考え方は、反日や親日よりも「用日」

 

「秋深き 隣は何を する人ぞ」

俳句の神・松尾芭蕉は人生の最後にこんな句を読んだ。
さて隣国どうしの日韓では、お互いが「なんでそんなことをする(言う)んだ?」と疑問を感じることがよくある。
季節に関係なく、一年を通じてそんな状況が続いている。

韓国人の考え方や行動について、日本人がよく不思議に思うことは反日と親日の共存だ。
「アサ芸biz」の記事(2023年7月7日)

韓国政府が処理水の海洋放出を容認 「海に旭日旗」反日行動と旅行先人気NO.1の温度差

いま福島原発の処理水をめぐって「反日行動」が起きている一方で、旅行先で日本は人気ナンバーワンだ。
日本人としてはこの温度差に「?」となる。

数年前には、日本政府が対韓輸出の管理厳格化を発表すると、韓国は大反発し、「日本製品は買わない、使わない、日本旅行はしない」の「ノージャパン運動」が全国的に起きた。
当時、韓国全土に広がった反日デモや不買運動は日本のメディアでも連日報道されて、その激しさに驚く日本人は多かった。
それが今では「ノージャパンってなに?」という感じだ。

聯合ニュース(2023.05.24)

日本旅行の関心度が急上昇 一時期の「ボイコット」いずこ=韓国

下の朝鮮日報の記事でもわかるように、韓国社会の雰囲気は一変し、日本旅行を楽しみにしている人の熱気が高まっている。(2023/02/28)

韓国側で反日感情が高まり、「ノージャパン(日本製品不買)運動」まで行われた2019年とは全く違うムードだ。

「ノージャパン?何それ?」 訪日客の3人に1人は韓国人…三一節も休暇取って日本旅行

 

1919年3月1日、日本の統治下にあった韓国で独立を求める大きな運動が起きた。
その三・一独立運動を記念する祝日が「三一節」で、この日は韓国で反日感情が高まりやすいのに、有給休暇を使って連休にして日本旅行を楽しむ人もいた。

こういう状態に矛盾を感じ、「韓国人は反日的なのか親日的なのか?」という疑問を持つ日本人は多い。
でも、韓国人の記憶が初期化されたわけではなく、一般的には反日でも親日でもなく、「用日」の人が多いのだ。

 

10年ほど前、ボクが韓国人の友人(20代の男女)とソウルの中心部を歩いていると、建設中の建物があって、安全対策として工事現場のまわりが鉄の壁で囲まれていた。
これは日本でもよく見かける光景だ。
だからこそ、韓国人の発想がよくわかる。
ソウルで見た鉄壁には、韓国各地の有名な建物や自然の写真がいくつもあって、歩きながら観光名所を知ることができた。
「これは○○山で、韓国の~にあります。わたしも行きましたよ」、「これは〇〇寺ですね。歴史的な背景は~」といった話を聞きながら歩くと、自然と韓国の知識や興味が増えてくる。

一方、ボクが知る限りでは、日本にある工事現場の鉄壁は何の絵も飾りもない、ただの無機質な物体でしかなかった。
街にあるこうした壁を「ギャラリー」に変えて、外国人に韓国の魅力をアピールし、観光誘致につなげようとする積極性は、日本人には欠けていると思う。

 

「韓国は面積は日本の約4割しかないけれど、いろんな見どころがあるんだな~」と感心しながら歩いていると、次に出てきたのはこの写真だった。

 

 

これは、どう見ても嵯峨野の竹林なんだが…。
以前、3人で京都旅行をした時、ボクがこの場所に案内すると、「すごく雰囲気がいいですね!」と彼らはすっかり気に入った。
韓国の伝統的な門の内側に、京都の風景が広がっているのは一体どういうことなのか?
2人も予想外の事態に言葉を失って、一時停止の状態になっている。
それまで韓国の観光地を紹介していたのに、なんで嵯峨野の竹林が使われているのか、その理由は正確には分からないが、2人の見方によるとこれは”ミス”ではない。担当者はきっとここを京都の風景と知りながら、韓国風の門と組み合わせて画像を作った。

この時、彼らはこんな話をした。

何も知らない外国人が見たら、ここを韓国の風景とカン違いすることは間違いない。
担当者もそれは理解している。
でも、その弊害よりも、この写真を見せて、外国人に韓国の良いイメージを持ってもらうことを優先した。
日本人は韓国の対日認識について、反日や親日という言葉をよく使うけど、一般的な韓国人はそのどちらかに分けられるほど単純でもない。
実際には、自分の利益を最優先に考えて、日本を利用しようとする人が一番多い。
というのは韓国人にとって、もっとも大切なのは自分だから。
政治家が大声で日本を非難する理由は、日本が嫌いだからではなく、そうすれば簡単に国民の支持を得られるから。
日本を悪者や小ばかにするような記事を書くと、読者の気分がスカッとしてよく読まれるから、利益を追求するメディアはそういう記事を載せることが多い。
韓国人の心の中には、日本を嫌いな気持ちと好きな気持ちが同時にあって、政治家やメディアがあおると反日感情に火がついて、一気に燃え上がる。
でも、それでネガティブな感情が発散されると、社会が落ち着いてきて、今度は「日本好き」の気持ちが出てくる。
韓国人の基本的に熱しやすくて冷めやすい。
日本に対しては、過去にひどいことをされたから、「これぐらい言ってもいいだろう」という認識もある。

 

後になって考えると、2人が言っていたことは「用日」だ。
韓国では、自分の利益を手に入れるために、日本を利用しようとする態度や考え方を「용일(ヨンイル:用日)」という。韓国の政治家の行動を見ると、「反日でも親日でもなく、用日だな」と思うような人がよくいる。
たとえばこんな政治家とか。
朝鮮日報(2023/07/03)

「汚染水糾弾決議」を強行した日、日本旅行を計画していた共に民主党議員

福島原発の処理水について、「あらゆるデマを広めて反日をあおってきた政党の重鎮議員」が日本を激しく非難しながら、実は日本でゴルフを楽しもうと計画していたことが判明した。
国民には「日本製品を買うな!」と呼びかけていたのに、自分は日本車を愛用していた政治家もいた。
こんな二重基準は日常茶飯事で、「韓国の政治家あるある」でしかない。

ただ、用日には副作用がある。
歴史問題で日本に強く謝罪や賠償を求めると、韓国に対する日本人のイメージが低下し、自分たちが受け取るはずの利益も減ってしまう。
それはとても困る。
だから、韓国は日本に対して、歴史問題の追及と経済協力を分ける「ツートラック」の考え方で日本にアプローチをする。
他にも、外交で日本を利用しようとすることもある。

中央日報(2022.05.11)

【時論】激しくなる米中対決、日本というカードを活用しよう

ただし、経済、外交、安全保障において自国の利益のために、日本を活用しようとする考え方には拒否反応を示す日本人が多い。

産経新聞(2014/1/21)

日韓関係の冷却化がボディーブローのように効いている現状があるからに違いない。韓国側の悲鳴のようにも聞こえるが…。

韓国メディアが使い始めた「用日」…反日だが利益のため日本を利用せよという韓国の「深刻背景」

 

でも、「用日」という考え方は正しい。
国民どうしがお互いを知って理解し、友好関係を築くことは重要だ。
でも、国家としては、他国との友好や協力をアピールしながらも、「本音と建前」をうまく使い分けて、政府は自国の利益を最優先に考えて外国と付き合わないといけない。
他国が滅亡したら、自国も消滅するような運命共同体では困る。
政治家が自国民の生命や財産を第一に考えて、その国益守るために他国を有効活用することは国際的には常識だろう。
だから、韓国の「用日」は何も悪くない。
相互主義の原則に基づいて、日本も国としては「用韓」の考え方で韓国と付き合えばいいのだ。

相手への期待が高いと、何か問題が生じた際の失望も大きくなるから、お互いに自国の利益を中心に考えていることを認識すれば、適切な距離をとることができる。
そうすれば、韓国で反日と親日が逆転し、「ノージャパン?何それ?」となってもあまり気にならないし、「なんだ、用日か」と納得できるのでは?

個人的にも、日本人が韓国人と付き合う場合は、相手への期待値を低めに設定することをおすすめする。
そうすれば、日本が好きで親切なはずの韓国人の友人が、ノージャパン運動を呼びかける投稿に「いいね!」を押しても、あまりダメージを受けなくて済む。
相手をあるがまま受け入れることで、一喜一憂しなくなり、関係が長続きすると思う。

 

 

韓国 「目次」

【日本人と韓国人の違い】アメリカ人が感じた、似て非なる国

良くも悪くも自己主張:アメリカ人が思う日本人と韓国人の違い

日本と違う韓国文化:酒やタバコをのむとき、手で口を隠す

アメリカ人が感じた日本と韓国の違い/運転が荒い理由とは?

歴史の違い。日本にあって韓国や中国にないもの。幕府と天皇!

 

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。