【我愛老婆】日本と中国(台湾)で違う、“妻”を表す漢字

 

五輪フィギュアスケートで二回連続で金メダルに輝き、さらに国民栄誉賞を受賞した羽生結弦さん。
”生きるレジェンド”となった羽生さんが先日、

「この度、私、羽生結弦は入籍する運びとなりました」

と発表したから、日本列島がどよめいた。
「おめでとう! でダレと?」というのが気になるところだが、日本のメディアはプライバシーに配慮して詮索していないようだ。
大地が揺れたの日本だけじゃない。
中国でもSNSのウェイボーで、次の2つがホットワードの1位と2位にを占めたという。

「羽生結弦宣布結婚」
「羽生結弦老婆」

「宣布(せんぷ)」とは、世の中に広く知らせるという意味だから、これは結婚発表のことでいいとして、ツッコミどころは「老婆」だ。
羽生さんのおばあさんが孫の吉報を聞いて、涙を流した様子が中国メディアに紹介されると、それを見た中国人ももらい泣きをした、というワケではない。
日中では漢字の意味が違うのだ。

中国語で「老婆」は妻を指す言葉だから、「羽生結弦の老婆(妻)ってだれよ?」と中国で大きな話題になる。つまり、日本と同じ現象が起こったわけだ。
千年ほど前の中国の詩に、「すべての家事をする妻」の意味で「老婆」という言葉が使われたことがきっかけで、妻は「老婆」と呼ばれるようになったとか。
他にも妻を「婆娘」と表現することもあるから、中国の漢字は奥が深い。
ちなみに、「おばあさん」を表す中国語には、老奶奶、老太婆、老大娘、老婆婆といろいろある。

 

数千年前の中国で生まれた漢字は、有能で便利なツールとして周辺国に広まった。
日本で漢字の使用が始まった時期については、5~6世紀ごろと唱える人もいれば、いやいや2~3世紀ごろだと主張する人もいて、ハッキリしていない。
でもまあ、日本人と漢字の付き合いには、およそ1500年の歴史があるとみていい。
現代では、日本と中国(台湾)で使われる漢字の感じはかなり違っている。
その代表例が「老婆」だ。

知人の台湾人女性が結婚し、それをSNSで報告すると、コメント欄には「老婆」のワードがいくつもあったから、日本人のボクとしては場違い感がハンパない。
彼女はまだ20代なのに、結婚したら浦島太郎レベルで急速に老化したような。
でも、本人の話では違和感はゼロ。
「いえいえ。老婆って言われないと、結婚した気にならないじゃないですか」ということだったから、ソウなんですかと。
漢字感覚がまるで違う。

中国にいたある日本人も、漢字の違いからカン違いをしてしまった。
彼が街を歩いていると、「我爱(愛)老婆」という文字を見つけ、「おいおい、我爱你(=I love you)なら理解できるけど、どんだけおばあちゃんが好きなんだよ」と彼は中国人の敬老の感覚にあきれる。
知り合いの中国人にその話をして、「中国人は感情的で、思ったことをストレートに言うよね。やれやれ、ついていけないよ」と言ったら、「それは妻のことだから何も変じゃない」と言われて、目からウロコが落ちた。
中国や台湾を旅行したら、「我愛老婆」と書いてあるTシャツを見かけるかもしれない。

中国や台湾で妻や新妻を表す言葉で、日本語かけ離れている言葉は「老婆」以外にもある。
それは「爱人(愛人)」。
日本語で「愛人」は妻の反対側にいる存在で、いわば“敵”を指す言葉なのに、知り合いの中国人に聞くと、「愛する人だから、妻(夫)や恋人で自然じゃないですか」とのこと。
「妻と愛人じゃ、ピッチとビッチぐらい違うやろ」と思うのだけど、彼の説明には説得力がある。
日中では、同じで漢字でも意味が違うことがよくあるのだ。
だからもし、これから羽生結弦さんが中国人に向けて、SNSに「我愛老婆」や「我愛愛人」と書いても驚かないように。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。