ルワンダ人が見た日本 宗教事情・不思議に感じたこと

 

今回は、日本に住んでいるルワンダ人の留学生から聞いた話をシェアしようと思う。
ただ、ルワンダは日本から遠く離れていて、歴史的な接点もほぼないから、日本での知名度はかなり低い。
ルワンダと聞いたら、「ジャンプで始まる連載? テーマは冒険もの?」と思う人もいるかもしれない。
なので、まずはルワンダの基本情報を確認してよう。

面積:2.63万平方キロメートル(四国よりやや大きいサイズ)
人口:1,263万人
首都:キガリ
民族:フツ、ツチ、トゥワ
言語:ルワンダ語、英語、フランス語、スワヒリ語
宗教:キリスト教(カトリック、プロテスタント)、イスラム教

ソース:外務省ホームページ「ルワンダ共和国(Republic of Rwanda)基礎データ」

東京都立図書館によると、ルワンダという国名は「人々の土地」という意味。(ルワンダ共和国
ルワンダの歴史も簡単に紹介しておこう。

15世紀ごろ、ルワンダ王国が建国された。
1890年にドイツの支配を受け、第一次世界大戦でドイツが敗北するとベルギーの植民地となる。
1962年 ベルギーから独立する。
1994年に大統領が暗殺されると「ルワンダ大虐殺」が始まり、100日ほどで80万人が殺害された。

ドイツやベルギーの支配を受けた影響から、現在のルワンダにはキリスト教徒がとても多いのだ。
そんな国からきた人をお寺に連れて行き、そのあとガストで話をした。

 

 

ルワンダ人:「オレは日本に住んで2年になる。でも、いまだにお寺と神社、仏教と神道の違いがよくわからない。具体的にどう違うんだ?」

ーー「在日外国人あるある」ですね。
ザックリ言うと、鳥居があれば神社、それがなかったらお寺です。
内容としては、仏教では善行を積むと良い結果が、悪行を積めば悪い結果が返ってくるというカルマの考え方が重視されています。

一方、神道では穢れと祓い、つまり、心身を常に清浄に保つことが重要視されています。
ところで、あなたの宗教は何ですか?

「キリスト教徒だよ。キリスト教では、正しい行いをすれば救われ、神の意志に背くことをすれば地獄へ行くとされている。だから、考え方としては仏教に近いね。」

ーー仏教はもともとインドで生まれた宗教で、中国や朝鮮半島を通って、6世紀に日本へ伝わりました。
でも、日本には、それ以前から神道があったんですよ。
だから、日本人にとって仏教は外来宗教で、神道は民族宗教になります。
ルワンダ人にとってはキリスト教が外来宗教ですけど、独自の民族宗教はありますか?

「あるよ。昔は、イマナ(Imana)という神がいて、人々はそれに祈る習慣があったんだ。イマナはキリスト教でいうならゴッドだね。彼はすべての生き物を創造し、支配する存在だった。
でも、ベルギーの植民地時代に、その信仰は反キリスト教的と見なされ、徹底的に排除された。その結果、現在のルワンダでは、イマナの影響力はゼロではないけれど、ほとんど失われてしまった。
日本では、神道という古代の信仰がいまも残っているか。それはスゴイな。」

ーーまぁ、それほどのことはありますね。

*実際、固有の民族宗教の影響が、21世紀のいまでも強く残っている国はわりとレアなのだ。
ルワンダのように、キリスト教の広まりによって民族宗教が取って代わられる例は、メキシコなどの中南米でも見られる。
知り合いのタイ人や韓国人に、仏教が伝来する前にあった固有の信仰について聞いても、「何だろう? ちょっと分からない」と首をひねる。
ヨーロッパでも、キリスト教が伝わる前には「ペイガニズム」という信仰があったが、現在ではほとんど消えてしまった。
日本固有の価値観や伝統を伝える神道を、日本人はもっと大事にすべき。

 

「今度はこっちから質問があるんだが。」

ーーなんでしょう?

「ルワンダでは、ベルギーの支配下でイマナの信仰が「異端」とみなされて排除され、人々にキリスト教の信仰を強要したんだ。その際、イマナを信じる人たちの衝突があった。
6世紀に日本へ仏教が伝わったとき、神道と仏教は対立しなかったのか?」

ーーその問題はありました。
日本国内で、「中国や朝鮮半島と同じように、わが国も仏教を信じるべきだ!」と主張するグループと、「いやいや、そんなことをしたら、日本の神々がきっと怒り出す。仏教は受け入れてはいけない!」というグループに分かれて対立しました。
最終的には、日本ではどっちも排除しないで、神道と仏教の両方を信じることになったんです。

*用明天皇が日本で初めて仏教を信仰した天皇で、神仏習合の道を開いた。

欧州と日本の“初”:コンスタンティヌス1世と用明天皇のしたこと

 

「なるほど。でも、2つの宗教を同時に信じるというのは、不思議な感じがするな。」

ーー日本では、神道と仏教は別々ではなく、一体化したんです。
だから、両方を同時に信じても矛盾はありません。

神社(神道)とお寺(仏教)の違いがわかりづらいのは、外国人だけじゃなくて、日本人にもいます。
でも、それは大きな問題ではありません。その違いを正確に理解していなくても、日常生活で特に困ることはありませんから。

「なるほど。今日の話で、日本のことがわかったよ。ありがとう。」

ーーいえいえ。

 

飛鳥時代に、「丁未(ていび)の乱」という事件が起こった。
この時、仏教を推す蘇我馬子と、それに反対する物部守屋が対立し、物部氏は敗れて衰退していく。
その後、蘇我氏は黄金期を迎えたが、調子に乗り過ぎた。
645年の「乙巳(いっし)の変」で、馬子の孫である入鹿(いるか)が中大兄皇子によって暗殺され、大化の改新が始まり、日本は新しい時代を迎えた。
ボクが中学生のころ、歴史の授業で先生が、蘇我馬子と入鹿を「合わせて“馬鹿”と覚えておくように」と言ったことは今でも記憶に新しい。

 

 

アフリカ 「目次」 ①

アフリカ 「目次」 ②

【最高峰】タンザニア人が比べた、キリマンジャロと富士山

アフリカ人と日本人の宗教観 神社で「恐怖」を感じたわけ

【白人の責務】アフリカ・中東で直線の国境が多い悲しい理由

アフリカから貧困がなくない理由 「国に貧しさが必要だから」

 

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ABOUTこの記事をかいた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。