【歴史問題】仲良しモロッコ人とフランス人の“地雷”

 

ネット上には、日本人と韓国人が交流を楽しむグループがいくつもある。
ボクの知っている仲良しグループでは、メンバーの誰かが「今度、日本(韓国)へ行きます~」と投稿すると、ほかのメンバーが流行の店やおすすめスポットをいくつも紹介してくれる。
でも、誰かが歴史に関する問題に触れると、すぐにコメント欄は暴風雨に突入してしまう。
韓国人としては、現代の日本は好きでも、過去に支配された歴史を憎むのは当たり前で、その「恨」の感情の無い韓国人なんて本当にレアだ。
そんな日韓関係でも、フランスとモロッコの関係に比べるとまだマシかも。

 

今月8日、モロッコで過去100年で最大とされる規模の地震(マグニチュード6.8)が発生した。
モロッコには、泥レンガや石積みの家が多く、そういう建物は強い地震に耐えられないから、約3000人が亡くなり、約5700人が負傷した。(9月14日現在)
くわし情報は「モロッコ地震」で。

 

 

こうした災害では3日が経過すると、被災者の生存率は急激に低下してしまう。
だから、その間の救助作業は特に重要で、「72時間の壁」や「黄金の72時間」と呼ばれている。
それにもかかわらず、モロッコはこんな判断をしたらしい。

産経新聞の記事(2023/9/13)

モロッコ 旧宗主国フランスの支援拒絶か 緊張関係露呈

マクロン仏大統領は、フランスにはモロッコを支援する用意があると強調したが、モロッコの国王ムハンマド6世から公式な返事はなかった。
どうやら国王はフランスの支援を拒絶したらしい。
その原因はおもに過去の歴史問題にある。

1907年、モロッコでフランス人医師が殺害された。
するとフランス側は「モロッコの野蛮な先住民からの挑発的で弁護の余地のない攻撃」を受けたと主張し、モロッコへの軍事侵攻を開始する。
これがきっかけで、1912年にフランスはモロッコを保護国とし、支配を始めた。
その間、約4万人のモロッコ人が第一次世界大戦でフランス軍の兵士として徴用されたり、経済的にも抑圧や搾取を受けたりして、モロッコの人たちはとても苦しい時間を過ごす。
フランスに対する反乱は何度も起きたが、どれも成功しなかった。(フランス保護領モロッコ
それでも第二次世界大戦後、激しい独立闘争が起きて、モロッコは1956年に独立を達成した。

その後、モロッコと元宗主国のフランスは良好な関係を築いてきた。
しかし、フランスが2021年に、不法移民対策としてビザの発給を半減させる決定をすると、モロッコがそれに大反発し、両国の関係は冷え込んだ。
モロッコが西サハラの領有権を主張しているのに、フランス政府が正式に認めていないことも、モロッコ側を不快にさせている。
今回の「支援拒否」で、フランスとモロッコの複雑な関係が改めて明らかになったわけだ。

これに日本のネット民の感想は?

・被害者は何でもいいから支援して欲しいだろ
・嫌われまくりやな フランスw
いったいどんな統治をやってたんだw
・フランスはどんだけ恨まれるような事やって来たんだよ。人道支援も拒否られるとか
・CFAフランの闇で検索すればフランスが嫌われる理由が分かる。
・意地張ってる場合か?

 

モロッコの陶器

 

知り合いに、フランス語がペラペラのモロッコ人女性がいる。
モロッコはフランスの植民地だったから、いまでもフランス語を話すモロッコ人はザラにいるらしい。
彼女が通っていた大学では、授業はすべて(かほとんど)フランス語で行われ、彼女もフランス語でレポートを書いていた。
彼女にはフランスの大学に留学した経験があって、そこでもすべてフランス語でこなしていたから、自分のフランス語能力はネイティブと同じレベルだとさらりと豪語する。

そのモロッコ人女性は、名古屋の大学にも留学していた。
当時、彼女がいちばん仲良くなったのは、同じ留学生のフランス人男性だった。
日本にいて、自由にフランス語を話せる相手は彼くらいしかいなかったし、性格も自分に合っていた。
だから、よく2人で一緒に出かけたり、日本でのグチを言い合ったりして、良い友人として楽しく過ごしていた。
彼がモロッコへ旅行に来たときは、1ヶ月近くも彼女の家に泊まって、両親とも仲良くなったという。
モロッコ人の感覚からすると、この程度のホスピタリティは普通らしい。

そんなに仲が良くても、むしろ仲が良かったからこそ、歴史問題はタブーとなった。
その話になると、モロッコ人として彼に謝罪までは要求しないが、あの植民地支配は悪かったと認識してほしかった。
しかし、彼はそれをダンコ拒否して、こんなことを言う。

その歴史は自分が生まれる前の出来事で、オレ個人の問題ではない。文句があったら、フランス政府に言いやがれ。
それに当時、フランスはモロッコに鉄道を導入するなどして、都市を近代化させたではないか。
いま、多くのモロッコ人がフランス語を話せて、いろいろなメリットを得ている理由は何か?
それは、フランスの統治があったからだ。

こう話す彼に、罪悪感なんて1ミリもない。
むしろ、「モロッコ人こそフランスに感謝するべきではないか?」と主張しやがる。
歴史問題になるといつもこんな感じだ。
価値観も世界観も違いすぎて、お互い絶対に分かり合えないことが分かるだけ。
しかも、この話ではお互い妥協もできない。
そんなことで歴史の話をしても、不快感と疲労感しか残らないから、2人の間でこの話題は封印することになった。

歴史問題が“地雷”になるのは日本人と韓国人も同じで、これに触れたら爆発は避けられない。
こんな複雑な関係は、「隣国あるある」と言っていいほど世界中でよくある。
でも、救助作業を断るというのは少ないと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。