【風土と病気】イギリス人が水虫を“香港脚”と呼んだ理由 

 

世界的な観光大国で、来年にはオリンピックが開催されるフランス。
いまそこを訪れる観光客に、小さな虫が大きな恐怖を与えている。

中央日報の記事(2023.09.26)

「体にくっついたらどうしよう」 仏観光客を恐怖に陥れている南京虫

最近フランスの鉄道で南京虫の発生が何度も報告されていて、観光客は不安が止まらないらしい。

南京虫(トコジラミ)を英語では「Bed bug」(ベッドバグ)と言う。
「ベッドにいる小さな虫」なら特に問題はないけれど、日本語の「南京虫」については、中国人が不快に思うこともある。
南京は歴史的に何度も首都が置かれた重要な都市で、中国人にとっては古都になる。
もし、中国人が害虫を「京都虫」と呼んでいたら、日本人もきっと「コラコラ」となる。

 

「南京虫」という言葉に不満な中国人もいるーー。
香港人にそんな話をしたところ、「中国人は何を言っているんですか。中国語にも『香港脚』という表現があるじゃないですか」とあきれ顔で言う。
そんな言葉は初耳だったから、意味を聞いたら「水虫」のことだった。
では、なんで「香港の脚」で水虫を指すのか?

この言葉の由来については、いくつかの説がある。
なかでも有力なものは、イギリスの学者が唱えた説だ。
*ここでは、中国語版ウィキペディアの「維基百科」をソースにする。

第二次世界大戦中、イギリス軍が東南アジア(东南亚)、香港、シンガポール(新加坡)で戦っていた。
ヨーロッパに比べて、これらの地域は湿度が高く、とても蒸し暑かったため、ブーツを履いていた兵士や将校が水虫に感染するようになった。
ヨーロッパの医師たちはこんな症状を見たことがなかったから、これは、これらの地域で発生する伝染病と考えた。

当时英国军队在东南亚、香港、新加坡一带作战,由于这些地方天气十分潮湿闷热,穿着长靴的官兵染上了足癣,由于欧洲医生并没有见过这种病,就认为这是在这些地区发生的流行病。

足癣

 

それで、香港では「Hong Kong foot」(香港脚)、シンガポールでは「Singapore foot」(シンガポール脚)、上海では「Shanghai foot」(上海脚)と呼ばれるようになった。
当時、地元の住民は素足にスリッパやサンダルを履いていたから、水虫にならなかったという。
いっぽうイギリス人は、まったく異なる風土に母国の常識や生活習慣を持ち込んだから、水虫に悩まされることになった。
この「Hong Kong foot」という英語を中国語に訳したのが「香港脚」。

現代の英語では、「Hong Kong foot」は死語になったようで、水虫は一般的に「athlete’s foot」(アスリートの足)と表現される。
でも、中国語では、いまでも「香港脚」がよく使われている。
だから、香港人からしたら、中国人が「南京虫」に怒ることには、「お前が言うな」となるらしい。

 

おまけ

明清時代の街並みが残る街・鳳凰

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。