【日本文化】芸能や天皇への良い万歳・戦争の悲しいバンザイ

 

アニメ『BLEACH』で、死神たちが放つ必殺技が「卍解」(ばんかい)。
そして、敵を倒すと叫ぶのが万歳。
『BLEACH』にそんなシーンがあったかは知らないけど、日本の文化では、メデタイことがあると人々は「万歳」と言う。
ただ、それにはいくつか種類があって、よく分からない万歳もあるし、80年ほど前には、とても悲しいバンザイもあった。
今回は、そんな日本文化の万歳について知っていこう。

 

「万歳」とは、中国語の「千秋万歳」という言葉の前半部分をカットしたもの。
これは中国皇帝の長寿を願った言葉で、臣下が皇帝に対してだけ、「万歳」と言うことができた。
文字どおり見れば「一万年」だけど、実際には、終わりのない「永遠」という意味になる。
それで朝鮮では中国皇帝に遠慮して、国王に対して「千歳(せんざい)」という言葉を使っていた。

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この言葉は古くから日本にあって、8世紀の『続日本紀』に「万歳」の文字を見ることができる。
これは幸福や祝福を表す言葉として使われ、12~16世紀ごろには、新年を祝うために歌って踊る芸能『千秋万歳(せんずまんざい)』が行われていた。
こんなふうに2組で、扇を持って踊る人と手で鼓(つづみ)をポンポンと打ってリズムをとる人に分かれて、『千秋万歳』をしていたらしい。

 

 

現代の日本では、メデタイことやうれしいことがあれば「バンザイ!」と手を挙げて、その気持ちを表現する。
特に有名な場面としては、天皇に対して行うものがある。
天皇の即位や新年の一般参賀などで、日本では中国皇帝に対する遠慮はいらないから、国民は両手を挙げて「万歳」を叫ぶ。
英語で言うなら「Long live the Emperor!」だ。

 

 

万歳を「バンザイ」と発音するようになったことを含めて、この”原点”は明治時代にあるらしい。

当時、天皇がお姿を見せると、国民は黙って最敬礼するだけだった。
でも、これだけではモノ足りない、天皇陛下を迎えるもっと良い方法はないのだろうか?
東京帝国大学の教師たちがそれを考え、よろこびの気持ちを伝えるために、大きな声で「万歳三唱」をしようというアイデアが生まれた。

1889年(明治22年)2月11日、大日本帝国憲法が発布された日に、青山練兵場に向かう明治天皇の馬車に向かって、東京帝大の学生や教師が万歳三唱をおこなった。
この時、予定では「万歳、万歳、万々歳」と叫ぶことになっていたが、実際にやってみたら、最初の大きな「万歳」の声を聞いた馬が驚いて立ち止まってしまった。
それを見て、彼らは次の「万歳」を小さな声で言い、最後の「万々歳」は言うことができなかった。
この出来事から、日本社会に「万歳」が定着したとされる。

 

現在、国会で議長が衆議院の解散を宣言すると、議員たちが両手を挙げて「万歳三唱」をすることがお約束になっている。
議員が失職した瞬間に「万歳!」を叫ぶのもなんか変な気がする。
この慣例の由来はハッキリしていないが、議員たちがこれから戦う選挙戦に向けて、「我が全身全霊をかけて!」という強い気持ちを表すという説がある。

 

衆議院解散時の万歳(1953年)

 

お祝いの「万歳」と謎の「万歳」の後は、とても悲しいバンザイを紹介しよう。

太平洋戦争中、戦場で追い詰められた日本軍の兵士が「もはやこれまで」と覚悟をきめ、「天皇陛下万歳」や「大日本帝国万歳」と叫びながら、敵軍に突っ込んでいくことがあった。
連合軍兵士はこの突撃に驚き、「バンザイ・アタック」や「バンザイ・チャージ(突撃)」と呼んだ。

これはアメリカ人の理解と思われるが、英語版ウィキペディアには「戦時中、日本の軍国主義政府は武士道の美徳のひとつを根拠に、自爆攻撃をロマンティックに描くプロパガンダを流布した」という説明がある。

During the war period, the Japanese militarist government disseminated propaganda that romanticized suicide attacks, using one of the virtues of Bushido as the basis for the campaign.

Banzai charge

 

上が日露戦争で突撃する日本兵
下が太平洋戦争でバンザイ攻撃を行い、全滅した日本兵

 

 

1944年、日本軍が守るサイパン島へ米軍が上陸し、激しい戦闘の末、日本軍は全滅した。
その最終局面では、日本兵や民間人が米軍への投降を拒否し、崖から次々と海に飛び込み自決する。
その数は1万人とも言われ、海には無数の日本人の死体が浮かんでいたという。
彼らは両腕を上げ、「天皇陛下、万歳」「大日本帝国、万歳」と叫びながら、80mほど下に広がる海に身を投じたから、戦後、その崖は「バンザイクリフ」と呼ばれるようになった。

もう、日本人にこんなバンザイはいらない。
めでたい時やうれしい時に叫ぶ万歳だけでいい。

 

米軍が撮影したサイパンの戦い
遺体があるので、見るなら自己責任で。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。