【海賊と天下人】ドレークと豊臣秀吉の3つの共通点

 

人類の歴史で、初めて船による世界一周を達成したのは、スペインの探検家・マゼランの部下たちで、それは 1522年のことだった。
2番目にこの快挙を成しとげたのが、イギリスの海賊フランシス・ドレークだ。
きょう12月13日は、1577年に彼がイングランドのプリマス港から世界一周に出発した日。
1580年に、ドレークを乗せたゴールデン・ハインド号がプリマス港に戻ってきて、彼はイギリス人として初めて世界一周を実現した人物となった。
それは、100パー間違いないのだけど、英語版ウィキペディアには「third circumnavigation overall(全体では3回目の世界一周であった)」という説明があって、これが2番目なのか3番目なのかよく分からん。

それはさておき、今回はフランシス・ドレークと豊臣秀吉の3つの共通点について書いていこうと思う。

 

フランシス・ドレーク

 

○ 活躍した時代

ドレークは1543年ごろに生まれ、1596年に亡くなった。
だから、彼が活躍した時代は、豊臣秀吉(1537〜1598年)とガッツリかぶる。

 

○ 成り上がり

2番目のポイントは、どっちも下から上へ成り上がったというところ。
ドレークが生まれたのは“1543年ごろ”と不正確になっているのは、彼が貴族ではなく地方で平民として生まれ、まったく注目されるような人物ではなかったから。

秀吉も、生まれた正確な年月日はわかっていない。
尾張国(いまの愛知県西部)で農民の子として誕生したとよく言われるが、出自については、ドジョウすくいだったか行商人だっとか諸説ある。
つまり、ドレークも秀吉も、出自に関する正確な記録が残っていない下層階級の生まれだったのだ。

ドレークは 10歳を過ぎたころから、船の仕事をするようになり、船長に認められて船をもらった。
彼はその後も海で働き続け、いつしか海賊となり、西インド諸島のスペイン船や町を襲って金や財宝を奪うようになる。
そして、1577年に世界一周の航海に出発し、南米のスペイン植民地や船を襲撃し、とてつもない量の財宝を手に入れ、1580年にイギリスへ帰還した。

ドレークは帰国後、支援してくれた女王エリザベス1世などにお宝を分ける。
これが途方もないレベルで、イングランド王室が手にした金額は、歳入(約 20万ポンド)を超える約 30万ポンドで、英王室は全ての借金を清算することができた。
さらに、ドレークがもたらした金は、後に東インド会社を設立することにも役立った。
この功績によって、彼はイギリス海軍の中将に任命され、「サー」の称号も授かり、平民からイギリスの上級貴族へ上り詰める。

 

一方、秀吉は17歳のころから織田信長に仕えるようになり、数々の戦いで勝利し、どんどん出世していく。
ドレークが世界一周を成しとげた 10年後、1590年に彼は天下統一を達成した。
そして、貧しい身分だった秀吉は「天下人」となる。
ドレークが「サー」なら、秀吉は「太閤」だ。
「成り上がり」のレベルで言えば秀吉の方がスゴイけれど、ドレークもただ者ではない。
世界における2人の知名度を攻撃力で例えるなら、ドレークはドラゴンで、秀吉はスライムやクリボーでドレークの完勝。
「障子を開けてみよ。外は広いぞ」という秀吉の言葉は、むしろドレークにふさわしい。

 

スペインの艦隊

 

○ 正反対の評価

才能と行動力にあふれた人物は、味方にしたら最高に頼もしいけど、敵になったら悪夢だ。
イギリスの軍人となったドレークは、1588年のスペインとのアルマダの海戦で指揮をとり、スペイン艦隊を壊滅させた。
イギリスにとっては英雄のフランス・ドレークは、スペインでは「悪魔の化身」と恐れられ、嫌われた。

豊臣秀吉は天下を統一した後、朝鮮半島へ出兵し、朝鮮に大きなダメージを与えた。
秀吉も日本では英雄として人気が高い一方、韓国では侵略者として「悪魔の化身」のように嫌われている。
国の内外で評価が逆転するという点でも、2人は共通している。

 

ちなみに、ドレイクはこんな格言を残した。

「Greatness from small beginnings」(偉業も小さな一歩から)

このへんは、「小さなことからコツコツと」と言った西川きよし師匠と似ている。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。