【日本人の英語力】ネイティブ講師が考える“話せない理由” 

 

使わない宝は無いのと同じーー。
いまの日本人がまさにそんな状態で、「世界最強」のパスポートを持っていて、世界中の国へノービザで行けるのに、海外に行く日本人は少ない。

世界最強のパスポート 日本が世界で信頼される理由

日本人が外国へ行くことについて、よく不安に思うのは、英語が話せなくて言葉の壁にぶち当たること。
英語の失敗は「海外旅行あるある」で、アメリカを旅行したある日本人さんはこんな失敗をした。

その人がバスか電車のチケットを買おうと、窓口で「〇〇行きのチケットをください」のつもりで「To ○○,please」と言ったら、チケットを2枚渡された。
新幹線みたいに複数のチケットが必要なのか? と一瞬思ったけれど、すぐに職員が「To」を「Two」と聞き間違えたことに気づく。
といっても、その責任は自分の発音にある。
そう思った時にはもう窓口を離れていたし、大した金額でもなかったから、一枚は記念に取っておくことにした。

ネットで同じ失敗をした人がいて、「to」の代わりに「for」を使ったら、チケットが4枚になったという。
こんな話を何度か見たから、これはネタ話かもしれない。
しかし、日本人が海外で英語を話したら、この程度の失敗をすることはよくある。
日本人の英語力の無さはよくネタにされるが、それはリアルだ。

 

昨年末、世界的な語学学校運営企業であるスイスの「EFエデュケーション・ファースト」が、英語を母国語としない113の国・地域を対象に行なった調査の結果を発表した。
その「英語能力指数」ランキングで、日本は過去最低の87位を記録し、英語力の無さを世界に印象づけてしまった。
アジア23カ国・地域で見ても、日本は15位で、韓国やベトナム、中国よりも低い。

ちなみにトップ3は、

1位:オランダ
2位:シンガポール
3位:オーストリア

で、上位10位にはヨーロッパの国が多い。

この結果に日本のネットユーザーの感想は?

・英語なくても困らないし生きていけるのが最大の問題
・いつの時代の話ししてんねん
翻訳機使うやろ
・なのに横文字は使いたがる日本人
・小学校から英語ぶち込み始めてこれか
・英語出来ないから中韓に仕事流れてる

パスポートの力と英語能力の差が、これほど開いている国はたぶんほかに無い。

 

 

友人のアメリカ人は日本の小中学校で英語を教えていたことがあって、日本人が英語を話せない理由についてよく質問されたという。
そんなとき彼女はこう答えていた。

「日本人は正確さにこだわって、英語をまるで数学のように考えるから」

数学の問題では「3.14」が正解だったら、それ以外はすべてバツになって、0.01の誤差も許されない。
でも、英会話はまったく違って、自分の言いたいことを相手に伝えられたら正解。
細かい前置詞や文法が間違っていても、全体として意味が通じればOK。
だから、英会話では正解の幅が広くて、答えはいくつもある。
教師はミスを指摘し、生徒は誤差を修正していくことで、精度の高い英語を話せるようになる。
と、彼女は考えていたのだけど、日本人はミスをすごく恐れて「正解」にこだわって話そうとするから、口から英語が出てこない。
話さないから始まらない。
やる気があっても行動に移さなかったら、それは無いのと同じ。

 

日本に10年以上住んでいて、幼稚園児からお年寄りまで、英語を教えた経験のあるニュージーランド人にその話をすると、彼も「そうなんだよ、日本人は語学を数学みたいに考えるからいけないんだ」と同意した。
彼の経験によれば、園児は英語ゲームをするから別として、日本人は年齢や性別に関係なく、基本的にシャイで、他人の目を気にして英語で話そうとしない。
自分と1対1なら話せても、ほかの日本人がいると口が重くなる人が多い。
ただ、お年寄りはあまり失敗を気にしないで、わりと気さくに話ができるらしい。

彼が考えるに、日本人が数学のように正確性にこだわるのは、英語を試験科目として勉強してきたから。
正しい単語や文法を暗記し、間違えないように慎重に言おうとするから、沈黙が増えてしまう。
コミュニケーションでは、自分の気持ちや意見を相手に伝えられたら合格だから、細部にとらわれたり、「完全体」を話そうと意識したりするべきではない。
失敗を避けようとすることは、英会話では致命的なミスにつながる。

1人でチケットを2枚買ったとしても、目的地へ移動することができたら問題ない。
小さなミスがあっても、大きな目標を達成できたらそれは成功だ。
黙っていたら、どこにも行けない。

 

 

ニュージーランド人の講師は、生徒たちがもっと英語を話してくれれば、正しい表現を教えて生徒を伸ばすことができると自信を持っていた。が、日本人は恥ずかしがって、あんまりしゃべってくれない。
ニュージーランド人は「陽キャラ」だから、日本人とは対照的に、語学学習では失敗を気にしないでドンドン話せるらしい。
彼が先輩のアメリカ人講師に相談すると、「それが日本人だアキラメロン」みたいなことを言われたという。
シャイで失敗を恐れるのは日本人の国民性で、外国人にそれを変えることは無理。
だから、そんなことはあきらめて、「日本人はそんな人たち」という前提で、自分なりの教え方を考えないといけない。
彼はそんなアドバイスをもらい、「日本人の口を開かせようとする」という発想を根本的に変えて、今日も英語を教えている。

 

天才物理学者のアインシュタインはこう言った。

「失敗したことがない人は新しいことに挑戦したことがない人だ」

この言葉に「そうそう」と共感する日本人はたくさんいる。
でも、「じゃあ、英語で話してください」と言われると、きっと遠くを見つめてしまうから、英語を話せるようにならない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。