「日本人はダメですよ!」
10年以上前にベトナムを旅行中、日本語ガイドとご飯を食べながら話をしていると、彼がそんな文句を言い出す。
日本が好きで、がんばって日本語をマスターしたこのガイドが、日本人にダメ出しをした理由はこんなものだった。
当時(いまも)、ベトナムにはたくさんの日本や韓国の企業が進出していて、彼らガイドにも仕事のオファーがきていた。
彼が日本とベトナム企業の交渉の場で通訳をしていると、よくイライラさせられると言う。
両者が話し合って、ようやく合意に達してベトナム人側がホッとした表情を見せると、日本人サイドはきまってこんなことを言う。
「では、この案件は一度持ち帰らせてもらいます。本社に伝えて、後日、改めて連絡をさせてもらいます」
ガイドは、これを聞いてぼう然とするベトナム人を何度も見たし、彼も最初は信じられなかった。
後でベトナム企業の人から、「なんで日本人はあの場で決めないのか?」「なんで決定権のない人間を寄こしたんだ!」と責められると、ガイドもまったく同じ思いだから「ですよねー」と思いながら必死に弁明をする。
日本人に聞くと、現場が勝手に判断してものごとを進めると、後で問題を引き起こすパターンが多いから、この決定プロセスは合理的で常識的だと言う。
失敗したくないという気持ちはガイドにも理解できる。
だからといって、ここまで慎重に検討し、相手を待たせることは失礼で、ベトナム人としてはストレスがたまるらしい。
その点、韓国人はスピーディー。
韓国企業の人間が同じような交渉をすると、彼らは即断即決し、笑顔で握手を交わしてすぐ事業を進める。
ベトナムの感覚からすると、このスピード感が心地よい。
人間のやることに「絶対安全」なんてあるわけない。
でも、日本人はそれをとても重視するから、決断が遅くなる。
石橋を何度もたたいて確認し、なかなか渡ろうとしないから、対岸で待っているベトナム人としては見ていてイライラする。
一方、韓国人は簡単なチェックをして、「きっと大丈夫」と判断したらさっさと渡りはじめる。もし、橋が壊れたら、彼らは泳いで対岸へ渡る。
ガイドはそんな場面を何度も見たから、「日本人はダメですよ!」と不満を言う。
この言葉には、日本企業がもっと積極的に活動してくれないと、自分たちガイドは仕事の機会が少なくなるという焦(あせ)りもある。
こんなベトナム人の話が印象に残ったから、タイやカンボジアに行った時、現地の日本語ガイドにも聞いてみた。
すると、彼らも「そうなんですよ!」とベトナム人に全面的に同意する。
日本人は動き出しが遅い一方、韓国企業は現場の人間に大きな権限を与えるからそれが速い。
ただ、契約が成立して事業がスタートすると、日本企業は計画通りにスムーズに進めるが、韓国企業では思わぬトラブルが発生することが多い。
でも、それらを全体的に考えると、東南アジアの人たちにとっては、安全や確実性を重視する日本人よりも、リスクを負ってスピーディーに動く韓国人の価値観のほうが合うらしい。
東南アジアの農村はとってもノンビリしている。
日本人の行動はスローリーで、韓国人はクイックリー。
最近、そんなイメージが逆転する出来事があった。
中央日報の記事(2024.02.13)
韓国と日本の動物園は合意したが…天然記念物「カワウソ」日本に輸出できず
まず、ソウル大公園と東京の多摩動物公園が話し合いを重ね、カワウソとレッサーパンダを相互に寄贈することで合意する。
*ソウル大公園はソウル市が管理している公園で、ソウル大学は関係ない。
これを受けて、日本はきょねん6月に韓国側へレッサーパンダを贈った。
今度は当然、韓国のターンだ。
ソウル大公園はことし6月に、カワウソを日本へ贈る予定だったのだけど、関係機関が協議した結果、ソウル大公園の決定は否決された。
カワウソを輸出する許可が下りなかったため、事業はストップしてしまう。
韓国のネット民の反応を見ると、「約束は守るべき」「自分はもらって、相手にあげないなんて話にならない」「これでは韓国の信頼が傷つく」と、韓国側の対応に批判的な声が多い。
なんで、こんな残念な結果になったのか?
時間は十分あったから、日本側は関係各所に連絡し、レッサーパンダを送ることができることを確認したうえで合意した。
しかし、韓国側は「きっと大丈夫! 何とかなるっしょ」とその手間を怠(おこた)って合意したとしか考えられない。細かいことは気にしないという韓国人の「ケンチャナヨ精神」が発揮した。
日本人だったら、確実にカワウソを送れるかどうか分からない状態で合意することはない。
これは、日本人と韓国人の価値観の違いがよく表れた一件だと思う。
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