日本でも有名な韓国女性の民族衣装「チマチョゴリ」。
「チマ」は女性用のスカートで、チョゴリは上衣を意味していて、この上下を組み合わせた服をチマチョゴリと呼ぶ。
ネットでチマチョゴリについて調べると、「乳出しチョゴリ」という衝撃的なワードが出てくると思う。
日本でこれはわりと有名で、ネット辞典(ピクシブ百科事典)にもその項目があり、「朝鮮の民族衣装、チョゴリの乳房の露出した物」と書いてある。
具体的には、チョゴリの胸の部分だけが切り取られ、乳房が露出しているのだ。
無料画像が見つからなかったから、ここで紹介することはできないが、検索すればいくらでも画像が出てくる。
このタイプのチョゴリについて、日本ではこう説明されていることが多い。
朝鮮で、このチョゴリが登場したのは 18世紀以降。
昔の朝鮮では、儒教の考え方から、長男を生むことは女性の社会的な義務とされていた。
そのため、長男を産んだ女性はその“証拠”として、乳房を露出するチョゴリを着ていた。
当時の人びとの感覚では、これは恥ではなく、むしろ名誉とされた。
信頼性の高いサイトである「日本海学推進機構」には、「民族衣装の確立(韓国編)」という記事があり、そこではこんな考察がされている。
固形物を口にすることが出来ない我が子に含ませるものであり、(乳だしチョゴリ)は授乳服としては合理的であると思える。本来の目的はそうであったのではないだろうか。
現代の韓国人はこのチョゴリを“恥”と考えているから、誰かがこれを取り上げると、「そんな習慣はなかった!」と抗議されることもある。
昨年、ドイツでそんな出来事があった。
2023年の10月、ベルリンの有名な博物館で、韓国の民族文化を紹介する特別展が開催された。
そこでは、「水を汲む女性」という説明とともに「乳だしチョゴリ」を着た女性の写真が展示されていたから、韓国側は激おこ。
ハンギョレ新聞の記事(2023-10-19)
韓国政府が1億円支援した展示会に「朝鮮蔑視」…日帝の視線が加わる
この写真は、1905年に韓国を訪れたドイツ人が撮影されたもので、次のような説明が付けられていた。
「朝鮮王朝時代の中頃から、息子だけが相続でき家系を継いだ。そのため女性たちは特に息子を生むのを誇らしく思った。下層の女性たちは、母乳の授乳のために露出した自身の胸を見せ、息子の誕生を暗示した」
日本での説と同じ内容だ。
しかし、韓国側は「日本人が演出した写真である可能性が高い」と指摘する。
当時の日本人が、「朝鮮文化が『劣っている』ということを暗示するために意図的に撮影した」可能性が高いという。
事実はどうであれ、1億円以上の支援金を出して恥をかかされてはたまらない。
韓国側の抗議を受け、博物館は写真を撤去した。
それは一件落着として、別の問題が浮上した。
韓国側は「可能性が高い」と主張しているだけで、事実と裏付ける根拠は明らかにされていない。
当時の日本人が本当にそんな悪意を持って撮影したのか?
そもそもこの写真を撮ったのはドイツ人ではなく、本当に日本人だったのか?
この重要な部分がハッキリ分からない。
日帝(日本の帝国主義)による「朝鮮蔑視」というのは、現代の韓国人の考え方や見方だ。
この主張はかなり強引で説得力に欠ける。
インドの文化的な価値観では、女性が腹を見せるのはいいけど、足を見せるのはNG。
日本とは常識が違う。
「乳だしチョゴリ」について、当時の外国人の記録を見てみよう。
19世紀の末期、イギリス人の旅行家イザベラ・バードが朝鮮半島を旅行した。
彼女は旅行記の中で、当時の朝鮮では、出産した女性だけが胸を出した格好(つまり、乳出しチョゴリ)を許され、それによって一人前扱いされたと書いている。
同じころ、本間 九介(きゅうすけ)という日本人が朝鮮半島の各地を旅し、そこで見聞きしたことを新聞に連載し、朝鮮の文化や社会事情を日本に広く伝えた。
彼の紀行文「朝鮮雑記」に、このチョゴリの記述がある。
「韓人は、わが国の婦女が、紅裙(着物のすそ)を風になぶらせ(もてあそば せ)、白い脛をあらわにするのを笑う。その一方で、わが国の人は、かの国の婦女が、乳房を日光に曝しながら歩くのを笑う。」
*脛は「すね」、曝しは「さらし」。
時代が変われば、常識や「恥の感覚」も変化する。
現在では超恥ずかしいことでも、150年前にはまったく気にならなかったこともある。
明治の日本では、男女が裸で銭湯に入ることもあったのだから。
130年ほど前、韓国人は日本人女性が「すね」を見せる姿を笑い、日本人は韓国人女性が乳房を露出して歩くのを笑った。
お互いに相手を「蔑視」する意図はなく、価値観や文化の違いを大らかな気持ちで見ていたのだろう。
「日帝」に関係なく、昔の朝鮮社会では、女性が乳房を露出するチョゴリを着ていたことは事実だ。
それを現代的な価値観で上塗りをすると、本当の歴史が分からなくなる。
日本人から見た韓国人 130年前と変わらない“辛いもの”好き
コメントを残す