驚きの発展・白さ 日本人はまだインドネシアを知らない

 

日本の約5倍の広さがあって、人口は約2倍(約2.7億人)で、首都ジャカルタはジャガイモの語源になった。
インドネシアってそんな国。
日本とは「アジアの島国」という共通点があるものの、国民のほとんどが日本人&無宗教という日本とは国の中身はかなり違う。
インドネシアはジャワ人やスンダ人、中華系、アラブ系、インド系など約 300の民族がいる多民族国で、宗教もイスラム教(87%)、キリスト教(11%)、ヒンドゥー教 (2%)、仏教(1%)、儒教(0.03%)とバラエティー豊富。

インドネシアにはいろいろな人たちがいて、みんなが協力して国を支えている。
だから、この国を理解するキーワードは「Bhinneka Tunggal Ika(多様性の中の統一)だ。
でも、このモットーを知らない日本人は多いし、インドネシアについてはまだあまり知られていない。

 

数年前、日本に住んでいたインドネシア人から、笑えない「笑い話」を聞いた。
彼は 20代の男性で、企業の実習生として働きながら日本語を学んでいて、国際交流イベントがあると積極的に顔を出し、日本語のスキルを磨いていた。

あるとき、「インドネシア料理を食べながらおしゃべりしよう♪」みたいな交流会に参加すると、そこで年配の日本人女性と出会った。
「日本語うまいですねー」「いいえ、まだまだデス」というルーティンを済ませて会話がはじまると、その女性はインドネシアについて質問があると言う。
「はい、何でも聞いてください!」と笑顔で応える彼に、彼女はこうたずねた。

「いまのインドネシアの人たちは、靴を履いていますか?」

彼と一緒にいたインドネシア人たちは、みんな「ちょっと何言ってるか分からない」という状態になる。
戸惑いつつ質問の意味をたずねると、その初老の女性はむかしテレビで見たインドネシアの話をする。
映像の中のインドネシアはとても貧しい国で、多くの人が裸足で生活していたけれど、その目はキラキラ輝いていた。
その様子がとても印象的だったから、いまの状況を知りたいと言う。

しかし、彼はそのインドネシアについてはあまり情報がない。
現在では、若者はアディダスやナイキのスニーカーを履いているし、ビジネスパーソンなら高級な革靴を履く人も多い。
貧しい人でもサンダルは履いている。
もし、都市を裸足で歩いている人がいたら、彼にもその理由は分からない。

その日本人に、ジャカルタで活躍している AKB48の姉妹グループ「JKT48」について聞くと、「へ〜、そんなアイドルがいるんですか〜」と感心されて、彼は苦笑いするしかなかった。
「ジャカルタの中心部なら、東京とそう変わりませんよ」と言うと、「ええっ! 本当ですか?」とビックリされたから、「なんでボクがウソをつくんですか〜」と彼はまたもや苦笑い。
その女性は時代遅れの情報を持っていて、しかも一部を全体として考えている。
彼が知っているインドネシアと、この日本人の「脳内インドネシア」はまったくの別ものだった。

 

彼はその時を思い出して、「いや〜、あの質問にはビックリしました。いままで聞いた質問の中でいちばん面白かったです!」と笑顔で話す。
なら良かった。
そんな体験をしたら、なかには「日本人は私の国を蔑視、差別している!」と怒りだす外国人もきっといる。

 

あるインドネシア人が友人にチョコパイをおごってもらい、SNSで「Terima kasih」と感謝した。
この「テレ マカシ(ありがとう)」の返し言葉は「サマ サマ(sama sama)」だから、日本人には覚えやすい。
ただ、日本語の「どういたしまして」とはニュアンスが違うらしい。

 

最近、きょねんの 10月に日本へ来たインドネシア人と会って話をした。
彼は日本での生活をエンジョイしているが、日本人の「理解不足」と直面すると、ちょっと困ってしまうらしい。
そのプチ悩みというのは、留学生の彼が日本人の大学生から、よく“同胞”とカン違いされること。
彼は中華系の両親から生まれたインドネシア人で、見た目は中国人と変わらないから、彼の肌は「驚きの白さ」だ。
だから、初対面の日本人は彼のたどたどしい日本語を聞いて、「あれ? 日本人じゃない?」とビックリしたり、インドネシア人だと聞いても「本当にインドネシア人なの?」と不思議そうな顔をしたりする。

日本人は一般的にインドネシア人を「色黒(浅黒)」とイメージしているから、外見が日本人とそっくり、下手したら、日本人よりも肌が白い中華系インドネシア人の彼と会うと、最初はほとんどの人が戸惑う。
しかも、彼はキリスト教徒だ。
インドネシアについて、「イスラム教の国」という印象を持っている日本人が多い。
でも、彼の出身地のスラウェシではキリスト教徒が、バリ島にはヒンドゥー教徒がたくさんいる。

彼の属性は、日本人の持つインドネシア人の概念を崩してしまう。
だから、自己紹介の後に、家族の来歴やインドネシアの多様性について説明しないといけないことが多く、それがわりとメンドクサイ。
彼としては、「ああ、あなたは中華系インドネシア人ですか」で終わってくれるとすごくラク。

 

数年前は、「インドネシアの人たちは靴をはかない」と言う年配の日本人と会って驚くインドネシア人がいた。
いまでは 20代の日本人から、「白すぎてインドネシア人と思われない」と戸惑うインドネシア人がいる。
たくさんの日本企業がインドネシアへ進出したり、旅行に行ったりする日本人は増えたけど、日本ではまだ、「Bhinneka Tunggal Ika」(多様性の中の統一)」はあまり知られていない。

 

日本人女性が「人びとは裸足で歩いている」と思ったのは、インドネシアのこんな一面を見て衝撃を受けたからかも。

 

 

農村では人が巨大なヘビやワニに襲われることがある一方で、首都ジャカルタは岡山以上の大都会だ。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。