1804年のきょう3月22日、日本では元号が「文化」に改元された。
これと次の「文政」の時代に、浮世絵や歌舞伎、川柳などの文化が発展したことから、文化と文政の2つの元号をあわせて「化政文化」と呼ぶ。
平和な江戸時代に経済が発達していき、化政文化には町人文化が全盛期を迎え、一般庶民が浮世絵などを楽しんでいた。
浮世絵といえば、先日アメリカのニューヨークで、葛飾北斎の代表作である「富嶽三十六景」がオークションにかけられ、約5億3700万円で落札された。
といっても、これは一枚の浮世絵ではなく、「富嶽三十六景」の46作品を合わせた値段らしい。
「富嶽三十六景」というのは“見出し詐欺”で、作品は46点あるのだ。
ちなみに、オークションに出されたのは版画絵だから、同じ作品が何枚もある。
このニュースにネット民の感想は?
・5億円で落札か。案外安かったね。
・バブル期には世界のオークションで
ジャパニーズマネーが
高額落札しまくりだったが
・ただの印刷物なのに・・・
・永谷園のお茶漬けについてる浮世絵の『おまけ』カード集めてたのを思い出した。
・落書きしてるバンクシーより安いの草
19世紀、日本の浮世絵がヨーロッパで広く知られるようになると、西洋画にはなかった要素がヨーロッパ人に大きな衝撃を与え、「ジャポニズム」ブームを巻き起こす。
ゴッホ、モネ、マネ、ロートレック、ゴーギャンといった世界的に有名な画家たちは浮世絵からインスピレーションを受けた。
クロード・モネの『ラ・ジャポネーズ』
左が歌川広重の『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』で、右はゴッホの模写
『タンギー爺さん』
ゴッホは背景に浮世絵を描き込んだ。
浮世絵と西洋画ではどんなところが違うのか?
外国人の視点で知るには、英語版ウィキペディアの説明を読むのがいい。
ということで「Ukiyo-e」の項目を見てみると、目に映るものを忠実に表す西洋の伝統に比べ、日本の風景画は想像力や構図、雰囲気を重視している点で西洋画とは異なっていたと書いてある。
「The Japanese landscape differed from the Western tradition in that it relied more heavily on imagination, composition, and atmosphere than on strict observance of nature.」
たしかに西洋画では細部まで正確に描写する、写真のような絵が多いように思う。
また、西洋画では重厚で深みのある色使いが見られる一方、浮世絵では明るい軽やかな色が使われていることが多い。
そんなことを意識しながら、以下の西洋画と浮世絵を比べてみると、違いが見えてくると思う。
葛飾北斎『富嶽三十六景 駿州江尻』
葛飾北斎『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』
『神奈川沖浪裏』は海外でとても有名だ。
現実離れした構図や豊かな想像力によって、躍動感や迫力あふれる作品に仕上がっている。
おそらく西洋画はこういうダイナミックさに欠けていた。
葛飾北斎『富嶽三十六景 凱風快晴』
以下は有名な西洋画
ロートレックの作品(1892年)
ロートレックは西洋画で重視されていた立体感を捨て、浮世絵のように平面的な絵を描いた。線で人物や物の輪郭を表現する技法も、ジャポニスム以前のヨーロッパではあまり見られなかったという。
昔のヨーロッパの絵画では、宗教に関するものや王族、貴族の肖像画が多かった。
一方、浮世絵はそんな真面目なテーマではなく、描く対象は何でもいい。
化政文化の特徴は町民が楽しみ、支えたという点にある。
浮世絵は庶民の娯楽としてあったから、美人、役者、武士、相撲、さらには春画(ポルノ)や妖怪を描いた画もあって、縛りがなく自由度が高かった。
地震を起こしたのはナマズのせいだと庶民が怒り、袋叩きにしている。
歌川国芳の『相馬の古内裏』
妖怪「がしゃどくろ」のイメージとして有名な浮世絵。
21世紀のアメリカで、版画なのに5億超えとなったのも納得かと。
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