【京都観光】ヨーロッパ人とベトナム人で、評価が真逆の場所

 

数年前に、2人のリトアニア人とドイツ人1人、それと2人のベトナム人と一緒に一泊二日の京都旅行をした。
日本の歴史と文化が詰まったこの古都は世界的にも有名で、彼らも前々から行ってみたいと考えていたらしい。

その帰り、京都観光の感想を聞いてみると、清水寺・伏見稲荷大社・金閣寺などの神社仏閣については、みんな「良かった」か「超良かった」と高評価だったいっぽうで、ヨーロッパ人とベトナム人の間で評価が真逆に分かれたスポットがひとつあった。
それは「嵐山モンキーパーク」。
ヨーロッパ人の3人は「行く価値があった!」と絶賛するが、2人のベトナム人は「時間と金のムダだった」とガッカリした顔をする。
なぜなのか?

 

インドのお寺にいたモンキー

 

1日目の観光を終えて、夕食を食べながら、メンバーで明日はどこへ行くか話をした。
この時ボクは、

「せっかく京都に来たんだ。日本らしいところに行ったほうがいい。明日、嵯峨野と嵐山に行ったら、竹林のほかにも世界遺産の天龍寺へ行くといい」

と推したのだけど、ヨーロッパ人たちは、

「“日本ならでは”の体験をしたい。だから、明日はモンキーパークへ行こう」

と主張する。
ベトナム人2人は、すでにお目当ての清水寺と伏見稲荷大社に行って、嵐山の後は金閣寺へ行く予定だったから、「どこでもいい」と面倒くさそうに言う。
そもそも彼らはほとんど“おまかせ”で、京都について特に調べてこなかった。
ということで次の日、嵐山では天龍寺ではなく、サルを見に行くことに決定。
「京都に来てまでエテ公見物かよ」という気もしたけれど、ここは外国人の意見を優先するしかない。

 

翌日、すべての予定を終えて車で浜松へ帰る途中、サービスエリアに寄って、彼らに旅行の感想を聞いてみた。
みんな神社やお寺については高評価で、3人のヨーロッパ人は「モンキーパーク」もとても良かったと絶賛する。
3人に理由を聞くと、ヨーロッパにサルはいないから、まずサルそのものが珍しいと言う。
モンキーパークではたくさんのサルが野放しに近い状態でいたから、猿が自由に行動している様子を見たり、エサをあげたりできて、とても楽しむことができた。
2人のベトナム人の感想はその真逆。
「今回、京都で行った場所の中で、「モンキーパーク」が圧倒的につまらなかった。時間とお金のムダだった」とボロクソ言いやがる。

話を聞いていて、意外に思ったのが「ヨーロッパにはサルがいない?」ってこと。
そんな情報は初耳だったから確認すると、3人とも動物園以外でサルを見たことはないし、ヨーロッパにいると聞いたこともないと言う。

*後で調べてみたら、ヨーロッパでは唯一、イギリスの海外領土であるジブラルタルにサルがいることがわかった。
でも、これは例外だから、全体的に見れば「ヨーロッパに猿はいない」と言ってヨシ。

 

サルは熱帯系の動物で、主に赤道に近い暑い地域に生息している。
地球でもっとも北にいる猿がニホンザルで、韓国に行くともうサルは見られなくなる。北アメリカにもサルはいない。(霊長類
厳密に言うと、北海道にもニホンザルはいないから、サルの生息地域としては青森が世界の北限だ。
ニホンザルは日本の固有種で、世界でも日本にしかいない。それを考えると、ヨーロッパ人が「日本ならではの体験」と言ったことも、まぁ理解できなくもない。
サルを日本語で「エテ公」と呼ぶことがある。
これは、サルが「去る」に通じて縁起が悪いから、「得手」と呼んだことがはじまりだと言われる。だから、「エテ公」は見下した言葉に聞こえるかもしれないが、じつは「サル」よりも縁起の良い言葉なのだ。

ちなみに、本州では茨城県だけにはサルがいない。…はずだったのだけど、なぜか近年では何度も目撃されていて、きょねん読売新聞がその現象に注目した。(2023/09/24)

本州で唯一「サルが生息していない県」でなぜか目撃相次ぐ、今年度すでに107件

 

今回の京都旅行で、ベトナム人が嵐山モンキーパークを「ワースト」に選んだ理由は、ヨーロッパ人の反対で、サルなんて母国で何度も見ていて、珍しさや新鮮さはゼロだったからだ。
ベトナムではサルは身近な動物で、ペットとして飼うこともある。ことし1月には、ベトナム最大の都市ホーチミン市で人がサルに噛まれてニュースになった。
ベトナムには、野放しにされたサルたちと触れ合える「モンキー・アイランド」もあるから、ベトナム人にとってサル見学は「日本でしかできない体験」にはならない。
だから、天龍寺のほうが良いとあれほど…。

調べたり考えたりすることを面倒くさがり、「どこでもいい」と言っておきながら、いざモンキーパークへ行ったら、「つまらなかった」と不満を言う。
そんなところはベトナム人らしいと思う。

 

ベトナムのサル島
“サルとの触れ合い”でいうなら、嵐山モンキーパークに勝ち目はない。

 

 

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1 個のコメント

  • >話を聞いていて、意外に思ったのが「ヨーロッパにはサルがいない?」ってこと。
    >そんな情報は初耳だったから・・・

    へぇー、世界各国を旅した経験のあるブログ主さんにしては意外ですね。実際に滞在した経験上も、TVや映画を見た限りでも、「ヨーロッパの野生猿」なんてこれまで見たことがないのですけど。北米、ロシア、中国北部でもそうです。
    最近時々話題になりますが、韓国人が日本人のことを馬鹿にするのに「猿の真似」をしてみせる(この侮蔑表現、当の日本人にはほぼ理解不能)のも、理由の一つとしては韓国には猿がいないからでしょう。その一方で欧米人にとっては、「温泉に入る猿」なんて、「なんて日本は神秘の国なんだ!」という感動のネタとして世界中で扱われているらしいです。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。