尹政権の大敗北でドーなる日韓関係 日本メディアの反応は?

 

先週10日に韓国で行なわれた選挙で、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領をはじめとする与党政権側が、「これはもう笑うしかない…」というレベルの大惨敗に終わった。
きょねん発足した尹政権に対し、国民が強烈な NO!を突きつけたことになる。
日本の評価は反対で、尹政権には好印象を持っている。

前大統領の時代、日韓関係は戦後最悪と言われるほど悪化し、尹大統領はその負の遺産をそのまま引き継ぐこととなった。
しかし、尹大統領は関係悪化の最大要因である徴用工問題について、基本的には韓国側で解決すると発表し、日韓関係を立て直したことで日本では高く評価された。
それが今回の結果で、尹大統領の政権運営の見直しは避けられなくなり、上昇傾向にあった日韓関係にも影響が出てくると予想されるから、日本の各メディアも今回の選挙に注目し、社説で伝えた。

選挙では経済問題などに比べれば、日韓関係はそれほど大きな争点にはならなかったため、大手新聞はどこも、尹大統領が日韓関係を重視する姿勢は変わらないだろうが、野党側が「日本にもっと強く対応するべき!」と主張し、尹政権を圧迫することは確実とみている。
その後の主張は各社によって違いがあるから、これからそれを見ていこう。

 

朝日新聞は社説の「韓国与党の大敗 対話通じ包摂の政治を」(2024年4月12日)で、関係改善の流れを後戻りさせないためにも、日本に対して「歴史をめぐる問題を直視しつつ、未来にもつながる対応を真摯(しんし)に追求していくべきだ」と暗に譲歩を求めている。
毎日新聞も同じ考えで、「日本が関係改善へ向けて踏み込んだ措置を取っていないことに対する不満は、尹政権内にもくすぶっている」と書く。
東京新聞も、日本が韓国側に譲るべきという論調では同じだが、「韓国与党大敗 日韓改善流れ止めるな」(2024年4月13日)の中で、もっと具体的に踏み込んだ提言をしている。

「事業に応じて寄付を募る計画だが、元徴用工訴訟の被告になった日本企業が拠出する方法もある」
「誠意ある態度を原告らと韓国社会に示すべきではないか」

 

しかし、そうは言われても、この問題については1965年の日韓請求権協定によって、両政府が「完全かつ最終的に解決」され、「いかなる主張もすることはできない」と確認している。
この合意が今までの日韓関係の土台になっているから、日本がこの内容に反することはできない。日韓の間で元徴用工の問題は“解決済み”で、今になって「まだ終わっていない!」と主張することはできないのだ。

そんな事情から、読売新聞は社説「韓国与党敗北 対日関係に影響が及ばぬよう」(2024/04/13)で、日本に譲歩は求めず、尹大統領に対して「日本との良好な関係が韓国の利益になると、国民に粘り強く訴えることを期待したい」と訴えた。
日韓関係は重要であるとしても、元徴用工問題で日本が「解決前」に時間を戻すわけにはいかない。
この問題はすでに終わっているという前提で考えれば、日本と良い関係を維持することのメリットを韓国民に伝えることは、日韓の友好にとって有効だ。

日本経済新聞の社説「与党大敗でも日韓協力の歩みを着実に」(2024年4月12日)では、「いたずらに対日強硬で世論をあおるのはよくない」と韓国の野党勢力をチクリと批判し、両国関係については「世界のなかの日韓というグローバルな視点で互いに知恵を出しあいたい」とあいまいなことを言う。

産経新聞は「韓国総選挙、開票終了 与党惨敗、最大野党が過半数 韓国紙「尹錫悦大統領に審判」(2024/4/11)の中で、

「レーダー照射や「徴用工」などをめぐる日本側の懸念は解消されていない。これらに毅然(きぜん)とした態度を貫く必要がある」

と問題解決に向けて、韓国サイドがもっと積極的に対応するべきだと主張。
それはその通りなのだけど、弱体化した現在の尹政権にその要求は厳し過ぎの気がする。

 

日本はきのう16日に公開した外交青書で、韓国の最高裁判所が元徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた判決について、「受け入れられない」という立場をあらためて明らかにした。
選挙で尹政権が大敗しても、「それはすでに解決済み」という日本の姿勢に変化はなさそう。
やっぱり読売新聞の言うように、日本が韓国に譲歩することなく、関係を改善していくメリットを両国民にアピールしていくやり方が良い。
まぁ、政治がどう動いても、それに左右されない安定した関係になればいいのだけど、日本と韓国がそうなるにはまだ時間が必要だ。

 

 

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2 件のコメント

  • > 読売新聞の言うように、日本が韓国に譲歩することなく、関係を改善していくメリットを両国民にアピールしていくやり方

    読売新聞はそんなこと言ってませんね。その前のところにちゃんと書いてあります。

    > 日本に譲歩は求めず、尹大統領に対して「日本との良好な関係が韓国の利益になると、国民に粘り強く訴えることを期待したい」と訴えた。

    つまり、関係を改善していくメリットを、尹大統領が「韓国民に」粘り強く訴えることを期待しているのです。
    多くの日本国民はその程度のこと言われなくても理解していると思いますよ。実際にその方向に向けて何か行動に移すかどうかは別としても。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。