【ゲリラ戦】ナポレオン破滅の一因となった“スペインの潰瘍”

 

「われわれが到着すると彼らは姿を消し、われわれが去ると彼らは姿を現す。彼らはどこにでもいるが、どこにもいない。」

これは、スペイン独立戦争(半島戦争)で登場したゲリラのことを指している。
1808年のきょう5月2日、マドリードを占領していたフランス軍に対し、市民が武器を持って蜂起したが、返り討ちにされ、数百人(千人以上とも)が殺害された。
しかし、この蜂起がスペイン全土に広がり、独立戦争がはじまった。

この戦争でナポレオンを苦しめたのが、スペイン語で「小さな戦争」を意味するゲリラだ。
装備や訓練で勝るフランス軍に対し、スペインの軍人や民間人が小グループで奇襲攻撃を仕掛け、すぐに撤退する細かい攻撃を繰り返しおこない、フランス軍にジャブのような打撃を与え続け、疲弊させる。
彼らは神出鬼没で拠点も分からないから、フランス軍は効果的な攻撃ができず、ある軍人は「どこにでもいるが、どこにもいない」と苦悩した。
ちなみに、ゲリラ戦法自体は古代からあった。
しかし、この戦争でフランス軍に大きなダメージを与え、最終的には撤退させたことで注目され、このスペイン語が一般的な名詞となる。

 

ゴヤは『マドリード、1808年5月3日』を描き、フランス軍による市民の虐殺を非難した。

 

スペイン独立戦争(半島戦争)では、スペインとポルトガルのゲリラ戦法によって、数十万のフランス軍が動きを止められ、数万人が殺害された。
ナポレオンは絶え間なく兵力が削られていくことに苦しみ、この戦いを「スペインの潰瘍」と表現した。
*潰瘍とは、体内にできた深くえぐられた傷で、命にかかわることもある。

In the Peninsular War Spanish and Portuguese guerrillas tied down hundreds of thousands of French Imperial Army troops and killed tens of thousands. The continual losses of troops caused Napoleon to describe this conflict as his “Spanish ulcer”.

History of guerrilla warfare

 

実際、スペイン独立戦争でフランス軍物は兵力も物資も失い、後にナポレオン自身も「スペインの潰瘍が私を滅ぼした」と語ったように、彼が破滅した原因の一つとなる。
とはいえ、スペインが受けたダメージはもっと深刻で、この戦争で産業や農業が完全に破壊された上に、多くの美術品も失われた。
ナポレオンにとっては潰瘍なら、スペインにとっては全身骨折だ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。