【戦艦大和】なぜ日本は“世界最大・最強”をめざしたのか?

 

世界最大にして最強ーー。

中二病界隈の住人なら、一度は言ってみたいフレーズだ。

「日本人がつくった世界最大・最強のものと言えば?」とアンケート調査をしたら、戦艦大和が1位か、少なくともトップ3には入るはずだ。
日本軍が1937(昭和12)年から建造をはじめ、太平洋戦争がぼっ発した直後の1941(昭和16)年12月に大和は完成した。
日本の最高の技術を駆使してつくられた大和は、全長 263m、排水量(≒重さ)65,000トンで、完成当時は世界一巨大な戦艦だった。
3000人以上の乗組員を収容することができたから、もう「村」が海上を移動するようなもの。
大和のスゴさは大きさだけじゃない。
内部には冷暖房やベッドが装備され、映画の上映会が行われることもあり、乗組員は快適に過せたらしい。

 

戦艦大和

 

戦艦大和の象徴は、なんつっても史上最大の口径 46センチの主砲。
これを3つまとめて1つの砲塔にして、それを戦艦の前方部に2基、後方部に1基搭載した。
「46センチ主砲」の射程距離は約 40キロメートルで、東京の日本橋からなら、千葉、川越、八王子あたりを攻撃することができる。
この砲撃に耐えられる装甲を持つ戦艦は、世界のどこにも存在しなかったから、戦艦大和の攻撃力はまさに世界最強だった。
大和は日本の造艦技術の高さを世界に知らしめた戦艦で、海軍の誇りでもあった。
ただ、外国に同じものをつくる技術がなかったとも言い切れない。
当時、米軍の戦艦は、幅 33メートルのパナマ運河を通って太平洋や大西洋へ移動していたため、それを超える横幅の艦船をつくることはできなかったのだ。
その大きさの艦船だと、積める主砲は最大でも 40〜41センチ砲になる。

 

 

なんで日本は、こんな怪物を世に生み出そうと考えたのか?

大和の建造計画がスタートしたきっかけは、第一次世界大戦後に結ばれたワシントン海軍軍縮条約(1922年)とロンドン海軍軍縮条約(1930年)にある。
これによって、日本は米英に対して、6割の戦艦しか保有することができなくなった。
日本海軍は最大の仮想敵国をアメリカとし、日本は条約が失効した後、各国による軍艦の建造競争がはじまることを予測していた。
アメリカの工業力を考えれば、艦船の建造数で日本に勝ち目はない。
そこで海軍は量より質を重視し、攻撃力の高い戦艦をつくることを決め、史上最大の主砲が生まれることとなった。

艦隊決戦によって米国に勝つには、大口径の大砲によって敵の射程距離に入らないうちに攻撃を加えて勢力の漸減を図り、勢力比が同等になったところで全戦艦が決戦を挑んで撃滅する。

「失敗の本質 (ダイヤモンド社. Kindle 版) 戸部 良一; 寺本 義也; 鎌田 伸一; 杉之尾 孝生; 村井 友秀; 野中 郁次郎」

 

つまり、まず世界最大の主砲を搭載するという目的があり、それを可能とする戦艦がつくられたことになる。
主役はあくまでも「46センチ主砲」だ。
敵が攻撃できない遠距離から、戦艦大和がバンバン砲撃をおこない、戦力を削ったところで「いっけ〜!」と全戦艦が突撃し、敵を撃滅する。
「これで勝つる!」と日本軍は確信したのだろうけど、実際には、戦艦大和は持てる力を発揮することなく、戦争末期の1945年に鹿児島の沖合で米軍機の猛攻撃を受けて沈没した。

日本は「世界最大・最強」をめざして実現したが、戦争全体から見ればあまり意味がなかった。
中二病が現実に敗北するのはお約束だ。

 

 

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2 件のコメント

  • > このブログのねらいはおもにこんなものです。
    > ・外国人が見た不思議の国・日本を紹介する。
    > ・日本の歴史や文化について理解を深める。
    > ・外国人と英語で話ができるようになる。
    > 「broaden your horizons」
    > 日本や世界の歴史や文化の知識を深めていきましょう。

    うん、素晴らしい。この「ねらい」に沿ったブログとして最近は絶好調ですね。
    報道によると小中学校での英語教育がまた強化されるらしいですが、その教材に、このブログを推奨したいくらいです。(ああでも、私は初等教育分野には実は全く関係していません。ごめんなさい。)
    この先、日本で暮らしていく人たちに、少しでも役立つ(=武器になる)情報を提供できればいいのですけど。そうすることで、今後の日本社会において「中二病」が原因で致命的な失敗をすることの無いように。
    (だけど「中二病」という単語、いつまで日本社会で通じますかね?)

  • おおっ。
    それは過分な言葉で恐縮でございます。
    これからもがんばりますよ。
    ネタは山盛りありますんで。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。