約310万人の犠牲者を出し、2度の原子投下を経験して終わった太平洋戦争。
あの悲劇が終わって76年目のことし、終戦記念日の8月15日に在日ドイツ大使館がこんなツイートをした。
「広島と長崎は、核戦争の狂気を物語る象徴的存在です。発端は、ドイツと日本のナショナリズムと軍国主義によって始まった戦争でした。
本日迎える長崎原爆忌は、核兵器のない世界を目指す取り組みがなぜこれほど重要なのかを私たちに思い起こさせる日でもあります。」
これに、「それ違いますよ。ほんとうの歴史を知ってください!」と反発する日本人がいれば、「ドイツに敬意を示す。否定する人間は恥を知れ。」といったコメントする韓国・中国人が登場してツイートのコメント欄は大荒れに。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
ドイツ大使館の“戦争ツイート”に日本で反発、さらに中韓も参戦
まずボクの見方を書くと、広島と長崎が「核戦争の狂気を物語る象徴的存在」ということには賛成。
でも、原子投下を決断し実行したアメリカにはひと言も触れず、「ドイツと日本のナショナリズムと軍国主義によって始まった戦争でした」と飛躍するところに違和感がある。
単純にこの2つの文をつなげると、「核戦争の狂気」はまるで日本のせいかのように読めてしまう。
日本の真珠湾攻撃によって太平洋戦争が始まったことは事実でも、原爆投下はアメリカの決断によるものだから、それぞれ主語は分けて考える必要がある。
「発端」の中身が明らかにされてないけど、日独が始めた戦争ということだから第二次世界大戦で間違いないはずだ。
この戦争の原因が両国の軍国主義にある、という指摘はそのとおり。
日本では一般的に1939年9月1日、ドイツがポーランドに侵攻したことによって第二次世界大戦が始まったとされている。
ちなみにこの日、ポーランドの国境近くにいておびただしい戦車がへ進軍しているのを見て、イギリス人記者クレア・ホリングワースがすぐ首都ワルシャワの英国大使館に電話で伝えた。
「まさか」と信用しない職員にホリングワースは受話器を外に向けて、戦車が進む「大きな音」を聞かせて、ようやく何が起こっているのか納得させた。
ドイツ軍によるポーランド侵攻、第二次世界大戦の始まりだ。
そのあと日本が太平洋戦争を始めたことで、東南アジアや太平洋をふくむ世界規模の戦争へ拡大したから、ドイツ大使館のツイートの内容は間違ってはいない。
この責任をドイツと日本ではなく、両国の「ナショナリズムと軍国主義」という当時の風潮や思想に求めたのは大使館側の配慮だと思う。
310万人の日本人はこの思想の犠牲者とも言えるから、8月6日・9日に「もう軍国主義を復活させてはいけない」という思いを改めて確認することは大事だ。でも、原爆投下の直接の当事者であるアメリカを抜かしてはいけない。
とボクは思うのだが、外国人はどうなのか?
日本に住んでいるアメリカ人、トルコ人、東ヨーロッパのリトアニア人、ドイツ人に聞いてみたからこれから彼らの意見を紹介しよう(全員大卒)。
まずは大学で歴史を学び、かなり知識のあるアメリカ人から。
「ドイツ大使館のツイートの内容は正しいし、欧米ではこれが常識的な見方。ドイツが始めたのは第二次世界大戦の「ヨーロッパ・バージョン」、日本は「太平洋バージョン」だからこの二つは不可分。
あの大戦は1939年のドイツによるポーランド侵攻から、9月2日に日本が降伏文書に調印したときまで続けられたから、日独が始めたものとみて間違いない。
この原因が両国のナショナリズムと軍国主義というのもまったくおかしくない。むしろこれを否定する人間がいたら、その認識こそ問題だ。」
なるほどナルホド。
ではトルコ人とリトアニア人の意見はというと、「太平洋戦争のことはよくわからない。大使館のツイートは合ってんじゃないの?」というもの。
リトアニアには第二次世界大戦のときドイツに占領され、そのあとソ連に支配された苦い記憶がある。彼にとって関心があるのはリトアニアやヨーロッパのことだけで、当時の日本はその範囲外にあるから知識がない。
トルコはずっと中立の立場で、大戦末期の1945年に英米仏の連合国側に味方して参戦した。国内が戦場になったわけでもないし、第二次世界大戦はあまり関係ない。大事なのは第一次世界大戦の方で、この敗戦のあとトルコ革命が起きて、皇帝が倒されてトルコ共和国になった。これに比べると、第二次大戦の印象はとても薄い。
2人とも、日本がドイツと同じ枢軸国のメンバーというのは知っていたから、「発端は、ドイツと日本のナショナリズムと軍国主義によって始まった戦争でした」と聞いても特に違和感はない。
でも、“太平洋バージョン”は自国とほぼ関係ないから、「へー、そうなんだ(棒)」と思うだけで興味はない。
世界ではこういう認識の外国人が一番多いと思われ。
ドイツ人に聞くと、彼の意見も大使館とだいたい同じ。
でもあのツイートはあいまいだから、いろいろ誤解が生まれそうと言う。
ドイツがポーランドを、日本が真珠湾を攻撃したことで第二次世界大戦が始まったという指摘に異論はないけど、理由は違う。
ヨーロッパで戦争が始まったあと、アメリカは英仏に武器を送って後方から支援していて、自分が戦争に参加する理由を探していた。それで日本に真珠湾を攻撃させたと自分は考えているから、ドイツのポーランド侵攻とは動機が違う。
それにドイツが戦争を始めた大きな原因に人種差別思想があったけど、日本はそうじゃない。
歴史の表面的な行動を見れば、日独の軍国主義が始めた戦争という見方は正しい。
ただそうなった背景にはそれぞれの事情があったし、日本はホロコースト(ユダヤ人虐殺)はしていないから、日本とナチス=ドイツを同時にみるなら、同じ部分と違う部分をしっかり分ける必要はあると思う。
ということで外国人に話を聞いた感じだと、ドイツ大使館の考え方は欧米人には常識的で、中国・韓国人もこれに賛成。
でも、外国人で一番多い層は「太平洋戦争のことはよくわからない。大使館のツイートは合ってんじゃないの?」と思われ。
当時、日本とドイツが同盟関係にあって連合国の敵だったことは、多くの外国人が知っている。
でもそれ以上のことはよく知らないから、「ドイツと日本のナショナリズムと軍国主義によって始まった戦争でした」と言われたら、反対する知識も理由もないから「へ~、そうなんだ」で終わる外国人が多いと思う。
それが事実でも間違いでも、自分たちにはメリットもデメリットもないから割とどうでもいい。
「それ違いますよ。ほんとうの歴史を知ってください!」という反応は、日本人以外には期待しないほうがいい。
というかそのまえに、「ほんとうの歴史」を明らかにしないと。
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>原爆投下の直接の当事者であるアメリカを抜かしてはいけない
戦争の発端と原爆での虐殺は別問題。全くその通りですが
>かなり知識のあるアメリカ人
ある意味一番気になるこの人のその辺の考え方って?発端はべつに異論ありませんが。やはり必要だったから言うまでもないってこと?
アメリカ軍への被害を少なくし、早く戦争を終わらせるために原爆投下をした、というのが彼の見方です。
勝者の立場から見た歴史は大使館の言う通りなんですけど
開戦に至るまでの経緯が日独で違うので、外国の大使館が上から目線で言うから揉めたのだと思います。
最初のツイートだけで止めとけば良かったのにと見てて思いました。
そもそもヴェルサイユ体制打破・千年帝国建設を目的に戦争を前提に国家経営をしていたドイツと
勢力拡大の過程でアメリカの外圧のため結果的に日米(+連合国)戦となった日本では事情が違うかと。
そして原爆投下や無差別爆撃は当時のハーグ陸戦条約でも禁止されている行為に該当すると思います。
原爆投下が無くても近海の交通すら遮断されていた日本は結局は降伏する羽目になっていたので
早く、と言うのはわかりますが、終わらせるために必須だったかと言うと疑問符がつくと思います。
都市無差別爆撃や原爆については遺憾に思う、位言えば武士の情けにはなると思うのですが
まあこれも敗戦国の負け惜しみかも知れません。
イギリス、フランス「ドイツが第一次大戦の賠償金を黙って払っていれば、第二次大戦は起きなかった。」
> アメリカ軍への被害を少なくし、早く戦争を終わらせるために原爆投下をした、というのが彼の見方
私もそうだと思います。
で、その選択は、当時の米国トップとして、また米国民にとって、極めて妥当な選択だったとも思います。
当時のナチス・ドイツや大日本帝国がもしも逆の立場だったら、おそらく、同じ決断を躊躇なくしたことでしょう。米国だって、日本人の「最後の抵抗」を恐れていたのですよ。
簡単な話で、ドイツのアメリカへの忖度とチャイナに対してのリップサービスです。ドイツ人が中日大使になっただけの事。
https://jp.reuters.com/article/germany-china-idJPKBN2I3052
日本ではいろんな見方がありますが、欧米ではこの認識が常識的です。