韓国に、仏教僧の格好をしてパフォーマンスをする人気のお笑いタレントがいる。
彼が東南アジアの国でもその活動をしようとしたところ、「仏教を侮辱している!」と現地で怒られ、公演は全てキャンセルされてしまった。
仏教をはじめとする宗教に対する感覚は、韓国と日本ではわりと薄いけれど、東南アジアではかなり厳格だ。だから、日韓では可能なことがマレーシアやミャンマーでは禁止されることもある。
きのう、そんな記事を書いたわけだ。
宗教に対する見方や意識は信仰心の強さや立場によっても違い、日本国内にもユルユルの人から、ミャンマー僧のように厳しい人までいるから、「OK/NG」の基準もいろいろある。
海外に比べれば、日本の社会は宗教色が薄く、「宗教の観光化」が問題になることがよくある。
そんな時、宗教に厳格な人ほど強いストレスを感じてしまう。
最近、京都でそんな宮司さんが現れて、社会に一石を投じたから、今回はそれを紹介しようと思う。
日本三大祭りといえば、「ヤマザキ春のパンまつり」「花王ヘアケアまつり」「東映まんがまつり」がネットでは知られているが、一般的には天神祭(大阪)と神田祭(東京)、そして京都の祇園祭が有名だ。
祇園祭の目的や歴史についてはこの記事をどーぞ。
祇園祭の見どころの一つに、山鉾巡行(やまほこじゅんこう)がある。
山鉾は豪華な飾りのある山車(だし)のことで、その上に鉾(ほこ)や長刀 (なぎなた) などを立てている。そんな山鉾が京都市内を移動する様子はまさに圧巻。
去年の7月17日に行われた山鉾巡行では、15万人が沿道に詰めかけ、スマホを向けていた。
この時期の京都は暑く、山鉾巡行は大人気で海外からも見物客がやってくるから、落ち着いて見たい人のために、京都市観光協会は「観覧席」を売り出している。
昨年(2023年)から、初めて1席40万円の「プレミアム観覧席」が販売されて注目を浴びた。
これは、山鉾巡行を目の前で見ることができ、酒やおばんざい、かき氷なども提供されるゴージャスなシートだ。
この席はかなり売れて成功したから、観光協会の担当者は「京都の活性化につなげたい」と目を輝かせて語ったが、今年はその光が曇ってしまった。
祇園祭を主催する八坂神社の宮司がプレミアム観覧席について、「山鉾巡行は神事で、お酒を楽しみながら見るショーではない」と反発し、京都市観光協会の理事を辞任する意向を示したのだ。
今年の価格は昨年よりも控えめで、1席15万円と20万円のプレミアム席が用意されている。
ちなみに最低価格は一般席の4100円ナリ。
京都市観光協会は宮司の言葉に驚き、担当者はメディアの取材に「真意を確認したい。サービスの内容を見直す余地はある」と語った。
(それなら、まずは「サービスの内容」と言ってしまうその感覚から見直そう。)
この出来事にネットユーザーの感想は?
・気骨があるね
・神事を観光資源として金を取るなんてごく普通のことだろ
・資本主義が暴走しだしてる時代に宮司さん流石の一石投じたね
・神事を観光資源として認めると威厳とか権威とか損なわれちゃうじゃん
・相撲いいの?
・相撲協会は宗教法人じゃないから関係ないだろ
最近の日本では、寺や神社が観光化されたり、宗教行事がエンタメ化されたりしているという批判を聞くことが多い。
でも、信仰の問題は基準があいまいで、「神事かビジネスか?」の解釈や「OK/NG」の判断も主観的な部分が大きいから、意見はなかなかまとまらない。
山鉾巡行はエレクトリカル・パレードとは違うし、祇園祭は「春のパンまつり」と全く別のジャンルにある。
宗教要素が皆無だったら問題は起こらないが、信仰と金がからむと面倒なことになりやすい。
神や仏に仕える人と観光協会で働く人とでは立場や目的が違うから、一方が神事として尊重しているつもりでも、もう一方には「ビジネス利用している」と見えてしまうから、今回のようなことが古都で起こった。
ただ、観光協会側も山鉾巡行をただの「ショー」にしないように配慮していて、有料席には、専門家の説明を聞いて祇園祭の理解を深められるものも用意されている。
「プレミアム観覧席」の利益も、何らかの形で市民に還元されるはず。人びとの幸せにつながれば、それは神道の目的とも一致する。
…そんなことを、いま観光協会の人たちは宮司に説いていると思われる。
日本には無宗教の人が多いから、宗教の観光化やエンタメ化が進みやすい。だから、どこかで「ストップ」をかける人が必要になる。
といっても、東南アジアのような厳格さは日本人には合わないから、やっぱりある程度の“ユルさ”はあったほうがいい。
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