日本人の「ありがとう」に、中国人と米国人が感じたコト

 

同じ日本人でも価値観はソレゾレ違うから、同じメッセージをもらっても反応はさまざまだ。

1993年5月15日、ヴェルディ川崎 vs 横浜マリノス戦の試合がおこなわれ、Jリーグの歴史がはじまった。
この試合には約6万人の席に対し、約78万通の応募があったという。
抽選にハズレた人には当時の川淵三郎チェアマンのアイデアで、選手のサインと「テレビで応援して下さい」と書かれたメッセージカードが送られた。
川淵氏は感謝の気持ちを表して、ほとんどの人はそう受け止めた。が、例外的に、「テレビで観みろとは何事だ!」と怒る人もいた。中には“イヤミ”と感じる人もいる。

違う文化圏からきた外国人だと、同じ日本人のサービスを受けても感想はまったく違う(こともある)。

 

10年ほど前、日本に住んでいた中国人(30代の男性)は、日本人のサービスを絶賛していた。
日本の店では、お年寄りも高校生のバイトでも店員は「いらっしゃいませ」、「ありがとうございました」と気持ち良くあいさつをするし、対応がとても丁寧だと。
中国の商店だと、「いらっしゃいませ」と言うかどうかは店員のキャラやその日の気分しだいで、客が店に入ってきて目が合っても、何も言わずに視線をそらす店員も珍しくない。
中国ではそんな対応が普通で、彼は店員に「お釣りをごまかさなかったらいい」以上のことは期待していなかった。だから、日本のサービスを経験し、別世界があることを知った。

彼は特に、何も買わずにコンビニを出ていく客の背中に向かって、店員が「ありがとうございました」と声をかけることに感動したという。
利益は無くても、客がその店を選び、足を運んできてくれたことに感謝するという発想は、中国人の彼には衝撃的で、「本当に素晴らしいと思った。5つ星ホテルじゃなくて、コンビニの店員がするのだからね。彼らはしっかりした教育を受けた、サービスのプロだよ」と絶賛する。

 

最近、アメリカ人と話をしていて、以前そんな中国人がいたことを話すと、彼は「そうなんだ! 日本人のサービスは本当にスゴイよ」と同意することはなく、「ふーん」と冷めた反応を見せた。
中国とアメリカの店ではサービスが違っていて、基準となる最低ラインも違うから、受け止め方も違うのかと思ったら、そうでもなかった。
彼も日本に来たころは、同じタイミングで「ありがとうございました」と言われた時は感動したが、日本に10年も住んでいると受け止め方が変わったという。

「今ではどっちかというと、あれは嫌味に聞こえる。アメリカ人は自分の気持ちをわりとハッキリ伝えるけど、日本人は遠回しに伝えることが多い。それだと分かりにくいから、正直、イライラすることもある。だから、何も買わずに出ていく時の“ありがとうございました”は、間接的に、“何しに来たんだよ”と言っているように感じるんだ。そもそも、そんなことを言う必要は無いだろ」

日本に長く住んでいるこのアメリカ人にとっては、後ろから「小石」を投げられたような気分になるらしい。

でも、そういう場面は少ないし、彼としては、それよりも日本人の客が“エラそう”にしていることのほうが気になるという。
ほとんどの日本人は、レジで店員が「ありがとうございました」と言っても、何も言わずに店から出ていく。
アメリカでは客が返事をしないで、店員を無視するような態度をとれば無礼になるから、店員は「アイツ感じ悪いな」と思うらしい。
(そういう時に、後ろから「サンキュー!」と聞こえてきたら、それは間違いなく嫌味だ。)

日本の文化に口出しはしないが、彼は今でもアメリカの文化を守り、「アリガトー」と笑顔で店員に言うようにしている。
つまり、彼の感覚としては、買い物をしないで出ていく客に、店員は何も言う必要はない。そんな礼儀正しさなんていらない。でも、レジで「ありがとうございました」と言う店員に対して、客が礼儀として「ありがとう」を返すことは必要。
たぶん、中国では日本と同じで、客が黙って出ていっても店員は気にしない。

それにしても、日本人は「ありがとう」を言い過ぎかも。

 

 

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1 個のコメント

  • どうですかね。
    日本語で呼びかけに使う「ありがとう」「すみません」「ちょっと失礼」といったフレーズは、その中国人やアメリカ人が理解しているより、もう少し広い意味があるんじゃないですか?

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。