【日本人さあ…】中国人が案内の漢字であきれたムダな配慮

 

知り合いの中国人(20代・男性)は日本の大学に留学していて、ことしの9月に卒業して帰国した。
なので、その前に一緒にご飯を食べに行って、3年間の日本経験について話を聞いた。
彼にとって日本人の良い点は、相手のことを考えて行動するきめ細やかさで、欠点は、相手の立場で考えないから、配慮が無意味になってしまうところ。
そう言って、「あれを見てください」とレストランの天井にあった案内を指さした。

 

 

彼の意見では、中国人も韓国人も「トイレ」の英語ぐらい読めるから、この場合は、男女のサインと英語表記だけで十分。
中国語とハングルの表記はいらない。
このレストランに来る客の視点で考えたら、外国語を無くして、文字をもっと大きくして分かりやすくした方がいい。

日本人はとても丁寧で、礼儀正しい態度で客にサービスをする。
そんな「おもてなし」の心は本当に素晴らしいと彼は称賛するが、これまで日本の各地へ行った経験から、「この配慮は意味がない…」とあきれることもあったと言う。
彼は中国人だから、それは漢字に関することだ。

その事例を紹介する前に、東アジアの漢字について簡単に説明しよう。
日本・中国・台湾(香港)人は漢字を使っているが、種類は微妙に違う。
漢字は、「abc…」といった文字に比べて、はるかに複雑でむずかしいから、日本では戦後に簡略化されて現在の形になった。
中国でも同じように考え、漢字を簡単に表すようになり、それが今の「簡体(かんたい)字」になる。
台湾人が使っている漢字は日中で簡略される前のもので、「繁体(はんたい)字」という。
日本でいう旧字体でトラディショナルな漢字。

たとえば、「広」という日本語の漢字は、簡体字では「广」で、繁体字だと「廣」になる。
日本語の「竜」は簡体字で「龙」、繁体字だと「龍」になる。
*今の日本でも、廣や龍といった旧字体を見かけることがある。
日本語の「霊」は簡体字で「灵」で、繁体字ではなんと「靈」となるのだ。
「靈」を手書きすることを考えたら、日本や中国で漢字の簡略化が進んだ理由がわかる。
もちろん、すべての漢字が違っているわけではなく、日本語と繁体字では「夢」は同じだけど、簡体字では「梦」となる。
「電」は日本語と繁体字では同じが、簡体字では「电」だ。

ということで、日本・中国・台湾の漢字の違いがおわかりいただけただろうか。

 

知人の中国人が日本国内を移動していると、駅の案内表示なんかで日本語・簡体字・繁体字の漢字が使われているのを見かけるが、これはイラナイと言う。
「東京」のほかに、中国人用に簡体字の「东京」があったとしても、彼には「東京」の漢字だけで理解できる。
読めない日本の漢字があっても、「Tokyo」みたいに英語表記があれば分かるから、簡体字が無くても無問題だ。

ほかにも、日本では多くの場所で、簡体字と繁体字の両方が表示されているのだけど、実際のところ、中国人や台湾人には役立たないという。
中国人と台湾人はお互いの漢字を読むことはできるから、案内ではどっちか一つを表示するだけでイイらしい。

彼の3年間の日本滞在で一番あきれたのは、同じ漢字であるにもかかわらず、日本語と繁体字と簡体字のすべてが表示されている案内を見つけた瞬間。
たとえば、市川駅で、1つの看板に「市川」の文字が3つあるようなモノだ。
*実際の市川駅のことは知らない。

 

多言語表記には、日本人の「おもてなし」の心が表れているーー。
そんなふうに考えた時期がオレにもありました。

もちろん、中国人の彼も日本に住んでいて、きめ細かい配慮にふれて、何度も感動したことがあるけど、漢字の案内については違う。
中国人や台湾人にとっては、日本語と英語の表記、または簡体字か繁体字のどちらかあればOKなのに、日本語の漢字に簡体字と繁体字も加えるという丁寧さは、彼には労力のムダとしか思えない。
同じ看板に、同じ漢字が2つもあるのを見るとあきれるし、3つも並んでいると、一周回って面白い。
彼からすると、これでは外国人への案内表示としては無意味で、日本人が「私たちはちゃんと配慮してますよ」とアピールしているように見えてしまう。

外国人の視点をスタートにして、日本風のおもてなしをすれば、こういう無駄&無意味なコトは避けられると思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。