今回は、日本の大学に通っている20代のメキシコ人男性から聞いた話を紹介しよう。
でも、その前に、まずはメキシコの基本を確認しておこう。
人口:約1億2,601万人(2020年)
面積:196万平方キロメートル(日本の約5倍)
首都:メキシコシティ
言語:スペイン語
宗教:カトリック(国民の約8割)(2020年)
外務省HP「メキシコ合衆国(United Mexican States)基礎データ」
これを見るとわかるように、メキシコという国は「見た目は子ども、頭脳は大人」ではなくて、面積は日本の5倍で、人口はほぼ同じ。
つまり、メキシコは日本に比べて、すごく広々としているのだ。
ーー君はまえに、ファストフード店でアルバイトをしてたよね?
そこで、「いいな」って思ったことはある?
あるよ。
店長もほかの従業員も基本的にやさしくて、私が働きはじめたころ、わかりやすい日本語を使ってくれたし、トレーニングも時間をかけて丁寧に教えてくれた。
メキシコ人はテキトーだから、新人の指導をまかされた人が、じつは仕事をよくわかっていないこともあるwww。
ーーそれでも仕事ができちゃんだ。「考えるな、感じろ」みたいな精神領域で働いているのかな。
逆に、そこで働いていて「イヤだな」って思ったことは?
嫌なのは、ピーク時になると、“人が変わる”こと。
店長たちはふだんは良い人なんだけど、週末のランチタイムとか、お客さんがたくさん来る時間帯になると、こっちを睨(にら)んだり怒鳴ったりすることが増えて、とにかく怒りっぽくなる。でも、その時間帯を過ぎると、またおだやかな人に戻る。
悪い霊に取りつかれているみたい。
ーー「忙しい」って漢字は「心を亡くす」って書くから…。
ーーさて、いま日本ではお米を植えて育てるシーズンだ。
日本に住んでいたオーストラリア人が、アパートから田んぼが見えて、水が張られて稲が育っていく様子を見て「あれは最高のカレンダー!」と感激していた。
メキシコ人もお米を食べているから、こうして田んぼが広がる風景は同じかな?
確かにメキシコにも米を食べる文化がある。でも、そう言えば、私は田んぼを見た記憶がない。
ちょっと待って。スマホで調べたら、メキシコで米はおもに中部地方で育てられて、私が生まれ育った南部のオアハカでは稲作はしないらしい。オアハカ州は乾燥しているからね。
ーーなるほど。
メキシコは広大だから、地域によって育つ農作物も違うと。
それにしても、カタカナ発音だと「オアハカ」だけど、メキシコ人が言うと「おはか」に聞こえる。今も「お墓では稲作はしない」に聞こえてドキッとしたよ。
ーー日本では北海道から沖縄まで、お米は全国で作られている。
メキシコは日本5個分のでっかい国だから、地域によって「異国レベル」で違いがあるんだろろうね。
そうそう。
日本はどこに行っても同じ人間(日本人)がいて、田舎でも生活は貧しくないし、全体として画一的な印象がある。
メキシコでは、スペイン系の人なら肌が白くて、先住民なら浅黒い。一番多いのは私のようなメスティーソ(混血)で、血の濃さによって肌の色が違う。
都市部と田舎では、経済や教育の格差もすごく大きい。
でも、私は日本で初めて雪を見た。メキシコでも北部では雪が降る地域があるけど、私はそこへ行ったことがない。
チーズの種類も州によって違う。だから、いろんなチーズを楽しむことができるんだ。
日本ではそれができないのが残念。
でも、日本の農作物は味が安定しておいしいから、それはすごく良いところだね。
ーー農作物の生産量じゃなくて、「味が安定している」ってどゆこと?
たとえば、日本のメロンはどれを選んでもおいしい。
メキシコのメロンは見た目が同じでも、味の当たり外れがすごく大きい。慎重に選んでも、食べてみるまで分からない。
ーー日本のメロンやスイカ、イチゴなんかは糖度を測っているから、店にはだいたい同じ味のものが並べられていると思う。
同じお金を払ったのに、味がまったく違うという不平等をきっと日本人は許さない。
だから、おいしさが安定していて、メキシコみたいな“ギャンブル要素”は無いんだろうね。
このあたり、日本人とメキシコ人の国民性が表れている気がする。
イグザクトリー(そのとおり)。
メキシコ人は日本人みたいに細かいことを気にしないから、幸せだし不幸なんだよ。
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