大量リードでも全力プレー 外国人は日本の野球をどう思う?

 

全国高校野球の西東京大会で、新しい「挑戦」が生まれた。
知的障害のある生徒たちが通う特別支援学校が、全国で初めて単独チームとして1回戦に出場し、全力でプレーをしたが、敗れてしまった。
部員たちの奮闘に、観客からは大きな拍手が送られたいう。

東京新聞の記事(2024年7月7日)

都立青鳥 特別支援学校では全国初、単独チームでプレー 5回コールド負けも笑顔に拍手<高校野球・西東京>

支援学校の監督は試合後、「一人でも多くに経験させてあげたいと思っていた」と大会参加の意義を語る。
それはそれで美しいのだけど、0-66 という試合結果について、ネットでは違和感を感じる人が続出。

・野球で絶対に勝てる状況で12点差になったら手を抜けよ
・ちょっと見ていたが相手チームもしんどいと思う
加減し過ぎは叩かれるし試合終わらんし
あの暑い中4時間くらいやってた
・イニングじゃなくて点差でコールドにしようぜ
・野球は5回まで消化しないと試合成立しないからコールド規定もそれに従ってんだろう
・アメリカだったら手加減しないのは優しさがないと叩かれるな

 

結果が見えても、最後の瞬間まで全力で試合をするべきか、それとも手を抜くべきかについて、高校野球では意見が分かれる。
印象としては、相手への敬意という観点から、「手加減抜き」の態度が支持されていると思う。
しかし、過去の甲子園でおこなわれた試合では、21-0 や 19-0 といった一方的な結果もあり、これに対して、「一切手を抜かないことで、相手への礼儀を示した」と満足する人もいれば、「まるで公開処刑。そこまでする必要がある?」と感じる人もいる。

 

海外では、大きくリードしているチームが1ミリも手加減をしないで、どん欲に勝ちにいこうとする姿勢を見せると、相手に対する非礼と見なされることが多い。
個人的には、試合でフルボッコにしても、相手から「礼を尽くしてくれた」と感謝されることがあるのは日本しか知らない。
スポーツの国際大会では、そんな日本人の態度は高く評価されていないどころか、むしろ非難の的になっているという。

スポーツメディア『Numbe』の記事(2018/04/17)

国際大会で日本の野球が不評って? 勝つための戦術と“マナー”の問題。

記事の中で、元アマチュア野球の規則委員長・麻生紘二さんが、日本の野球は世界的に見ても実力はあるものの、こんな問題があると話している。

「野球のマナーという点ではいい評価を得られていません。マナーとは試合の進め方です。相手へのリスペクトが足りていない」

たとえば、カナダでおこなわれた U-18ワールドカップの試合で、日本代表が試合の終盤に 7-0とリードしている状況で、選手が盗塁を成功させた。
すると、カナダの選手が激怒し、球審も日本の態度を問題視して警告試合を宣告したという。

 

日本の野球では、大量リードをしているにもかかわらず、盗塁やバントを仕掛けて得点を積み重ねていく。
それはルールとして認められているし、試合が終わるまではどうなるか分からないから、当然といえば当然。しかし、試合の後半になって 10点以上の差があっても、全力プレーをつづける行為は世界的にはマナー違反と認識される。

日本では少年野球から、「勝つための野球」が重視されてていて、「対戦相手とともに楽しむ」という文化は薄く、高校野球でもその傾向が強くでるという。
実際、中学生や高校生の試合で、7回に 12−0の点差があっても盗塁をきめる選手がいたら、日本人なら「それが試合だ」と冷静に受け入れられるとしても、外国人ならきっと「侮辱された」と感じて怒り出す。
その選手が次の打席に立てば、ピッチャーが報復として、あえてボールをぶつけてもおかしくない。
日本とアメリカの両方でプレーをした経験のある長谷川滋利さんは、日本では「得点差が大きく開いていても確実に勝ちに行く姿勢が身についている」と指摘する。(野球の不文律
だから、甲子園をはじめとする日本の野球に、そんな国際基準を適用するのはむずかしい。

海外でおこなわれた野球の大会で、障害者チームが参加したら、観客はスタンディングオベーションで歓迎するだろうけど、健常者チームが 0-66で勝利したら、「美談」になるとは思えない。試合の途中で観客が怒り出し、大ブーイングする展開しか見えない。

 

 

日本 「目次」

【真面目か!】アメリカ人と日本人で違う、スポーツの目的

【日本人と韓国人の違い】アメリカ人が感じた、似て非なる国

良くも悪くも自己主張:アメリカ人が思う日本人と韓国人の違い

アメリカ人が感じた日本と韓国の違い/運転が荒い理由とは?

 

3 件のコメント

  • > 海外では、大きくリードしているチームが1ミリも手加減をしないで、どん欲に勝ちにいこうとする姿勢を見せると、相手に対する非礼と見なされることが多い。
    > 個人的には、試合でフルボッコにしても、相手から「礼を尽くしてくれた」と感謝されることがあるのは日本しか知らない。

    それは日本人選手の考え方がまっとうであり、海外の考え方がおかしいと、日本人の私は思いますがね。
    そもそも、明文化されたルールの範囲を超えて、社会的常識やマナーの観点から試合の方向を正すべきとしたら、それはレフェリーの役割なのでは?
    ルールとレフェリーの存在をすっ飛ばして、(観客が自分たちの価値観に基づいて)日本人選手を攻撃するというのは、アンフェアとしか思えません。率直に言って負け犬の遠吠えでしょう。

  • 私は韓国人として韓国野球、日本野球、アメリカ野球を見ながらそれぞれ少しずつ違う点を発見して面白がっています。韓国野球は日本統治時代に発展し、プロ野球発足(1982年)初期までは日本野球の影響を大きく受けましたが、2000年代に入ってからはメジャーリーグの影響をより大きく受けています。でも、韓国、アメリカ、日本の野球はそれぞれ違うColorを持っています。国が違うし文化が違うからだと思います。しかし、国際大会の場合は、最も普遍的に通用するルールでプレーするといいと思います。でも、甲子園大会に出てくる日本の高校生がそういうルールに従ってプレーする必要はないと思います。甲子園大会は日本の伝統が生きた日本だけのイベントなので、そのルールに忠実であればいいのだと思います。
    それでも障害のある選手たちとの試合では、監督が少し調整をしてくれることが必要だと思います。ゲームでベストを尽くすことも大切ですが、厳しい状況にある相手チームを配慮する精神も必要ですから。

  • 日本の特に10代の野球では、国内基準と国際基準を分けていると思います。
    海外で日本のやり方をすると、「ずるい」と思われてしまうようなので。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。