【コブラ効果】日本・インド・アメリカなどであった事例

 

大変なことが起きて、それを沈静化させるためにしたことが、逆に事態を悪化させてしまうことが世の中にはある。
たとえば、天ぷら油が発生してすぐに消火しようと水を注いだら、火の付いた油が飛び散って顔に重度のやけどを負った女性もいる。
問題を解決するためにアクションを起こすと、結果的にもっと悪い状態になってしまうことを「 コブラ効果」という。
これが今回のテーマだ。

 

この言葉は、イギリス統治時代のインドで起きたこんな出来事に由来する。
猛毒を持つコブラに困っていたイギリスのインド政府はそれを減らすために、コブラの死骸を持ってきた人に報酬金を渡すことにした。
すると、人びとは「ヒャッハー!」となってコブラを捕らえて役所に持ち込み、毒蛇の被害は減っていった…。
インド政府はそんな未来予想図を描いていたのだろうけど、現実は違った。

その対策を実施すると、たしかに最初はうまくいってコブラの個体数は減ったが、インドの民衆はもっと「スマートな方法」に気がついてしまった。
野生のコブラを探して捕まえることよりも、コブラを飼って増やし、その死骸を持っていった方がコスパやタイパがいい!
思わぬ事態が発生し、困ったインド政府は報奨金制度を廃止する。すると、人びとは「ボーナスステージは終わりかよ」と飼育していたコブラを野に放してしまう。結果、コブラは繁殖をくり返し、以前よりも増えてしまった。
こんなインドらしいオチから、「コブラ効果」という言葉がうまれた。

 

ヒンドゥー教のシヴァ神は首にコブラを巻いている。

 

未来を100%正しく見通すことができるのは神のみ。
ヒトにそんな能力はないから、思っていたのと違うどころか、正反対の結果を招くことはよくある。
フランスの植民地だったベトナムでも同じようなことが発生した。

フランスのインドシナ政府はハノイにいる大量のラット(ネズミ)に困っていて、インドと同じようにラットの死骸を持ってくれば報酬金を支払うことにした。ラットを殺害した証拠として、しっぽだけを出せばOK。
すると、それを実施したあと、ハノイ市内ではしっぽの無いラットが発生するようになった。
調べてみると、ベトナムの民衆はラットを捕まえるとしっぽだけを切り取り、ラットを逃がしていたことが判明。そのラットが子どもを産み、事態は悪化していった。
この対策ではラットがいるかぎり、お金をゲットできるから、民衆がラットの保護と「無限増殖」を考えるのも仕方ない。

 

コブラ効果は「人間あるある」だから、現代でも起こるのだ。
2002年にイギリスがアフガニスタンで、アヘンの原料となる「ケシ」を育てていた農家に対して、ケシの収穫物を破棄する代わりに、お金を渡すことにした。結果、農家はそれまで以上に、熱心にケシ栽培に取り組むようになった。

これは2022年にアメリカで起きたケース。
テキサス州で銃規制を推進するため、当局が市民から銃を一律で買い取るキャンペーンをはじめた。すると、ある住民は3Dプリンターを使って大量の「銃」を作り、それを渡して3000ドル(1ドル=150円で45万円)をゲットした。

参考:「Perverse incentive

 

3Dで作られたインチキ銃

 

歴史の中にも、「 コブラ効果」の事例を見ることができる。
中国で人民がマラリアやペストに苦しめられていることを知った毛沢東は、その原因となる蚊・ネズミ・ハエ・スズメを徹底的に駆除することにした。
すると、数千万人が餓死するという大惨事を招いてしまう。

毛沢東「四害駆除で豊かな未来がくるよ」→数千万人が餓死

 

では最後に、わが国の事例を紹介しよう。

1937年に盧溝橋事件が起きたことがきっかけで、日本は中国との戦争をはじめた。
戦争が長引くにつれて日本では資源が不足していき、このままで戦争の継続が困難になってしまう。そこで日本は、資源を求めて東南アジアへ軍を進める。すると、アメリカの反発を招き、今度はアメリカとの戦争がぼっ発し、2度も原子爆弾を落とされた。
全体をザックリ見ると、日本は日中戦争に勝利するためにとった行動で太平洋戦争を招き、最後にはどっちも負けて壊滅的なダメージを受けてしまった。
まさにコブラ効果。

 

 

外国人から見た不思議の国・日本 「目次」

【イギリスの置き土産】インドの警察官が高圧的で暴力的な理由

蝗害とかいう地獄と、バッタを駆除した日本ならではの作戦

日本よ、これが植民地支配だ 豊かなインドで起きた悲劇

【処刑とプリン】ベトナム人に聞く、フランス支配の光と闇

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。