【最高かよ】宣伝文句に見る、インド人と日本人の感覚の違い

 

いま京都を代表する観光地・嵐山の近くにあるカフェが炎上している。3次元ではなく、2次元で。
そこでは、シャトレーゼのケーキと飲み物のセットを1600円ほどで提供していたから、「酷いぼったくり」とSNSで苦情が噴出し、無許可でケーキを使われたシャトレーゼも「ブランドを著しく傷つける」と激おこ。

この店のオーナーは日本人ではなく、メディアの報道を見ると「中国系」の人物で、従業員も外国人(全員かは不明)で日本語が通じにくいらしい。
今回の騒動でこのカフェの存在を知った人が多かったが、ネットでは店の写真を見ただけで、「アヤシサ」を感じ取った人が何人もいた。
それは、店先の置かれた掲示物にでっかく「京都で最も美しいカフェ」、英語でも「THE MOST BEAUTIFUL CAFE IN KYOTO」と書かれていたから。
この宣伝文句を見て、「自分の店をアピールするとき、日本人の感覚なら、こんな根拠不明で大げさな言葉は使わない」と魅力よりも、胡散臭さを感じるという書き込みがいくつもあった。
ボクも同感。
「〜で最も大きい」や「重い」なら数字で客観的に判断できるからいいとしても、「美しさ」や「おいしさ」などは個人の感じ方によるから、日本人の店なら「京都で最も美しいカフェ」というキャッチコピーをつけるとは思えない。

これまで30カ国ほどに行った経験から言わせてもらうと、こういう大げさな宣伝文句は海外ではわりと多く、とくにインドでたくさん見た。

 

 

インドは世界で7番目に大きく、日本の約8倍の面積がある。
そんな広大な国に住むインド人は細かいことを気にせず、簡単に大げさな表現を使うことが多い。とくに、インド人の言う「ノープロブレム」を信じるとトンデモナイ目にあう。
これまでインドには何度か旅行していて、街中のパン屋や仕立て屋の看板で「Best」や「World’s Best」といった“盛り盛り”の宣伝文句をよく見て、「日本ではこういう言葉は違法だけど、インドでは牛と同じで野放しなのか」と疑問に思った。
*日本では企業が宣伝で「最高、最強、最も」といった表現を使うには、一定の条件を満たさないといけない。

以前、日本に住んでいた3人のインド人と話をしていたとき、彼らにそのことについて聞いてみた。
まず、こいうオーバーな宣伝文句はインドにある世界的な企業ではなく、小さなローカル企業で多いらしい。
3人の感覚では、宣伝では見る人にインパクトを与えることが重要だから、実際以上に盛ってるのは当たり前。インド人は日本人よりも大ざっぱだから、正確さをあまり気にしない。
だから、こうした言葉に批判的な人もいるけれど、一般的にはインドの常識の範囲内にある。

彼らからすると、日本の店にある宣伝文句は弱々しく感じてしまうらしい。
その中の1人が日本人の友人と買い物に行って、その店に「地域ナンバーワンを目指します」と書いてあるのを知ると、友人は「正確な表現で、努力している感じがする」と良い印象を持ったが、彼には自信を感じられず、心に刺さらなかった。
でも、日本とインドを比べると、インドの店は「看板倒れ」のところが多く、置いている商品の質は日本の店のほうが圧倒的に高い。

 

日本人らしい謙虚さや控えめな態度を「誠実」と好ましく思う人もいれば、文化や価値観の違いから、「頼りない」とネガティブに感じる人もいる。
宣伝文句について言えば、インド人にはきっと後者が多い。
インド基準では、「市内で最も美しいカフェ」が市内にいくつもあるかもしれない。で、シャトレーゼのケーキを出されても満足するかも。

 

 

インド 目次 ③

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【カレーと刺身】“日本で嫌いな食べ物”とインド人が言う理由

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。