【韓国の食べ物】米国人が嫌いなもの、“怒り”を感じたもの

 

ソウルに住んでいた友人のアメリカ人女性にとって、韓国最大の魅力はグルメだ。
だから、いまニューヨークに住んでいる彼女は、韓国の安くておいしい食べ物をとても恋しく思っている。といっても、韓国の食べ物ならエブリシングOKというわけではなく、「これは無理!」と思ったものもある。
たとえばポンテギ
これはカイコの蛹(さなぎ)を蒸して味を付けた食べ物で、韓国ではつまようじに刺してスナック感覚で食べるが、ポンテギの独特な匂いと見た目を嫌う人も多い。そのアメリカ人も同じで、ポンテギというハードルは彼女の好奇心よりも高くて、口に入れることはできなかった。
しかし、彼女にはこの昆虫食がマシに見えるほど、不快感を越えてもはや「許さない」と思う食べ物があった。

 

アメリカ人をノックアウトしたポンテギ

 

韓国には、生きたままのタコを包丁でさばいて、ごま油などを付けて食べる料理がある。抜群の鮮度があって、コリコリとした食感が好評だ。
「生きている」といっても、タコそのものはすでに天に召されていて、神経の部分が生きているから足が動くらしい。
以前、日本人と韓国人が集まる友好的なSNSグループで、そんなタコの踊り食いを食べた韓国人がその様子を動画で紹介すると、「これだから、わが国は欧米諸国から残酷で未開と非難されるのだ」と怒る人がいれば、「嫌なら食べなければいい。これも韓国の食文化のひとつだ」と反発する人が現れ、韓国人の間でプチ論争が発生した。
そんななか、韓国人らしい発想だなと思ったのがこのコメント。

「개인적으로 낙지탕탕이는 외국사람들이 앞으로도 계속 싫어해주었으면 합니다. 왜냐하면 사람들이 많이 먹어서 수요가 많아지면 가격이 올라서 제가 먹지 못하기 때문입니다.」

(タコの料理はこれからもずっと外国人に嫌われ続けてほしいです。 なぜなら、人がたくさん食べて需要が多くなると、値段が上がって私が食べられなくなるからです。)

 

ということで、冒頭のアメリカ人が韓国にある食べ物の中で、ワーストに選んだのはタコの刺し身(活き造り)だった。
ポンテギは「キモい…」と感じただけで、食文化が違えばそんな経験はよくある。
しかし、お皿の上でピクピク動くタコの活き造りはとても残酷で、それを箸でつまんで笑って見ている韓国人の上司を見ると、不快感を超えて怒りを感じた。
ポンテギは感覚的に受け入れられなかったが、認めることはできた。でも、タコの活け造りは倫理的に許せず、存在することも認められない。
彼女に価値観としては、生き物を殺して食べることは仕方ないとしても、その尊厳や権利を尊重しなければならない。動物愛護の精神からも、動いているタコの足を見るのは苦痛で、それは1つの拷問になる。彼女の頭も心もこの食べ物を拒否した。
だから、それを楽しく&おいしそうに食べる韓国人の上司や同僚がとても遠くに見えたし、「君は韓国にいるんだから、これを食べてみるべきだ」と笑顔で勧める彼らに怒りがわいてきたという。

タコの活き造りを見て、欧米人が「これは無理!」と拒否感を感じるのは常識的だ。
2000年代に゙サッカーの韓国代表の監督をしていたオランダ人のヒディングも衝撃を受けた。
*「ヤン」はチームマネージャーのオランダ人。

夕食時、刺身料理の店でヤンが『災難』にあった。テーブルにはタコがのっていた。ずたずたに切り裂かれたタコたちは、にょろにょろと皿の上で蠢(うごめ)いていた。そんなものを食べるなんて。

「ヒディング自伝 韓国を変えた男 (文藝春秋)」

 

ドン引きしているオランダ人をよそに、韓国の選手やコーチたちはおいしそうにタコを飲み込んでいる。そのうち誰かが、ヒディングたちに食べてみろと言いだした。ヒディングは「とうてい食べられるわけがなかった」という。

日本と韓国の食文化には共通点が多く、日本にもイナゴの佃煮やタコの活き造りがある。
タコが生きたまま切断され、お皿の上で足がうごめている様子は個人的にはホラーでしかないけど、韓流ブームの影響から、日本では女性からの人気が高いらしい。
SNSを見ると、「タコが口にくっついて大変でした! でも美味しかった!」といった食レポがいくつもある。
牛肉のユッケとタンタンイ(ダコの活き造り)を同時に食べる「ユッケタンタンイ」というのは、生肉&生肉の組み合わせでわりと強烈な見た目をしているのに、「タコがあんまり動いてなくて残念」という女子の投稿があってビックリした。
韓国では逆に、ユッケタンタンイは年齢層の高い人たちに人気で、若い女性では引いてしまう人が多い気がする。
日本の女性はこの点では欧米ではなく、韓国化している。

 

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。