【悲報】タイで人気なのは、和牛より“WAGYU”だった

 

前回の記事で、シャインマスカットが韓国・中国へ流出し、日本は年間100億円の利益を失っているという話を書いた。
ということで、今回の記事はそのスピンオフで、日本人にとって残念な話を書いていこう。

 

最近のタイでは「WAGYU」の人気が爆発していて、知り合いのタイ人が焼肉店へ行って、SNSにこんな写真をアップした。

 

   

 

これは別のタイ人が投稿した「飯テロ」画像だ。

 

    

 

 

もう何年も前から、日本に来たタイ人が「和牛は本当においしい! 肉が柔らかくてジューシーで、タイの牛肉とはまったくの別物!」と絶賛していたし、タイでも焼肉店が増えて、「ワギュウはもうタイ語になっている」という話も聞いていたから、こんな投稿を見ても、今さら何も思わないこともない。
正直、ウンザリさせられる。これは和牛ではなくて、WAGYUだから。

日本人が苦労に苦労を重ね、質の高い和牛の開発に成功すると、政府はそれが生み出す利益を守るために、和牛の精子や胚などの輸出を厳しく禁止した。しかし、1970年代に研究目的でアメリカへ連れていかれた和牛から、和牛の精子と胚が「盗まれ」ると、ほかの国々へ流出してしまった。
その結果、いまではアメリカやオーストラリアなどで、現地の牛とかけ合わせて新しい「WAGYU」がつくられ、タイなどへ輸出されている。
そういうことをする外国人に悪びれた様子はない。
オーストラリアでは、 WAGYU協会が「本物」であることを示す血統書を発行していて、それを見ると、ルーツは和牛であることが明示されている。つまり、不正に流出されたことがわかるのだけど、協会側はまったく気にしていない。

だから、WAGYUが世界中で支持されているのに、日本に利益が入ってこない。
WAGYUは和牛とは違うけれど、和牛の遺伝子がもとになっているから、言ってみれば「本物のニセモノ」だ。
WAGYUはタイでもつくられていて、その品質は向上し、「タイWAGYU」は日本の和牛に近づいているという。
「自分の力で、タイWAGYUを日本の和牛と同じクオリティのものまで高めたい」と意気込みを語るタイのブリーダーもいて、罪悪感なんてゼロ。

タイ人から聞いた話では、日本から輸出された本物の和牛は高価だから、おもに金持ちが食べている。 WAGYUはその下位互換で値段も安く、質や味は落ちるが、タイ人には十分おいしいから中間層の人たちに広く支持されている。
タイの焼肉店などでは、タイ産やオーストラリア産ということを隠し、「和牛」と宣伝している店もある。客をだまし、和牛の評判を下げている。

しかし、日本経済新聞が伝えるように、日本の損失はとんでもないことになっている。(2024年2月25日)

和牛やシャインマスカット、模倣や品種流出被害1000億円

タイ人から「ワギュウは最高! 私は大ファンです!」と言われても、日本人としては残念な可能性の方が高い。

日本人は優れたものを生み出すことができても、それを保持して、金もうけにつなげることには弱いらしい。
海外で模倣や流出が多い理由には、そんな事態を想定せずに法律を整備していなかったことがあり、さらにその根本には「そんな悪いことをする人間はいないだろう」という平和ボケがあったように思う。
いろいろな国の外国人と付き合っていると、日本人の性善説に対する思いは“信仰”と言っていいほど強く、現実離れしているとよく感じる。無人販売所はその象徴だ。
和牛やシャインマスカットなどの流出は、きっと日本人の甘さやスキが原因の1つにあった。
むかし中国を旅行中、日本語ガイドにこんな話を聞いた。

「日本人はすぐに人を信用するから、簡単に騙されてしまうので。中国人は違います。信用できると確信するまで、相手を疑い続けます。中国を旅行していて出会った人は、まず疑ってください」

国際化を迎えるいまの日本人に必要なアドバイスだと思う。

 

今回の記事の参考:ウィキペディアの「和牛」、テレ朝newsの「タイで人気の…“和牛”ではない“WAGYU”とは」(2020/12/01)

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。