タイ人と日本人の失敗 違う食文化・控えめな性格がその原因

 

最近、有名焼き肉チェーンが期間限定で「女性半額」キャンペーンを開始したことで、ネット上では、

・責任者がよくゴーサイン出したよな
・そんなに目くじら立てる程か?
・男のみ半額キャンペーンやったら世間はどういう反応するのか見てみたい
・こんなの言い始めたら何かにこじつけて割引き出来ないことになっていく
・人は不平等な点において平等である

と議論が巻き起こっている。
会社側には差別意識なんて1ミリも無かったけれど、ネット上では「男女平等」をめぐって賛否が分かれ、“炎上状態”になった。
「嫌なら行くな」で、個人的にはどうでもいい。
しかし、この騒動で、タイ人が日本人と焼肉店へ行って、苦い思いをしたという話を思い出した。

 

タイの焼肉店
アロイは「おいしい」という意味。

 

知人のタイ人の女性はバンコク出身で、数年前まで日本の大学に留学していた。
彼女はタイ人と中国人のハーフだったから、一般的なタイ人に比べると肌の色が白く、見た目は日本人とよく似ている。
彼女はいつもニコニコしていて、日本人の友人のあいだで「愛されキャラ」としての地位を確立していた。
そんな彼女が日本語能力試験を受けたところ、みごとに合格し、仲間内でそれを発表すると、その場で「お祝い会」が開催されることが決定した。店は当日までのシークレット。

「どんなお店に行くんだろう」とワクワクしていた彼女は、当日、焼き肉の食べ放題のお店へ連れていかれた。
日本の学生がお祝いの席でちょっと高めの焼き肉店へ行くことは聞いていたけれど、彼女はじつは牛肉を食べることができなかった。
中国系の家族が牛肉を食べないから、彼女もそれが習慣になったのだ。

タイ人が牛肉を、イスラム教徒が豚肉を食べない理由

それでも鶏肉や野菜はあったし、飲み放題でスイーツもわりと充実している。それより何より、「お祝いをしたい」というみんなのハートがうれしかったから、彼女は何も言わずみんなといっしょに店に入った。
4〜5人で席に座ってカンパイをした後、男衆が肉を焼きはじめ、良い具合になったところで「さあ、どうぞ」とタイ人の器に入れようとする。
そこで彼女は牛肉を食べられないことを話し、それでもこの店には食べられるものがあって、みんなの気持ちだけで十分ですと笑顔で言うと、

友「それは知らなかった。ごめんね」
タイ人「いいえ、せっかく予約してくれた店だし」
友「そんなことは気にしないでよかったのに…」

と、やや気まずい空気になってしまった。
日本人の友だちはイスラム教やヒンドゥー教のタブーは知っていた。でも、牛肉を食べられないタイ人が多いことは知らず、おもてなしの重要なところで失敗したことに責任を感じている。タイ人はそう感じ取り、気持ちが重くなった。

 

タイ人は、とくに女性はわりと周囲の空気を読んで、自分の言動をひかえる傾向がある。これは彼女が言っていたことで、ボクも欧米人との付き合いから、この指摘は正しいと思う。
それとタイでは、「社会的な身分」や「男尊女卑」の風潮がわりと強くあって、それはタイの言葉にも表れている。
タイ語で「ありがとう」を「コップン・カー」と言うけれど、それは女性の言葉で、男性なら「コップン・クラップ」になる。
だから、日本人の男性がそのタイ人に向かって「コップンカー」と言って、ワイ(合掌)のポーズをとって軽く頭を下げると、そのデタラメっぷりが彼女にはコミカルに見える。

 

今回のケースでは、このタイ人が牛肉を食べられなかったことと、彼女も日本人の友だちも自分より相手を優先したい気持ちが強かったことから、お互いの思いがすれ違ってすこし残念な結果となってしまった。
これが欧米人やインド人みたいに自己主張の強い外国人だったら、日本人がそれに合わせるのは問題ないだろうから、きっと万事うまくいっていた。

 

 

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2 件のコメント

  • > タイ語で「ありがとう」を「コップン・カー」と言うけれど、それは女性の言葉で、男性なら「コップン・クラップ」になる。

    タイ人など観音様信仰の仏教徒で牛肉を食べない人がいるのは知っていました。
    だけど、タイ語がそこまで男女で言葉の差があることは知りませんでした。
    たとえば日本語でも男性語と女性語では明らかに表現が違います。日本語を学習し始めたばかりの女性のしゃべり方が乱暴で男みたいな言い回しだとか。概して、日本語は、世界で最も大きく男女の言葉使いが異なっている言語の一つであると言われています。
    もしかするとタイ語もそのレベルに近いのかな?
    それはきっと、日本と同じく、ヨーロッパの植民地とならずに伝統文化を維持してきた結果の一つなのでしょうね。観音様信仰もその一つでしょう。

  • 台の場合は、女性は僧侶に触ることができないといった仏教的な理由も関係していると思いますよ。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。