きょう10月2日は「スンドゥブの日」。
ドゥブは韓国語で「豆腐」のことで、スンの語源には 「純粋な」という説と「水」という説があり、はっきり分かっていない。(순두부)
でも、漢字では「純豆腐」と表記される。
スンドゥブとは柔らかい豆腐のことで、韓国人でこの食べ物を知らない人はいないが、韓国人のきっと99.9%のは「スンドゥブの日」を知らない。
なぜなら、この記念日は、スンドゥブチゲ用スープを販売している日本の会社が「とう(10)・ふ(2)」の語呂合わせにちなんで作った日だから。
これから寒くなっていくので、温かいスンドゥブチゲを食べて元気になってもらいたいという願いもあるらしい。
理由はどうあれ、日本人が勝手に制定した日だから、韓国人が知るわけがない。
スンドゥブは豆腐そのものより、それを使った鍋料理の「スンドゥブチゲ」を指すことが多いので(少なくとも日本では)、ここでは「スンドゥブ」を鍋料理の意味で使う。
日本でスンドゥブは一時的なブームではなく、現在では代表的な韓国料理として社会に定着していて、近所のスーパーでもよく見かける。
さて、日本で有名な韓国料理には「チヂミ」があるのだけど、これは日本語ということをご存じだろうか?
個人的には友人の韓国人と話をしていたとき、「チヂミは日本語です。韓国語ではジョンと言います」と聞いて、目から眼球ではなくてウロコが落ちた気がした。
チヂミは韓国の方言が日本語化した言葉で、在日韓国・朝鮮の人たちが使っていたことが始まりらしい。
スンドゥブの歴史を調べると、1960年ごろに韓国で誕生した料理で、1990年代にアメリカに伝わって人気を集め、その後、日本に紹介されて広がっていった…。と、そんな説明をするサイトもあるが、スンドゥブの生誕地はきっとアメリカだ。
まず、スンドゥブの起源については、朝鮮時代(14〜19世紀)に「原型」となるものが作られたという記録があるらしい。(순두부찌개)
これが具体的などんなものかわからないが、まず間違いなく現代のスンドゥブとは違う。
世界中の人たちが見てチェックしている英語版ウィキペディアを見ると、「Sundubu-jjigae」の項目があり、その歴史についてこんな説明がされている。
「Following the Korean War, some American military servicemen who returned from South Korea brought home jjigae (especially dubu jjigae) recipes.」
朝鮮戦争(1950〜53年)が終わって、韓国から帰国したアメリカの軍人の中に、チゲ(特にスンドゥブチゲ)のレシピを持ち帰った人がいた。
そして1986年に、ロサンゼルスのコリアタウンにアメリカで最初のスンドゥブチゲ専門店「ビバリー・スン・トーフ」がオープンした。
その後、ソウル出身の女性、Hee Sook Leeがアメリカへ渡り、コリアタウンでスンドゥブのレストラン「BCD Tofu」を開店すると、それが成功し、全国チェーンに拡大したことでスンドゥブがアメリカで広く知られるようになる。
アメリカ版のスンドゥブはとても人気になったため、逆に韓国へ紹介されるようになったという。
「The North American version of the dish was eventually introduced back to South Korea due to its popularity.」
日本語版ウィキペディアの「スンドゥブ」にも、彼女のスンドゥブ専門店がアメリカで人気を集めた後、「韓国に逆輸入されるに至る」と書いてある。そして母国で、純国産のスンドゥブとの競争が始まったという。
*ここにオリジナルのスンドゥブも調べてみたけれど、どんなものかは分からなかった。
韓国料理を紹介する韓国語のサイトにも、はっきりした起源は不明だとして、アメリカ発祥説に触れているものもある。(순두부찌개, 역사, 주재료, 선택 방법)
これに対して、スンドゥブは1960年ごろに韓国で誕生し、1990年代にアメリカに伝わったという説は記述があいまいで、ボクが調べたかぎりでは根拠がわからなかった。
スンドゥブについて「韓国生まれのアメリカ育ち」と説明しているサイトもあるが、これはアメリカ兵が持ち帰ったスンドゥブのことだろう。それに変化が加わって、「The North American version」が生まれた。
スンドゥブはアメリカから日本に伝わったというから、現在の日本で一般的にあるのは、アメリカで開発されたスンドゥブと思われる。
もちろん、スンドゥブの起源は韓国にあり、韓国人の女性がアメリカに広めたことは間違いない。
おまけ
今回の記事で、朝鮮戦争の帰還兵がスンドゥブをアメリカへ伝えたことを紹介した。
これは日本におけるギョーザの歴史と似ている。
戦前・戦中、満州(中国東北部)で日本人の兵士や開拓団が現地でギョーザの作り方を知り、戦後、故郷に戻ってからそれを再現して作ったことが、現在のギョーザの始まりとなった。
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