伊勢神宮には20年に一度、すべての建物を建て直す式年遷宮がある。
それは知っていたけど、カトリック教会では25年に一度の「聖年」があって、それが来年にあたるということを最近初めて知った。
この「聖年」の年には聖地への巡礼が特に奨励され、それが今年のクリスマス・イブから始まる。12月24日になると、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂にある「聖なる扉」が開かれ、聖年の開始が告げられ、1年後に聖年が終わると同時に扉も閉められる。
もうすぐ、カトリック教会にとってスペシャルな年が始まるということで、バチカンのローマ教皇庁が「聖年」を象徴する公式マスコット「ルーチェ」を公開した。ルーチェとはラテン語で「光」という意味。
ボニファティウス8世が教皇だった1300年から始まった聖年で、バチカンがそれを象徴するマスコットを作ったのは今回が初めて。
そのルーチェは日本の「カワイイ文化」を取り入れた、アニメ的なキャラデザインだったことで、世界的な注目を集めた。
朝鮮日報の記事(2024/11/04)
バチカン、公式マスコットに日本のアニメキャラ風デザインを採用
ルーチェは巡礼路を歩く少女をイメージしていて、黄色いカッパを着て右手でつえを持ち、泥のついた長靴を履いている。
*黄色はバチカンの旗を表している。
全体的に丸っこくて顔と目が大きく描かれ、笑顔で「やあ!」と手を挙げているのは、日本のアニメ的な「かわいいキャラ」を連想させる。
しかし、ルーチェをデザインしたのは日本人ではなく、イタリアのブランド「tokidoki(トキドキ)」を作ったデザイナーのシモーネ・レーニョ氏だ。
シモーネ氏が日本のポップカルチャーに強く影響を受けていることは、ブランド名が日本語の「時々」に由来していることからもわかる。
彼が日本のアニメにインスピレーションを得て、ルーチェを考案した。
では、カトリック教会の聖年を象徴する公式マスコットを見てもらおう。
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海外ではルーチェを見て、『ワンダーエッグ・プライオリティ』の大戸アイや『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイのデザインと比較する人もいた。
レグノさんはこの投稿の中で、
「自分のささやかな芸術的貢献、ポップカルチャー、カワイイ文化を聖座に持ち込むことになるなんて想像もしていなかった」
「これは素晴らしい経験であり、私の残りの人生にもたらす喜びの光である」
と喜びを語っている。
「聖座(the Holy See)」はカトリックの用語で、ローマ教皇とローマ教皇庁を合わせた概念を指す。
ハッシュタグにある「kawaii aesthetic」というのは、「カワイイの美的感覚」といった意味だろう。
バチカンの公式マスコット「ルーチェ」が日本のアニメ風の少女になったことには、以下のような理由がある。
・世界中の若者にアピールし、「聖年」に関心を持ってもらうため。
・いままでの厳格でお固い印象を感じさせない、まったく新しいデザインにしたかったため。(だから、ルーチェがカトリックを代表することには批判の声も上がっている。)
・このところカトリック教会は、過去に聖職者が児童へ性的虐待を行っていたことが発覚し、信頼と権威を失ったていた。それでルーチェを全面に押し出して、そんなダークなイメージを打ち消そうとした。
しかし、それだけではなく、ルーチェがこの姿になった理由には深い意味があった。
ヒトの姿を模した像を作り、それを神として崇(あが)める行為は「偶像崇拝」といって、イスラム教やキリスト教では厳禁されている。
「いや、カトリックの信者が聖母マリアの像とかに祈ってるじゃん」と思う人もいるかもしれないが、あれは像を崇拝しているわけではない。詳しい説明は「崇敬」を見てくれ。
カトリックの関係者のあいだで、マスコットを制作することが偶像崇拝にあたり、反キリスト的になってしまうのでは? という懸念があった。
しかし、マスコットが愛らしく、とても小さなアニメのキャラクターであることを考えると、この主張はほとんど根拠を失ったという。
This claim is mostly unfounded, considering the mascot is just an adorable, and notably small and petit anime character.
日本のアニメ風のキャラクターデザインにすることで、カトリック教会の厳格で保守的なイメージを崩した。さらに、人間のリアルさをなくしたことで、偶像崇拝の懸念を打ち消すことができた。日本の「カワイイ文化」の有能さと破壊力のすさまじさよ。
「マスコットの発表で影が薄かったが、万博でのバチカンの公式ロゴも発表されました。日本の水墨画の伝統からインスピレーションを得ています」#大阪・関西万博 #EXPO2025 https://t.co/wN8s610YqN
— 「大阪・関西万博応援マガジン EXPOST」 (@EXPOST2025) November 1, 2024
日本の水墨画の要素を取り入れたこのバチカンの公式ロゴは、「キリスト教のシンボルと日本文化の融合」とされている。
「美人」と評価する感覚は国によって違いますが、「カワイイ」という感覚はどこの国でも共通して受け止められているのでしょうか。そんな日本語が、今やバチカンのマスコットにまで採用されるようになったとは。日本発のマンガ・アニメ文化の影響力もすごいですね。
ちょっと調べてみたのですが、luceという語形はイタリア語であり、ラテン語ではlux(単数形)またはluces(複数形)のようで、意味はいずれも英語のlightだそうです。なお、lux(ルクス)は場所の明るさの単位としても使われています。
私なんか、「ルーチェ」と聞くと、昔マツダから発売されていた自動車を思い出してしまいます。(歳がバレるな。)
>日本発のマンガ・アニメ文化の影響力もすごいですね。
本当にそうですね。「萌え」は世界に通用します。