日本がインド人を求める理由・給料が安くても日本を選ぶわけ

 

日本にはIT革命を「イット革命」と呼んだ首相もいて、世界的に見て、この分野で進んでいるかどうかよくわからない。しかし、今の日本でIT人材が少ないことは間違いなく、2030年には50万人以上も不足すると言われている。
この状態を放置すれば、関連企業を含めて日本経済に大きなダメージを与え、国際社会における日本の影響力の低下を招くおそれがある。それで注目が集まっているのが、英語ができて高度な知識のあるインド人だ。

時事通信社(11/17)

インド人材確保、日本の官民が一丸 地方が熱視線、「5年で5万人」目標も

思えば、日本へ初めてやってきたインド人も「高度人材」だ。
奈良時代の日本へやってきて、大仏の開眼式を行ったインド人僧の菩提僊那(ぼだいせんな)は、現在でも聖武天皇や行基と並ぶ「東大寺の四聖」として尊敬されている。
中国の長安にいた遣唐使が菩提僊那を口説き落とし、連れてきたときも、日本は国を挙げて彼を迎え入れた。

日本にいるインド人さん歓喜 奈良の大仏と菩提僊那の話

 

現代の日本に目を向けると、北海道大の総長は「多くの日本の大学は最も優秀で賢い学生や研究者を招きたいと強く望んでいる」と話し、新潟の大学に勤務している教授は、地元企業がインド出身の人材を求めていると語っている。
日本の大学を卒業した後、日本企業に就職するインド人留学生はいるが、彼らは東京などの大都市を選ぶことがほとんど。だから、インターンのための航空券や宿泊費の負担を申し出る新潟の企業もあるという。

 

首都デリー

 

IT業界だけでなく、労働力不足に悩む日本の製造業でもインド人材に期待が集まっている。だから、いま日本は官民を挙げて呼び込みに力を入れているのだ。
愛知県では最近、日本で初めてインド人の技能実習生を製造業などへ送り出す機関ができた。市町村や企業からの問い合わせは多く、機関の規模は拡大を続けているという。副社長は「受け入れ側のリピート率は9割と高い」と鼻息を荒くする。

日本全体としては、IT技術者を中心に今後5年間で5万人以上のインド人材を希望していて、今年8月にインドを訪問した額賀衆院議長がモディ首相に会った際にもその話をした。
いま実現を模索している日印首脳会談でも、この人材交流が議題となる見通しだとか。

ただ、不安要素はお金。
日本国内には、「日本は給料が低すぎて就労先の第1候補に選んでもらえない」という声も上がっている。
このニュースにネット民の感想は?

・もう少し日本人にも目を向けてあげてください…
・斜陽の国からこんばんわ
・九州は農家の人材確保セミナーで
インド人を優先すると決めたな
・アメリカのビッグテックのCEOはインド人ばっかり
そんな優秀な人は日本に来ないだろうけど
・アメリカと比較して平均給与が1/3以下の日本に、英語喋れるエリート層が来ると思うか?

 

グーグルやマイクロソフトのCEOなど、世界的企業で活躍するインド人は本当にたくさんいる。日本でも、ソフトバンクの元副社長がインド人だったし、「柿の種」や「ぽたぽた焼」といった米菓子を製造・販売している亀田製菓のトップもインド人だ。

【日印合作】インド人に“柿の種”が人気で、カリカリ爆誕

 

インド版「柿の種」のカリカリ

 

ネットのコメントを見ても、本当に優秀なインド人は日本をスルーして、欧米に目を向けると考えている人は多い。
給料については、少し前に「世界との壁」を実感した。
知人のメキシコ人の留学生がスーパーで時給1000円ほどでバイトをしていたけれど、ネットで見つけたアメリカ企業のエンジニアに採用されると、バイトの時給は6000円を超えた。高度な英語力と専門知識に対して、欧米の企業がこれぐらいのカネを払うことは珍しくないと思う。(逆に言えば、日本はこういう人材を活かせていない。)
円安の影響があるとはいえ、先進国を基準にすれば今の日本の給料は明らかに安い。にもかかわらず、日本で働くことを選ぶインド人もいる。

知り合いのインド人女性もその一人。
彼女は今年9月に日本の大学を卒業した後、欧米の会社に就職することも考えたが、結局日本に残ることを決めた。
日本の給料は安いのに、なんでその選択をしたのか? それを聞くと、彼女は「いえいえ、生涯を通じた収入は実は日本企業のほうが高いんですよ」と意外なことを言うことはなく、やっぱり給料だけを考えたら、日本は選択肢から消えますねと言う。
しかし、彼女にとっては人種差別がなく、治安が良いことが日本の大きな魅力で、それが決定打となった。

もちろん地球上に人種差別がまったくない国はない。国によって差別の種類というか、現れ方が違う。
そのインド人女性にはアメリカやヨーロッパに親族や友人がいるから、そこから情報を集めて日本と欧米の良さと短所を把握した。
まず、給料の高さと休みの取りやすさでは、欧米企業のほうが恵まれている。が、欧米ではインドなど有色人種への直接的な差別行為がある。たとえば、彼女の知人は街中のカフェでコーヒーを飲んでいると、客に「国へ帰れ!」と言われたし、歩いているだけでヘイトのターゲットとなって暴行を受けたインド人もいた。
彼女は大学生活を中心にアルバイトや旅行をしながら、日本に3年ほど住んでいたけれど、そんな差別行為を受けたことは一度もなく、社会的に人種への憎悪を感じたこともない。だから、その点では不安なく過ごすことができた。

そして、一人暮らしをする女性にとって、日本の治安の良さは本当に魅力的だ。
20代後半の別のインド人女性から、日本に住むようになって初めて夜一人で買い物に出かけたという話を聞いたことがある。そのインド人が住んでいた地域でそんなことをしたら、無事に帰って来られるか分からないから、日が落ちてから出歩くことはなかったという。
この辺の事情は場所によって違っていて、大都市のムンバイでは人通りが多いところなら、夜9時ごろに女性が一人で歩いても大丈夫らしいです。

日本の企業で働いているインド人女性は治安の良さに加えて、同じアジアの国で、仏教などにインド文化を感じて親しみを感じるから、日本は好きだと話していた。
今のところ、日本が給料で欧米企業に勝てる気がしない。でも、日本にはそれを上回る良さや魅力がある。高度なインド人材を確保したいなら、日本はその点を全力でアピールするべき。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。