英国人女性の日本体験 好きな都市・ヴィーガン生活・国民性

 

友人の40代のイギリス人女性は千葉と静岡県に住んでいて、数年前に帰国して今は母国で主婦をしている。
日本での生活は、小さな不満はいろいろあっても、全体的には快適だったらしい。プチ不満というのは、たとえば学校で英語を教えていた時、日本人の先生から「Can は“カン”ではなくて、“キャン”と発音してください」と言われ、「イギリス人の自分が、なんでアメリカ英語の発音をしなきゃならんねん!」と少し悲しくなった程度のもの。
今回は、そんな彼女と話した内容を紹介しよう。

 

ーー日本の都市や都道府県ではどこが良かった? 

旅行したところで印象に残っているのは、広島と鹿児島県。
海に大きな鳥居が立っている宮島はとても日本的だったし、原爆資料館では深く考えさせられた。鹿児島では自然がすごくきれいで開放感があったし、食事も私に合ってとても美味しかった。
住むところで言えば、東京は刺激的で飽きることがないから、お金を気にしなくていいのなら、東京の中心に住んでみたい。
でも、それは20代の話。
今みたいに40代になったら、もっと静かで落ち着いたところが良い。鎌倉に行った時、人が少なくて落ち着いた雰囲気を感じたから、住むのなら、東京よりも鎌倉のほうが魅力的ね。

ーーそれは、まだ『スラムダンク』の聖地になる前の鎌倉かな。

 

ーーところで、鹿児島で有名なものに黒豚がある。
昔の鹿児島には、仏教の考え方から牛や馬を食べる習慣はなかったけど、豚は「歩く野菜」と呼ばれて対象外になっていた。
もともと豚肉を食べる文化があって、明治時代にイギリスのバークシャー(豚の品種)と掛け合わせることで、さらにおいしくなって現在の黒豚ができた。
鹿児島くろぶたとは
個人的にあれは薩英同盟のシンボルで、イギリス人には食べてほしいと思うのだけど、鹿児島で黒豚は味わった?

食べなかった。だって、私はヴィーガンだから。

ーーあっ、そうだった…。(あれを「歩く野菜」と考えたらどうだろう?)
イギリスにはヴィーガンの人がたくさんいて、レストランでは必ずヴィーガンのメニューがあると聞いた。日本は肉食大国だから、ヴィーガンだと生活は大変だった?

スーパーでヴィーガン用の食材のコーナーがなかったから、どれが大丈夫かどうかを知るまでは少し大変だったけど、慣れたら問題ない。日本では、ヴィーガン用の食材やメニューは割高だから、食費にややお金がかかることが気になったぐらい。
旅行先ではよくインドカレーの店でヴィーガンメニューを食べたから、日本のインドカレーに詳しくなってしまった。

ーーその発想はなかった。日本のカレーはインドじゃなくて、イギリス人が伝えたものだから、日英同盟も悪くないか。
でも、イギリスはヴィーガンにフレンドリーな国だから、日本より生活しやすくなった?

その点ではね。
でも、前にSNSで、あるヴィーガンが隣の家の人に「においがくるから、庭でバーベキューをしないでほしい!」って文句を言ったという投稿を見た。気持ちはわかるけど、隣の家族の楽しみまで禁止するのはダメでしょ。
自分中心で配慮に欠ける人がいると、ヴィーガンに対するイメージが悪くなる。イギリスには、そういう“わがままヴィーガン”がけっこういて、それは問題だと思う。

ーーたしかに。「無能な働き者」はある意味、ラスボスよりもやっかいだ。
イギリスには王に対して「権利の請願」を出した歴史があって、昔から国民の権利を守ることが重視されている。そんな伝統があるから、権利と権利が正面衝突しやすいかもしれない。

対象的な関係:英国の国王と議会・日本の天皇と幕府

イギリスでは、学校の先生や地下鉄の職員が労働条件の改善を求めてストライキをする。でも日本人なら、自分の権利のために、子どもや乗客にそんな不便な思いをさせることはしない。
個人的には人それぞれだけど、国民性として日本人には我慢強さ、イギリス人には自己主張の強さがあると思う。

日本に住んでいて、私もそれは感じた。
学校で働いていた時、納得できない仕事は断っていたから、きっと私は一部の先生には嫌われた。まぁ、別にいいけど。

――イギリス人にとっては当然のことだろうけど、日本人にはそういう「NOと言う勇気」や「嫌われる覚悟」が必要だと思う。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。