「世界最悪」から一転、インド人が日本の冬空で感動したわけ

 

日本で寒さがホンキを出し始めるころ、1月19日の記念日は「いい空気の日」だ。
夏の空気には水蒸気がたくさん含まれているから、霧が発生しているように景色がぼんやりと見え、さらに水蒸気がほこりと結びつくことで、視界はさらにかすんでしまう。
冬は乾燥しているため、こうしたことはなく、空気が澄んでいて景色はハッキリくっきりと見える。
そんな冬に、日本に住んでいるインド人の女性がSNSにこんな投稿をした。

 

 

20年ほど前、年末年始にインドを旅行した時、首都デリーの空港に着いて外に出てみると、世界がスモッグに包まれていてビックリしたことがある。視界は 10メートルほどだった記憶があり、少し離れた場所はかすんで見えないし、ライトは数倍に膨れ上がっていた。
タクシードライバーの話では、この時期は霧の中を運転するようなもので、かなり危険だという。実際に事故が多発するらしい。
あまりに視界が悪いと飛行機が着陸できず、数百キロ離れた別の空港に降りることもあるという。そうなっても何の保証もなく、デリーで予約していたホテル代などはきっと泣き寝入りだ。

 

濃霧の中、空港からデリー市内へ向かっている(トップ画像も)。

 

インドの大気汚染は本当にすさまじい。
2019年に世界で最も空気が汚染されている 30の都市が選ばれ、そのうち 21都市がインドの都市だった。
2016年の調査によると、インドでは少なくとも1億 4000万人以上が、世界保健機関(WHO)の定める安全限度の 10倍以上の汚染された空気を吸っていることがわかった。
大気汚染が原因で、毎年 200万人のインド人が早死にしているとの指摘もあり、非喫煙者を対象に 2013年に行った研究では、インド人の肺機能がヨーロッパ人より 30%弱いことが判明している。 (Air pollution in India

2ヶ月前、米CNNはニューデリーについて、大気汚染のレベルが世界最悪で、呼吸することさえ困難な状態にあると伝えた(November 21, 2024)

‘It’s impossible to breathe’: Life in the world’s most polluted city

 

日常的な要因としては車の排ガスなどがあり、毎年 10月ごろに気温が低くなると、農民が野焼きをしたり、市民がヒンドゥー教の祭りで花火を上げたりすることで、特にデリーのある北部で深刻な大気汚染が発生する。
下の写真は冬に北インドで撮影したもので、スモッグのせいで後ろの建物が蜃気楼のように見え、ほとんど視認できない。

 

 

インドの大気汚染は誇張ではなく、「死の危険」がある。
知り合いのインド人夫婦が日本に住んでいて、子どもが生まれた後、会社の指示で母国に戻ることになった。その際、夫婦が最も心配していたのもこの問題だった。
自分たちはいいとしても、まだ体力のない子どもが毎日あの空気を吸うことは、親として本当に気がかりだった。日本の新鮮な空気を思うと、本気で帰国命令を拒否したい気持ちにもなった。
冒頭のインド人は、1月にあんなにきれいな青空を見たのは人生で初めてで、太陽どころか月まで見えたことに感動し、SNSに投稿したという。

ということで、日本の空のキレイさは世界に誇ることができるのだ…というよりは、インドの空が「世界最悪」と呼ばれていることを考えたら、そりゃそうなるわ。
インド人にとっての「僕が見たかった青空」というのは、きっと日本の澄みきった青空のことだ。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。