ネット上では、「否定から入る人」がよく出没する。 最近、海外旅行の感想やおすすめ情報をシェアする SNSグループで、ある日本人がこんな投稿をした。
「タイは想像以上に発展していました! 道には大型 SUVがたくさん走っていて、都市には高層マンション、地方には高級リゾートがあって、ショッピングモールはどこも活気にあふれていました。タイのイメージが一変して、豊かな国だと思いました。」
すると、すぐに「否定厨」が登場。「表面的にはそう見えるけど、本当はそうじゃない。わたしはタイに 15年以上住んでいるからよくわかるけど、タイは全体的にはまだまだ貧しい」といったコメントがつけられた。
ネッチ上では、現地在住の日本人が旅行者を否定したり、批判したりすることで優越感を感じる現象をたまに見かける。彼らはプライドが高く、逆に否定されると怒り出すからめんどくさい。
投稿者は「そうなんですね。深いところまでは知りませんでした」と謙虚な態度を見せたから、この在住者は満足したはず。
それが「まずは否定」のループにつながるんだろうけど。
正確に言うと、タイは豊かな国でも貧しい国でもなく、その差が超激しい国だ。
2018年にスイスの金融機関クレディ・スイスが発表した統計によると、タイでは上位1%の人々が国全体の約 67%の富を持っていることがわかり、「世界一不平等な国」と言われた。2016年まで相続税がなかったこともあり、それほど貧富の格差が拡大したという。
その後、タイの社会構造が激変したという話は聞かないから、2025年の現在でも、「世界一」ではないとしても、トップクラスの格差があることは間違いない。
現地日本人の「本当はそうじゃない」という上から目線の言い方には共感できないが、タイは豊かな面と貧しい面のギャップが大きいから、一部を見て全体を判断することはできない。
個人的にも、そんなタイの“実態”を知った出来事がある。
首都バンコクの景色
10年ほど前、浜松の日本語学校に通っていた 20代のタイ人男性と知り合った。彼は家賃3万円台のアパートに住んでいて、学校まで自転車で通っていた。日本の感想を聞くと、「物価が高くて困ります」と言う。
タイに旅行すると、一泊 500円ほどの宿に泊まっていたから、日本との経済格差は知っていた。日本の物価高に驚く気持ちはわかるから、彼と食事や遊びに出かけたときは、こちらがおごったり、多めに払ったりしていた。
でも、彼からは、あまり感謝の気持ちが感じられない。国によっては「お金を持っている人がおごるのが当然」という文化もあるから、タイもそうなのかなと思っていた。 しかし、彼の家族が日本に来たとき、その考えが大きく変わった。
しかし、彼の家族が日本に来たとき、そのワケがわかった。
彼が SNSにアップした写真を見ると、両親や姉の満面の笑顔とともに、一泊数万円の高級ホテルや神戸牛のステーキなどが写っていて驚いた。後で旅行の話を聞くと、東京から九州まで新幹線で移動し、由布院で有名な温泉旅館に泊まり、鹿児島で砂風呂を体験したことを楽しそうに話していた。
ボクが知っていた彼は、日本にいるとき限定の「苦学生バージョン」で、実際にはタイの金持ち家族の一員で、彼らはボク以上にお金を豪快に使える立場にあったのだ。この時は、タイが「世界一不平等な国」なんてことは知らなかった。感謝の気持ちが薄かったのは、彼の感覚では、おごってもらうのが当然で、その額も大したことなかったからだろう。
タイ社会にある二面性に“だまされた”経験があったから、「表面的にはそう見えるけど、本当はそうじゃない」という在住者のコメントには共感できた。
彼が帰国するとき、「いろいろお世話になりました。タイに来たら連絡してください」と言われたから、今はその日をとても楽しみにしている。
マナー違反の感覚:タイ人には問題でも、日本人にはマイペンライ
コメントを残す