【テトを食べる】ベトナム正月の目的や中身、日本との違い

 

毎年、1月下旬から2月上旬になると、東アジアで日本は「孤児」、かっこよく言えば「孤高」の存在になる。中国、韓国、ベトナムでは、太陰暦に基づいて正月を祝っているから、日本の正月とは時期が違う。今年は1月29日から、彼らの正月が始まった。
その少し前に、日本に住む20代のベトナム人女性から話を聞いたので、今回はその内容をお伝えしよう。

 

日本にとっては「旧正月」で、海外では「チャイニーズ・ニューイヤー」や「ルナー・ニューイヤー」って呼ばれてる。でも、後者の呼び方には、中国の人が「“中国”を抜かすな!」と怒って、前者だと韓国やベトナムの人が「“中国”を入れるな!」と文句を言うことがある。これについてどう思う?

正月なのに、アンハッピーな気分になる話題をありがとうございます。
ベトナム正月は伝統行事ですから、「チャイニーズ」って呼ばれるのは嫌ですね。韓国も独自のやり方で祝っていると思いますから、「ルナーニューイヤー」って呼ぶべきです。
それに、そもそもベトナム人は中国が嫌いなんですよ。

ーーどストレートな言い方だね。バッターを棒立ちにさせるような。確かに、ベトナムと中国の間には領土問題があったっけ。(中越関係

それだけじゃないです。ベトナムには紀元前から10世紀まで、千年も中国に支配された歴史があるから、文化的に一緒にされるのがイヤなんですよ。

ーー韓国もそんな感じだ。「チャイニーズ」じゃなくて、「 ルナーニューイヤー」が適切だと考えていて、韓国文化の起源が中国にあるって話も嫌う。

でもベトナムは、経済的には中国と切っても切れない関係にあるから、上手に付き合っていかないといけないんです。

ーー韓国もまさにそんな感じだ。

 

 

ーー日本の正月で大切なことは、その年の幸せや健康を運んでくれる年神さまをお迎えすることで、そのためにしめ飾りや鏡餅を用意する。ベトナムの正月ではどんなことが大切?

ベトナムの正月は「テト」と言います。日本の初詣みたいにお寺でお参りをしたり、子どもにお年玉をあげたりする習慣もあります。でも、テトで一番大切なのは、家族や親戚が集まって一緒に食事をしたり、ゲームをしたりして絆を深めることです。それは生きている人だけではありません。

ーー生きている人だけじゃないというと、SHISHAMOじゃなくて、「死者も」ってこと?

はい、テトになると、亡くなったご先祖さまも戻ってきます。だから、お墓を掃除してお参りします。そして、家ではいろんな食べ物をお供えして、先祖の霊を迎え、テトの期間を一緒に過ごすんです。だから、生きている人と亡くなった人を含めて、一族のつながりを強くすることが目的ですね。

ーー日本の正月では年神さまを迎えるけど、テトでは先祖の霊を迎えるということか。

そうですね。だから、テトは日本のお盆に近いです。 あと、川や湖に金魚を流すこともありますよ。

ーーそれは仏教の「放生」だな。生き物を解放することで、功徳を得ることができるという考え方。日本でもその習慣はあるけど、正月にやるという話は聞かない。

 

ベトナムの正月については、日本語版のウィキペディア「テト」には情報が少ないから、英語版の「Tết」を日本語訳して読むと理解が深まる。それを見ると、

「正月の習慣は中国の統治時代、中国人によってベトナムにもたらされたと考えられている。」(The Lunar Year holiday was originally believed to be brought to Vietnam by the Chinese)

と、ベトナム人にとって無慈悲な説明がある。
でも、ベトナム政府はその見解を否定し、テトの起源はベトナムにあるとしている。中国が支配する前から、ベトナム人はテトを祝っていたという言い伝えがあるらしい。きっと多くのベトナム人もこの説を支持しているから、「中国起源」と言わない方がいい。
知人から聞いたこと以外では、テトの期間中、地域によって違いはあるけれど、一般的にこんなことが行われている。

 

・正月のお祝いでは、食べ物がとても大切な役割を果たしている。そのことは、ベトナム語で「テトを祝う」を「テトを食べる(「ăn tết」)」と言うことからも分かる。
・縁起が良いから、テトの期間中に店をオープンする。
・親族だけでなく、友達やご近所さんの家も訪問する。
・正月の最初の3日間は、家の中で平和や調和を保つことが大切。争いや口論など、怒りや憎しみの感情を表すと、不運をもたらす可能性がある。
・ベトナムでは、最初の訪問者によって、その家族の一年の運勢が決まると信じられている。そのため、招待された人以外は初日に家に入らない。社会的に成功している人が幸運のシンボルとされ、最初に家に招かれることが多い。
・新年になると、街中で爆竹や太鼓、ドラなどの大きな音で悪霊を追い払う。だから、通りがすごくにぎやかになる。ライオンダンス(獅子舞)も悪霊を追い払い、幸運をもたらすために行われる。
・掃除は新年の前に済ませて、正月中に掃除をしないようにする。それは運を「掃き捨てる」ことを意味するから。
・最近、家族を亡くした人が正月に誰かの家を訪ねるのは、縁起が悪いからタブーとされている。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。