すでに日本も巻き込まれている、中国と台湾の対立

 

5年くらい前、知り合いの台湾人から、友人2人を連れて日本に旅行に行くという連絡があって、静岡にも足を伸ばすというから、沼津で3人を車に乗せて伊豆半島を案内することにした。そのとき、ちょっと背筋が寒くなるような話を聞いた。

彼女たちは伊豆の旅館に泊まり、温泉を楽しんだあと、共有スペースで中国語で話していた。すると、知らない中国人の男性が近づいてきて、「やあ、君たちは中国人だね?」と声をかけてきた。それがきっかけで、彼と仲良くなって連絡先を交換する…というドラマみたいな展開になることはなく、彼女たちはすぐに話す言葉を中国語から台湾語に切り替えた。その中国人には台湾語がわからないから、きっと困った顔をしてその場に立っていたはずだ。彼女たちはそのまま台湾語で楽しく会話を続け、彼はその場を去った。

もしボクが海外で、明るく挨拶をしたのにガン無視されたら、トラウマになって二度と声をかけられなくなる自信がある。でも、3人に罪悪感は1ミリもない。彼女たちには台湾人としてのアイデンティや誇りがあるから、中国人と思われたことは許せなかった。
中国と台湾には深い政治的な対立がある。
中国は台湾を併合(中国側の立場ではおそらく「解放」)することを悲願とし、台湾はそれを全力で拒絶している。そんな政治的な対立は、普通の人々の間にも影響を与えているのだ。

 

まず、台湾の海域で海底ケーブルが切断されていることが確認され、台湾はこれを中国のしわざだと疑い、捜査を始めた。それに対し、中国側が「そんな証拠はない」と反発すると、台湾側はさらに反論し、お互いの言い分がぶつかり合っている。

さらに、今月20日には台湾で退役した元軍人が「中国のスパイ」として逮捕された。彼らは中国からお金を受け取り、台湾を攻撃する計画を立てていたという。
具体的には、中国から資金援助を受けて武装組織をつくり、中国軍が台湾に侵攻したら、政府要人を殺害したり軍事拠点を破壊したりする計画だった。
それが発覚し、彼らは国家安全法違反罪で起訴された。彼らは台湾の防衛を担当していた指揮官クラスの大物で、過去に摘発された中国のスパイの中では最高位の将校だ。
きょねん(2024年)、中国が関係するスパイ事件で 64人が起訴された。22年は 10人だったから、緊張がかなり高まっていることがわかる。
こうしたスパイには現役・退役の軍人が多い。

 

さて、話を最初の台湾女子に戻そう。
彼女たちは、中国が台湾をのみ込もうとすることを嫌っていたから、「中国人だね?」と声をかけられて、侮辱的に感じた。その気持ちは言葉にする必要がない。1人が台湾語に切り替えると、2人も瞬時にその意図を理解して、中国人の男性を「シャットアウト」した。
このへんの流れは、台湾人ならではの阿吽の呼吸。

想像したくないが、もし本当に中国軍が台湾に侵攻したら、日本が巻き込まれることは間違いない。というか、すでに巻き込まれている。今回、伊豆の温泉旅館で起きたようなレベルの中国・台湾の対立は、きっと全国各地で発生しているはずだ。「台湾有事」が現実になればそんなものでは済まず、深刻な経済的打撃を受け、34兆円が吹っ飛ぶという試算もある。
日本人としては中台の動きから目が離させない。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。