知人の台湾人が愛知県へ行った時、思わず二度見した食べ物を見つけたという。
それは日本で生まれた台湾ラーメン。
正確には名古屋発祥の料理だから、「名古屋めし」にカテゴリー分けされる。
ルーツは台湾の「担仔麺(タンツーめん)」にあるが、台湾に台湾ラーメンなんて麺料理はないから、台湾人が街なかで見かけたらスルーはできない。
しかし、立場が変わったらどうだろう?
海外のレストランで、日本には存在しない謎の日本料理があったとしたら。
日本人には海外のインチキ日本料理を嫌う人が多く、そんなヤカラを罰するテレビ番組もあった。
台湾人も「台湾ラーメン」なんてものを見たら、気分を悪くするのでは?
そう思って、愛知で台湾ラーメンを発見した台湾人に聞くと、
「そんなことはありませんよ。重要なことは、おいしいかどうです。『台湾』の名前を持つ料理がマズかったらムカつきますけど、台湾ラーメンはおいしかったから問題ありません」
と明るく言った。
日本で生活している彼にとっては、そんなこととは比較にならないほど、腹の立つことがあるという。
それは、中国人が経営しているのに、「台湾料理」の看板を出している店だ。
台湾人からすると、料理や味付けなんかで「これは台湾料理じゃなくて、中国料理じゃん」とすぐに分かるらしい。
「台湾ブランド」を利用して金儲けをしていることに、彼は怒り心頭だ。
その理由には、中国と台湾の政治的な問題がからんでいる。
中国政府は「台湾は中国の領土内にある」と主張し、中国本土と台湾は不可分の領土であるという「一つの中国」の原則を厳守し、他国にも守らせようとする。
*国連や日本、アメリカなどは「一つの中国」を受け入れている。
それに対し、台湾では「それは違う。台湾は中国の一部じゃない」と、独立まではいかないが、「中国とは別」と考える人が多い。
日本の某首相の言葉を借りるなら、「あなたとは違うんです」といった感じ。
こんな政治的な対立があるから、知人にとっては、「台湾料理」をアピールして中国料理を出す店が許せない。
日本人からしたら、「おいしくて安かったらそれでいい」という人がほとんどだとしても。
この「一つの中国」の原則から、台湾の選手はオリンピックで「TAIWAN」と名乗ることができない。それでいま行われているパリ五輪では、選手たちは「チャイニーズ・タイペイ」という微妙な扱いをされている。
開会式で選手たちが登場した時、プラカードには英語で「チャイニーズ・タイペイ」と書かれていたけれど、NHKのアナウンサーが「台湾です」と紹介したから、「ありがとう〜〜」と歓喜&感謝する台湾人もいた。
最近、日本在住の台湾人がSNSで、「すごく嫌なことがあった!」と怒りの投稿をしていた。
東京の代々木公園では毎年、台湾のグルメや観光、文化などを紹介する日本最大級の台湾イベン「台湾フェスタ」が開催されている。
しかし、今年は会場内で、中国国旗がデザインされた横断幕があったことがわかり、物議をかもす。
何がどうなってこうなったのかは不明だが、「台湾フェスタ」を後援していた台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)は「信頼を裏切った」と激おこで、25年と26年の「台湾フェスタ」には協力しないと発表。
どこぞの誰かが勝手にやったことで、主催者側は「聞いてないよ〜」という状態かもしれないが、台湾にとっては絶対に認められない。
これは「厳重注意」で済む問題ではない。
「台湾フェス」で名古屋めしの台湾ラーメンを販売するぐらいなら、問題はなかったのだけど。
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> 開会式で選手たちが登場した時、プラカードには英語で「チャイニーズ・タイペイ」と書かれていたけれど、NHKのアナウンサーが「台湾です」と紹介したから、「ありがとう〜〜」と歓喜&感謝する台湾人もいた。
歓喜&感謝する台湾人「も」いた、っていうのが非常に難しいところで。
少なくとも私が25年ほど前に台湾に滞在した時には、独立を主張する人もいれば、大陸中国による併合を望む人と、その両方がいました。後者は、特に台湾の南部で、企業経営に携わる人達で多かったように思います。理由は、中国からの「より巨額な資本投下」を望んでいるからでしょう。
ただし台湾全土で最も多数派だったのは、「これ以上の変化を望まない現状維持派」であったと感じました。それも変わりつつあるのでしょうか。
今でも最大多数は「現状維持」だと思いますよ。