ネットを見ていたら、あるメディアに日本を旅行で訪れたドイツ人女性の感想が載っていた。
日本では路上にゴミが落ちてなく、街がとてもきれいだし、日本人はきちんと列に並んで、後ろから押す人なんていない。そのドイツ人はそんなことに感動したり、ドイツとの違いを感じたりした。
訪日外国人がトップクラスに楽しみにしている日本のグルメについては、和牛のおいしさに開眼して、初めて食べた刺身も気に入ったという。この感想はやや意外。ドイツの食文化には魚を生で食べる習慣はなく、ご飯があるスシならまだOKでも、「生肉感」たっぷりの刺身はドイツ人にはハードルが高いと思ったのだけど。
さて最近、日本の大学に半年ほど留学していて、今は母国で働いている20代のドイツ人女性と話をしたので、今回は「ドイツ由来の日本の食」について書いていこう。
弟子が師匠にできる最高の恩返し。それは、師匠を上回る高い技術や能力を身につけることで、それを「出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ)」という。
日独の関係でいえば、ドイツ語で「木のケーキ(お菓子)」を意味するバウムクーヘンがそれになる。バウムクーヘンは第一次世界大戦時、捕虜として日本に連れてこられたドイツのお菓子職人ユーハイムによって伝えられ、19191年に、のちの原爆ドームとなる広島物産陳列館で初めて販売された。
ドイツ由来のバウムクーヘンは、今では日本でとても人気があって、コンビニやスーパーで気軽に買うことができる。でも、本場ドイツではレアなお菓子でなかなか手に入らないから、日本に来て初めてバウムクーヘンを食べたドイツ人もいる。たまにこんなことがあって、日本で初めてナンを食べたインド人もいる。
ーー日本でバウムクーヘンはもう「国民のお菓子」と言っていいほど定着しているけど、ドイツではあんまり馴染みがないと聞いた。あなたも日本で初めて食べた派?
いいえ、日本に来る前に、3〜4回食べたことがあります。私が住んでいたところから、車で1時間くらいのところに、バウムクーヘンの店があったから、そこに何度か行って食べました。私の場合はお店がわりと近くにあったから、バウムクーヘンを食べる機会があっただけで、20代のドイツ人で3回というのは多い方だと思いますよ。
ーー7、8年に1度というと、日本だと秘仏公開(開帳)のレベルだな。それで「多い」にカウントされるなら、ドイツ人にとってバウムクーヘンは本当に遠いところにある。
日本人はバウムクーヘンが好きで、ドイツよりたくさんあることはSNSで知っていたので、コンビニで見ても驚きませんでした。日本にいたときは半年で5回ぐらい食べました。
ーー日本に半年いてドイツを上回ったんだ。それはもう「出藍の誉れ」と言っていいんじゃないか。
*「ココ」をクリックすると、ドイツにあるバウムクーヘンの専門店の動画に飛ぶ。その店はちょっとした博物館にもなっていて、バウムクーヘンの歴史が紹介されている。このお菓子の起源は紀元前400年にさかのぼるらしい。
ーー日本に住んでいて印象的なことはあった?
それはいろいろあります。なかでも、ドイツの都市が料理の名前になっていることが衝撃的でしたね。
ーーわかった、ハンバーグ。
ドイツ第二の大都市ハンブルクは世界的に有名で、私も何度か行ったことがあります。でも、日本でそれが肉料理の名前になっているなんて、まったく想像できませんでした。
ーー「Hamburg」の英語読みがハンバーグで、ドイツ語で発音したら「ハンブルグ」。だから、言葉としてはまったく同じだけど、日本では逆に「ハンバーグ=ハンブルグ」ということを知って驚く人が多いかもしれない。日本人がドイツで「おおさか」っていう肉料理を見つけたら、きっと「どこで何がどうなってそうなった?」と謎に包まれる。
個人的には、ドイツでカボチャが「ホッカイドー」と呼ばれていると知ってそんな気持ちになった。
ハンバーグの「起源」はドイツにある肉料理フリカデッレ(Frikadelle)と言われている。
フリカデッレとは違いますね。ハンバーグは日本料理だと思います。
ーー同感。あれはもう「日本食」にカウントしていい。フリカデッレとは別の方向に進化したから、ハンバーグは「出藍の誉れ」ではなくて、日本人が得意な「魔改造」と言った方がよさそう。
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