2012年、中国で対日暴風雨が発生した。
尖閣諸島の領有権をめぐって大規模な反日活動が発生し、一部のデモ隊が暴徒となり、日系企業の店舗や工場が破壊されたり、商品が略奪されたりして大きな打撃を受けた。(2012年の中国における反日活動)
その翌年(か2年後)に中国を旅行した際、大同、平遥、西安で出会った日本語ガイドから聞いた話は印象的だった。
勤務している旅行会社に電話がかかってきて、「悪いのは日本の政府であって国民ではない。日中の文化交流は大切だから、こういう時だからこそ、あなたたちにはその架け橋になってほしい」という励ましの電話は一つもなく、「売国奴め!」や「仕事を辞めるか、中国から出て行け!」といった罵倒ばかり言われ、仕事にならなかったという。
空港で日本人のお客さんと話をしていると、近くを通りかかった中国人から「日本の犬、恥を知れ!」と侮辱されたり、日本人客と一緒に給料が激減したりしたガイドもいて、まさに踏んだり蹴ったりの状態。ひたすら嵐が過ぎ去るのを待ったという。
まったく違う都市にいたガイドたちがそろって、「あの時は本当にひどい目に遭いました」と語っていたのは今でも印象に残っている。
個別の事例を除けば、あの反日デモの最大の被害者はこうした中国人だ。
「魚釣島は中国のもの!」
魚釣島(うおつりしま)は尖閣諸島の中で最大の島
そんな反日活動が遠くなり、いま中国はアメリカを最大の敵と認定し、戦っている。トランプ大統領が中国に対して、関税を125%に引き上げると宣言して世界を驚かせたと思ったら、すぐに145%にさらに引き上げた。さらに昨日16日には、中国に最大で245%の関税をかけると発表し、人類に未知の世界の到来を予感させた。
アメリカは他の国々には中国との取引を制限するよう圧力をかけ、中国を孤立させるつもりだという。中国政府が大激怒&大反発したのは言うまでもない。
中国人がSNSに投稿する内容を見ると、反米感情が急激に高まっていることがわかる。
*原文は日本語、中国語、英語など。
「米国の関税戦争が始まった。この暴挙を止めるために、世界各国の力を結集するべきだ」
「中国は米国排除を開始した。この経済戦争のため、中国は数年前から準備をしていた」
「米国が中国をいじめることに夢中になっている一方で、中国はミャンマーへ救急隊を派遣して救援活動を展開している」
「(関帝君をもじった)関税帝君が世界経済を混乱させている」
ある中国人は、トランプ大統領がホワイトハウスの執務室で電話の前に座り、「私はずっとあなたの電話を待っている。電話一本ですべての問題が解決するんだ。習近平さま、早く私に電話をください〜」と泣きながら言う動画を投稿していた。今はAIでこんな動画を簡単に作ることができるのだ。
こんな反米投稿をいくつも見ていたので、韓国メディアの朝鮮日報が掲載したこの記事を見てもはや驚かない。(2025/04/17)
「あなたの便器を偉大に」 反米感情高まる中国で「トランプ便器ブラシ」爆売れ
スーツを着たトランプ大統領の髪の部分が、便器をこするブラシになっている。そんなトイレブラシが今、中国で飛ぶように売れているという。反米・愛国感情はとどまることを知らない。「アメリカ人の客からはサービス料を104%増しで取る」といった差別的な案内を掲げる店が各地で登場し、国民の拍手を受けている。コカ・コーラ、iPhone、スターバックス、マクドナルドなどは「国民の敵」としてボイコット対象にされているという。
*日本人の立場からすると、2019年に韓国であった「ノージャパン運動」と重なる。
中国人のSNS投稿で、ガラガラの店内のスタバで、中国人の店員が寂しそうな顔をしている動画を見た。マクドナルドやケンタッキーもきっと同じだ。店員たちは今、反米の嵐が過ぎ去るのを待つしかない。この米中関税戦争で最大の被害者は、アメリカに関係する会社で働いている中国人民だろう。まさに歴史は繰り返す。
アメリカ社会を見ると、中国人と同じようにトランプ政権に怒っている人は多く、カリフォルニア州の知事は「トランプ関税」は違法だと提訴したくらいだから、中国関係の仕事をしているアメリカ人にはむしろ同情が集まる気がする。一方、アメリカ系企業で働く中国人に聞こえるのは「売国奴め!」といった罵倒ばかりと思われる。
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