「宮崎をどげんかせんといかん!」
と言ったのは、宮崎県の知事をしていた東国原氏。
この言葉は当時の日本で流行し、2007年の流行語大賞にも選ばれた。
さて、話はいきなり19世紀末の朝鮮に移ってしまう。
このときもの朝鮮も「どげんかせんといかん」という状態だった。
民衆を支配する役人が腐り切っていたから。
韓国の歴史教科書によると、19世紀の朝鮮はこのような時代だった。
金で官職を買った貧官官吏はあらゆる方法で農民を収奪した。成人男性にだけ課すべき軍布を、子どもや死人の分までも出せとさんざん叱りつけた。役人がひそかに横領した官庁の穀物を農民から取り立てたり、法外な税金を設けて農民からしぼりとった。
「躍動する韓国の歴史 (明石書店)」
1890年代の朝鮮を旅したイギリス人のイザベラ・バードが、支配階級にあった両班(ヤンバン)のことを「吸血鬼」と書いている。
朝鮮には階級がふたつしかない。盗む側と盗まれる側である。両班から登用された官僚階級は公認の吸血鬼であり、人口の五分の四をゆうに占める下人は文字どおり「下の人間」で、吸血鬼に血を提供することをその存在理由とする。
「朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期 (講談社学術文庫) 」
吸血鬼が人の血を吸い上げるというのは、官吏(かんり)が「法外な税金を設けて農民からしぼりとった」ということと同じ。
19世紀末の朝鮮は、こんな人間であふれていた。
こんな朝鮮を見るに見かねて、「どげんかせんといかん」という人たちが現れた。
その人たちが1882年に、「開化派」というグループをつくる。
かいか‐は【開化派】
朝鮮の李朝末期、清からの独立と明治維新にならった改革を目標とした政治的党派。
「デジタル大辞泉の解説」
日本は、徳川幕府を倒して江戸時代を終わらせ、明治の近代化を成功させていた。
これに影響を受けた朝鮮の開派は、腐り切った朝鮮を内側から変えようとする。
この開化派の中心人物に、政治家の「金玉均(キム=オッキュン:きんぎょくきん)」という人がいた。
彼は朝鮮の改革をライフワークにする。
金玉均は、1883年に「漢城旬報(かんじょうじゅんぽう)」という新聞を創刊している。
この新聞は、朝鮮で最初の近代的な新聞として知られている。
もちろんこれも朝鮮を改革するために。
この新聞を世に出すために福沢諭吉も協力している。
新聞発行に福沢諭吉は,井上角五郎を派遣して編集を,職工三輪広蔵,真田謙蔵を派遣して印刷を,それぞれ指導させた。
「世界大百科事典 第2版の解説」
福沢諭吉をはじめとする多くの日本人が、朝鮮を改革しようとする金玉均をいろいろな面でサポートしていた。
このことを知る韓国人はだれだけいるのだろう?
きっと、「いない」と言っても問題のないレベルだ。
韓国で福沢諭吉は嫌われている。
それは、福沢が「脱亜論」を書いたから。
だつあろん【脱亜論】
福沢諭吉が1885年(明治18)に「時事新報」に発表した論説。アジアを脱して欧米にならうことを主張した。
「大辞林 第三版の解説」
この当時の日本にとって、ヨーロッパ列強の仲間になることは間違った選択ではない。
金玉均が目指した朝鮮改革は、結局失敗に終わってしまう。
朝鮮には、変化を望まない人間がたくさんいた。
改革されたら、彼らは特権を失ってしまう。
国の発展よりも自分の利益を優先した。
そして金玉均は1894年、中国の上海で暗殺された。
金は、「朝鮮の改革、いまだならず」と無念の気持ちでいっぱいだったと想像する。
当時の朝鮮で、政治の中心にいた人たちの金玉均への怒りはすさまじい。
金玉均の遺体は清国軍艦咸靖号で本国朝鮮に運ばれて凌遅刑に処されたうえでバラバラにされ、胴体は川に捨てられ、首は京畿道竹山、片手及片足は慶尚道、他の手足は咸鏡道で晒された。
「ウィキペディア」
日本にいたころの金玉均(ウィキペディアから)
金玉均のお墓は東京都港区の青山霊園にある(ウィキペディアから)。
このときに、朝鮮を「どげんか」できていたら良かったのに、と思う。
朝鮮が近代化に成功して力をつけていたら、日本が朝鮮を変えることもなかったかもしない。
記事のはじめに出てきたイザベラ・バードがこんなことを書いている。
朝鮮の両班たちは貴族社会の全体的風潮である搾取と暴政をこれまで事実上ほしいままにしてきた。この点について日本は新しい理論を導入し、庶民にも権利はあり、各階級はそれを尊ばなければならないということを一般大衆に理解させ、無料新聞も同じ路線をとった。
「朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期 (講談社学術文庫) 」
現在の韓国人の歴史観からしたら、「日本が朝鮮を改革した」ということは、感情的に受け入れられないことは分かる。
もし、金玉均たち開化派が朝鮮を内側から変えることができていたら、これとは違う朝鮮になっていたはず。
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サイトの内容がとても面白く、一昨日から読みふけっています。
日本、外国、宗教、社会、英会話など幅広い分野を時に面白おかしく、時に生真面目にとりあげながら、それでいて決して感情的にならず、汚い言葉も用いることなく丁寧な文章で淡々と綴る構成が好印象に感じました。
文章の内容については同意する部分もあり、またそうでない部分もありますが、更新を楽しみにしております。
これからも頑張ってください。
コメントありがとうございます。
>同意する部分もあり、またそうでない部分もあります
とても大事なことですね。
「平和が大事」みたいなあいまいで当たり障りのないことは書いても意味がないと思っているので、それなりに「色」を出しているつもりです。
批判的に読んで、いろいろと考えるきっかけにしてください。
これからもがんばりますよ。
*誤字脱字があったら教えていただけると、とても助かります。