今、奄美大島にあるリゾートホテル「THE SCENE」のフォロ割が注目されている。
らしい。
ホームページから。
昭和の人間には、一瞬フォロ割の「フォロ」の意味が分からなかった。
ここに書いてあるように、インスタグラムやツイッターなどのSNSの合計フォロワー数と「いいね」の数だけ、宿泊費が割引きされるサービスだ。
「×1円」で計算されるから、10000人のフォロワーがいて2000の「いいね」があったら、宿泊費が12000円安くなる。
これは期間限定だから、試験的におこなっているのだと思う。
これがうまくいくかは分からないけど、ホテルが注目をあびて、こんなブログでも取り上げられるのだから、良い宣伝にはなっているはず。
ちなみに、ネットにはこんな反応があった。
・渡辺直美とか泊まり放題だな
・相互フォローで増やしまくって放置してる俺の出番だな
影響力も何もないけどフォロワーだけは多いぜ
ふぁぼすらされないからなwww
・俺は12円ぐらい値引きになるのか
・まじかよ、8円安くなるじゃん
・捨て垢で自演フォロワー水増しする作業がはじまるよ
有名人でもない個人の影響力が数字や金であらわされるということは、昭和の時代には考えられなかった。
こうなると、一般人の間で細かい格差が生まれてしまう。
でもこれからは、個人の影響力によって、ホテルや店で受けられる割引やサービスが違ってくることが定番になるのだろう。
今回は、日本や海外旅行で見たホテルの割引サービスを書いていこうと思う。
1か月ほど前に、北海道にあるホテルトラが始めた「ハゲ割」が注目をあびた。
髪の毛が少ない人は宿泊費が500円安くなる。
”ハゲ”かどうかは、従業員が客の頭を見て決めるシステムだ。
髪の毛が落ちていないと部屋の掃除が楽になるから、このサービスを始めたらしい。
「排水溝に髪の毛がつまっていると、取り除くのに手間がかかる」という従業員の声から、この「ハゲ割」が誕生した。
イギリス人にこのハゲ割のことを話したら、「え?」と信じられないような顔をしていた。
「さすが日本人だ。日本人は細かいところにまでよく気がつくから」
彼らは何度か旅館に泊まったことがあり、そんな感想を持っていた。
例えば、旅館で出される料理は、食べ物によって器が違っている。
彼らはこれに感動し、日本食の奥深さを知ったという。
「イギリスでは、ここまで器に気をつかうことないよ。『料理と器をどう組み合わせたら、食べ物がおいしく見えるか?』なんて考えないから。それに、イギリスのレストランであんなきれいな器を出すのは危ないね。きっと、盗まれるよ」
紳士の国から来た人がそんなことを言っていた。
ボクが海外旅行で経験したホテルの割引には、今でいう「レビュー」がある。
インドやエジプトのホテルで、「このホテルの良いところを書いてくれよ」とペンとメモ帳を渡されたことが何度かある。
それを書くと、宿泊費を少し割引きしてくれたりチャイ(ミルクティー)を出してくれたりした。
エジプトでは、日本語と英語でレビューを書かされたことがある。
レビューを見ていると、日本語と英語の文で、内容がまるで違っているものがあっておもしろい。
英文では、「このホテルのツアーは安くて内容も良かった」と書いてあるけど、下の日本語の文はまったく違う。
「上の文はウソで、本当はこっちです。このホテルのツアーはボったくりです。ほかのところで申し込んでください。この文のことは、宿のスタッフには秘密にしておいてください」
1つ1つのレビューに歴史がある。
エジプトの宿といえば、割引ではなくて宿代を無料にしてもらっていた日本人客がいた。
宿のエジプト人オーナーがその日本人に絶大な信頼をおいていたから、可能になったサービスだ。
エジプト人の従業員はすぐ休むし、遅刻もする。
言いわけはするけど、体を動かそうとはしない。
仕事ぶりもいいかげんで、宿泊客から宿代を回収しないこともあった。
それでオーナーの頭を悩ませていた。
そこに彼があらわれた。
この日本人は、宿代を毎日しっかり払う。
あやしい行動もない。
日本人として当たり前のことをしていただけで、エジプト人オーナーの信用を得ることができた。
それで宿泊料をタダにする代わりに、他の客の宿代を集めてもらった。
その日本人はオーナーの期待に応えて、確実に宿代を回収してくれた。
彼の真面目な仕事ぶりから、宿のオーナーはエジプト人の従業員よりも日本人の宿泊客を信頼していたという。
こうして、宿泊客から宿代を回収してオーナーに渡すことで、その日本人客の宿代がタダになるという不思議なシステムが出来上がった。
ちなみに、日本のホテルでこれをやったら、不法労働で警察に捕まる。
宿の前の通り
おまけ
フォロ割でもハゲ割でも割引だけなら、注目を集めることはできても、歴史に名を残すことはできない。
でも、ボったくりをやめて定価制にしたら、日本史の教科書にその名前がのる。
最後にそんな人物を紹介しようと思う。
高校の日本史で、江戸時代の「越後呉服屋」について習う。
越後呉服屋
三井高利が1673年に江戸に開いた呉服店。「現金掛け値なし」と切売り商法で繁盛。両替商も兼業。幕府の御用(達)商人。明治期になって分立し、現在の三越百貨店につながる。
「日本史用語集 (山川出版)」
ここでいう「掛け値なし」というのは、文字どおり「掛け値をなくす」こということ。
「掛け値」とは、簡単に言ったら「ぼったくり価格」だ。
かけね【掛け値・掛値】
物を売るときに実際より値段を高くつけること。また、その値段。
「大辞林 第三版の解説」
江戸時代の日本では、値段交渉での買い物が当たり前。
でも、越後呉服屋の三井高利がそれを変える。
三井高利は掛け値というぼったくりをなくして、定価(適正価格)で商品を売り出すことにした。
「定価で物を売る」という定価制を日本で初めておこなったのは三井高利(越後屋)で、これは世界初でもある。
現在では当たり前になっている正札販売を世界で初めて実現し
(ウィキペディア)
ここまですれば、歴史に名が残る。
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