「わたし、もうすぐインドに帰ります」
というインド人とココイチでカレーを食べながら、いろいろな話を聞いた。
前回はインド人の彼が日本に来て、「日本にはベジタリアン用の食べ物が少ない!」と驚いたことを書いた。
今回は、カレーについて書こうと思う。
インド人から見て、日本のカレーとインドのカレーはどう違うのか?
「日本のカレーは甘いです」
日本とインドのカレーの違いを聞いたら、彼は「甘い」と答えた。
日本のカレーはスパイスが全然効いていないから、彼には甘いらしい。
そうなると「星の王子さま」は、インド人にはデザートになるかもしれない。
彼は、日本のカレーはインドのカレーと”違う”のではなくて、”別の食べ物”と考えていた。
彼は前に、日本のお土産としてレトルトカレーを持って帰って、インドの家族に食べさせたことがある。
日本のレトルトカレーの味は「まあ、悪くない」という評価で、可もなく不可もなくといったところ。
でもそれ以前に、日本のカレーを食べた家族はだれ一人として、それがカレーだとは気がつかなかったという。
「それがカレーだと知って、家族の人たちは驚いていました」
という話にこっちが驚いた。
外国の料理が日本に来て、日本で独自の変化をとげることはよくある。
中国から日本に伝わった餃子やラーメンは、今では中国のものとはかなり違う。
でも、中国人が日本の餃子を食べて「これが餃子とは気づかなかった!」という話は聞いたことがない。
中国人なら、日本の餃子と中国の餃子が違っていても「同じ食べ物」とは思うだろう。
でも、インド人の彼の場合、日本のカレーをインドのカレーと同じ食べ物とは思っていない。
完全に別の食べ物だと考えていた。
本場のインドカレー
日本のカレーライスとは全然違う。
インド人が「別の食べ物です」と言うほど、日本のカレーはインドのカレーとは違う。
その理由は日本にカレーを伝えたのはインド人ではなく、当時インドを植民地支配していたイギリス人だからだ。
S&Bのホームページにこう書いてある。
明治時代に日本海軍に伝わったイギリスのカレーが、現在の日本のカレーの礎になったのはよく知られた話です。
餃子は直接、中国から日本へやって来た。
中国人が日本人に伝えたり日本人が中国で学んだりしたから、まだ中国の餃子とは似ている。
でもカレーはそうではない。
日本海軍に伝わったのはイギリス式のカレーだから、インドカレーとは大きく違う。
明治時代に伝わったカレーは、インド料理ではなくて西洋料理に分類されていた。
農林水産省のホームページから。
明治(めいじ)時代は、アメリカやヨーロッパの文化が日本に積極的に取り入れられ、その中でイギリスからカレーが伝わりました。
カレーのつくり方を紹介するレシピ本「西洋料理指南」が出たのは明治5年(1872年)だから、日本でカレーが広がったのはこのころからだろう。
日本のカレーはイギリス由来だから、インドカレーとは違う。
その違いとして、「インドカレーにはカレー粉がない」ということがよくあげられる。
カレー粉はイギリスで作られて日本に伝えられた。
19世紀、イギリスで初めてカレー粉が作られました。インドにはカレー粉というものはなく、いろいろなスパイスを組み合わせて、カレーの味をつくっているのです。
カレー粉に近いものとして、インドには「ガラムマサラ」がある。
イギリス人の友人に聞いても、イギリスの家庭でつくるカレーは、インドよりは日本のカレーに近いと言っていた。
やっぱり、日本カレーのルーツはイギリスにあった。
「日本のカレーは甘いです」と言っていた彼は、「日本の米はすごくおいしいです」と日本米を絶賛していた。
彼が日本のカレーを好きな理由に、おいしい日本米がある。
日本のカレーに日本米は欠かせない。
これもインドカレーとの大きな違いだ。
そんなカレーの母国インドで、日本のカレーがデビューした。
朝日新聞の記事(2017年12月25日)から。
カレー大国であるインドで、インド人向けに日本式カレーを出す店が23日、首都ニューデリーで本格オープンした。
きっかけは「カレーうどん」 インドに日本式カレー店
おまけ
明治時代、洋食が日本に普及して、日本人もフォークやナイフで食事をするようになっていった。
でもその過程はなかなか大変だったらしい。
今となっては冗談としか思えないが、フォークやナイフで食事をしていて、口に突き刺し、血まみれになってしまった、という事故がけっこうあったという。
「カレーライスと日本人 (森枝卓士)」
では最後にインドの首都デリーの様子をどうぞ。
よかったら、こちらの記事もどうぞ。
明治の文明開化に庶民はパニック!ポストや電線を見た日本人の反応は?
日本人の食文化:江戸は犬肉を、明治はカエル入りカレーを食べていた
もともとインド料理に「カレー」という概念は無く、ヨーロッパ人がインド料理を一括りにして作った概念であるらしいです。
なので「カレー」と括られている食べ物は、インド人にとっては個々の「料理」になるはずです。
そう考えると、インド人が日本のカレーを、「自分たちの料理とは違う料理/食べ物」と認識するのは自然な気がします。
このまえ3人のインド人とカレーの話をしました。
彼らにとって日本のカレーとの最大の違いはカレー粉の有無です。
インドカレーにはそんなものはなく、それに近いものとしてガラムマサラを使います。
それにインド北部はコメではなくて、小麦粉でできたチャパティで食べることが多いのも日本との違いです。
でも、みんな日本カレーが好きで別料理として楽しんでいますよ。