日本のイスラム教徒③”イスラム嫌い”の日本人にもフレンドリーに

 

2018年4月、姫路駅前にイスラーム教徒のためにお祈りスペースがつくられた。

これはイスラーム教徒には好評だったのだけど、日本のネットでは正反対。
書きこみを見ると、8割以上が否定的。
こんなに多いとは思わなくて、ビックリした。

ここではあえて、反対の声を載せようと思う。
*これは「マシ」なほう。差別用語があったりして、とても載せられないようなものも多かった。

・もうこういう外国人への「おもてなし」を勘違いした「へりくだり」はやめたほうがいい。
・異教徒のためにこんなことをしたところで感謝は続かない。当たり前に変わっていく。
・「郷に入っては郷に従え」じゃなく、「郷に入っては郷が従え」だからな。
・自分達の主張だけして他者は認めない
・好意で一ヶ所に作ってやると、全部の場所に作れと言い出すんだよ

 

前にも書いたけど、ボクは、外国人が日本に来ることには賛成の立場。
おかげで外国人の知り合いができて、多文化共生社会のメリットを得ているから。
イスラーム教徒の友だちも何人かいる。

だから、外国人との共生がうまくいくためには、こうしたネガティブな意見にも耳をかたむける必要があると思う。
とくに「違いを認め合おう」とか「いろいろな考え方を尊重しよう」と言っている人こそ、自分に反対する人の声をしっかり聴くべきだ。

 

 

「いまの日本には、イスラーム教徒が礼拝できる場所がどれぐらいあるんだろう?」と思って、「halalmedia」の礼拝場所を見てみた。

すると予想以上に多い。
大丸・まねきねこ(カラオケ店)・イオンモールなどいろいろなところで、お祈りのスペースが用意されている。

でも反対に、ダメになった例もある。

「ここにもイスラーム教徒の礼拝施設ができました!」というニュースはよく見たけれど、「ダメになりました」というのはこの一件しか知らない。

それは、伊勢神宮の近くにつくられる予定だったもの。

 

今年2月、伊勢市が伊勢神宮近くに、イスラーム教徒用の礼拝スペースをつくると発表した。

近くといっても、内宮から約800メートル離れている。
観光案内所の一部を改修してつくるのだけど、これはイスラーム教徒専用ではない。
日本人がここで休憩することもできるから、礼拝所を兼ねた「多目的スペース」になる。

そのことはこの記事をどうぞ。

伊勢神宮の近くに、イスラーム教徒の礼拝所ができるらしい。

 

「スタップ細胞はあります!」ではなくて、「礼拝スペースをつくります」という発表のあと、すぐに中止が発表された。

これがマスコミに報じられたあと、市民から抗議や批判の声が殺到したから。
あまりの反響の大きさに、市はこの計画を断念。

朝日新聞の記事(2018年3月9日)によると、担当者はここまで反対されるとは思っていなかった。

市の幹部は取材に「予想外の反応で、今の計画のままでは市以外にも迷惑がかかると判断した」と話した。多目的スペースは礼拝設備を外して整備する。今後、民間主体の礼拝場所を設けられないかを検討するという。

ムスリム礼拝場所設置を白紙撤回 伊勢神宮近くの案内所

個人的には、これはいいだろうと思ったのだけど、抵抗を感じる人はかなりいるらしい。

 

 

こういう例を見ると、多文化共生社会の実現には、日本人の協力や理解が不可欠だということが分かる。
そして実際のはなし、仏教徒やキリスト教徒よりも、イスラーム教徒のほうが受け入れには配慮が必要だ。

具体的には、ムスリムおもてなしガイドブックを見てほしい。

 

味噌やしょうゆにも、気をつかわないといけない。
「ハラールマーク」のあるものならOK。

 

日本ではいま、イスラーム教徒用の礼拝所やレストランがすごく増えている。
でもその一方で、イスラーム教徒に抵抗や不安を感じている日本人への、配慮や働きかけは少ないように思う。

「違う文化や価値観を認め合うことが大事」と外国人との共生に賛成する人のなかには、ひどい人もいた。
「正直、イスラーム教徒はコワい。何を考えているのか、よく分からないから」と言う人に対して、「そういう考え方は排外的。右翼っぱいよ」とレッテルを貼って黙らせる。

こんなことをしていたら、外国人やイスラーム教徒を嫌いな人が増えるのはあたり前だっつーの。
多文化共生社会の”敵”は、こういう決めつけだ。

 

これは極端な例としても、イスラーム教徒へのおもてなしは進んでいるけれど、イスラーム教徒を不安に思う日本人へのケアはあまり行われていないと思う。
ぶっちゃけて言えば、こんなことをしても儲からないから、やろうとする人が少ないのだろう。

でも、イスラーム教徒に苦手意識を持つ日本人を無視して、全国各地に礼拝場所なんかをつくっていくと、伊勢市であったようなトラブルがきっとまた起こる。
いまの日本では、「予想外の反応で、今の計画のままでは市以外にも迷惑がかかる」という事態が他で起きても不思議ではない。

「ムスリム・フレンドリー」や「ムスリムおもてなし」の環境を整備するなら、イスラーム教徒に不安を持つ日本人に対してもフレンドリーに接して、抵抗感を減らすことも同時に進めたほうがいい。

 

 

浜松駅の近くでアジア音楽のフェスティバルが行われたとき、会場に、こんな簡易お祈りスペースがあった。
説明するスタッフがいて、中をのぞく日本人もいた。

”イスラーム嫌い”の日本人に「あなたは排外的で、右翼っぱい」と言っても、相手をさらに”ムスリム嫌い”にさせるだけ。
もっとフレンドリーに接したりこういう取り組みをしたりして、イスラーム教を身近に感じてもらったほうがいい。

 

 

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今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。