日本は東西に分けられることが多いけど、インドはよく南北に分けられる。
最近、北部と南部出身のインド人4人とご飯を食べに行った。
北部の2人は首都デリー、南部の2人はチェンナイ(地図右下)出身のインド人。
インドは基本なんでもあり。
多様性豊かな国で、とくに言語がたくさんある。
くわしくは前回の記事をご覧あれ。
インドの言語分布
細かいことはおいとていて、インドでは、北部と南部で使用される言語が大きく違うことを知っておこう。
北部出身のインド人はヒンドィー語を話すことできるけど、南部の言葉は知らない。
南部出身のインド人はタミル語を話すことができるけど、ヒンドィー語は分からない。
ということで、会話はすべて英語で行われた。
インド人の場合、初対面の人と会ったら、まずは使用する言語を決めないといけない。
といっても意図的に決定するのではなくて、自然にヒンドィー語か現地の言葉か英語のどれかになる。
インドには、イギリスによる植民地支配(1858年 – 1947年)の歴史がある。
「1858年~」というのは前年のインド大反乱(インド独立戦争)の結果で、イギリスによるインド支配はその前から徐々に進んでいた。
つまりインド人にとって英語は、植民地支配の影響や結果でもある。
インドは独立するが、植民地時代の宗主国の言語であった英語は現在でも連邦公用語のヒンディー語や17の地方公用語と並んで、補助公用語として用いられている。
以前、英語をインドの公用語から外す動きがあったけれど、いまでも公的に英語は使われている。
便利と言えば便利だ。
でも、自分たちを支配していた国の言葉を使うことに、インドの人たちは抵抗感を感じないのだろうか?
4人に聞いたら、「それはまったくない」と全員が言う。
むしろ英語はインド全土の人間をつなげる役割を果たして、それが結果的にインド独立に役立った。
いまでもそのおかげで世界中の人とコミュニケーションができると、とてもポジティブな評価をしていた。
「植民地支配」と聞いて、日本人が思い浮かべるのは韓国だろう。
日本が統治していた韓国では、日本語はメチャ嫌われている。
日本語をはじめ日本統治時代の「残りカス(影響)」は、「日帝残滓(にっていざんし)」と呼ばれて排斥の対象になっている。
「日本が韓国からハングルを奪った」という論理のもと始まった国語純化運動に代表されるように、韓国併合時代に言葉や文字以外の様々な朝鮮半島固有の文化も日本が奪ったとされる。そうして置き換えられた文化を「日帝残滓」と呼ぶ
街では日本語のレストランなどがたくさんあるけど、公的には排除されている。
たとえば地上波放送では、いまでも日本語のドラマや歌を流すことができない。
2014年には、アイドルが歌う歌詞の中に「ピカポンチョク」という「日本語式の表現」があるという理由で、韓国のテレビ局KBSが不適格判定を下したこともある。
最近も国会議員が会議中、「分配」を日本語で発音してしまい非難を浴びた。
レコードチャイナの記事(2018年11月28日)
韓国語では「ブンベ」と発音するが、日本語式に「ブンパイ」と発音したとして、批判が上がっているという。
韓国の「日本語好き」国会議員がまたも会議中に日本語を使用し批判浴びる
この国会議員は、現在韓国で使われている「教頭」という言葉は日本式だから「副校長」に変えるよう提案したこともある。
日本には植民地支配の歴史がない。
だから、こういう感覚が分かりにくい。
韓国の反応を見ていると、インド人が英語を評価したり感謝したりするのが少し不思議に見える。
でもよく考えたら、これは台湾人の見方と同じだ。
日本が台湾を統治していた時代、台湾の人たちに日本語教育を行っていた。
いまでもその世代の人たちは日本語を話すことができる。
日本語教育も積極的に行い、その結果台湾に存在した言葉の壁を取り払ったと高く評価する台湾人も少なくない。今でも原住民の中高年層と他民族の老齢層の共通語として機能している。
台湾にはたくさんの少数民族がいる。
でも民族によって言葉が違うから、共通語の日本語で会話をすることがある。
インドの英語のように、日本語は台湾の人と人をつなげる役割を果たしていたのだ。
前に何かの本で、台湾のアミ族とタイヤル族の人たちが日本語で話をしているということを知って驚いた。
でもこれは日本語世代の人たちで、若い人たちとは事情が違う。
インドの北部と南部の人が英語で話をするのも、台湾の少数民族が日本語で話をするのも、歴史的背景は同じ。
支配の結果であっても、便利で役立つものは使い続ける。
同じ歴史的背景があっても、見つけては排除しようとする韓国とは大きく違う。
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