外国人を京都に連れて行くと、必ず案内するお寺がある。
15世紀に細川勝元がつくった禅宗のお寺・龍安寺だ。
1975年にエリザベス女王がここを訪れ、この枯山水の庭を称賛したことから、龍安寺の名は世界的に知られることとなった。
だから、この庭を見た外国人が「小さくてつまんね」と思いやがっても、「あのエリザベス女王が魅了されたのだから」という言い訳はできる。
でもいまのところ、この庭を見て「来なければよかった」と言った外国人はいない。
いたら入国管理局に通報してやろうと思ってる。
というのはもちろん冗談だけど、でもそのうち、こんな言葉も「ヘイトスピーチ」と非難されそうな時代になりそうでコワいコワい。
さて、7年ぐらい前に、アメリカ人・タイ人・インドネシア人を龍安寺に連れて行ったときのこと。
そのとき「枯山水」の英語が分からなかったから、何となくで「ドライド・ガーデン」と言ったところ、アメリカ人から「何言ってんだ?おまえ」という顔をされた。
枯山水は「ゼン・ガーデン」でいいらしい。
そのゼン・ガーデンを見たあと、15分間の「自由行動」をとって、外国人には好きに龍安寺を回ってもらうことにした。
インドネシア人が約束の時間に遅れてきたのは予想どおりだったけど、アメリカ人やインドネシア人から「悪魔のようなものがいたけど、あれはなんだ?」という質問を受けたのは想定外。
龍安寺に「悪魔」なんていたっけ?
そもそも仏教寺院の中にそんな存在があるか?
何だかよく分からないままそこに案内してもらうと、たしかにいた。
インドネシア人が指さす方向にあったのは鬼瓦だった。
下は龍安寺のものではないけど、アメリカ人とインドネシア人がこんな瓦を「デビルズ・フェイス」と表現していた。
鬼瓦は日本のお寺によくある装飾で、魔除けの意味がある。
この恐ろしい表情を見て、彼らは悪魔と思ったらしい。
悪魔のように人々に害をあたえる鬼もいるけど、これはお寺を守ってくれる頼れる悪魔。
ちなみに、鬼瓦をつくる職人のことを「鬼師」という。名刺に書いてあったら、忘れられないインパクトだ。
鬼瓦の話をきいたアメリカ人は「なるほど。キリスト教でいうと『ガーゴイル』だな」と言う。
ガーゴイル?
たしかRPGでそんな敵が出てきたような気がする。
経験値を上げるための「雑魚キャラ」だったような。
百聞は一見に如かず。
まずは欧米にあるガーゴイルを見ておくれやす。
*以下の写真は必ずしも教会のものとは限らない。
西洋社会でガーゴイルは建物の飾りになっているから。
この上下はパリのノートルダム大聖堂にある(いる?)ガーゴイル
クロアチアの教会のガーゴイル
ベルギーの教会のガーゴイル
アメリカの教会のガーゴイル
イタリアの教会
カナダのトロント市役所
フランスのお城(たぶん)のガーゴイル
エストニアのちょっとオシャレなガーゴイルさん
上はイギリスの博物館
下はそこにあるガーゴイル
1990年代にイギリス(スコットランド)の「ペイズリーアビー」という教会につくられたガーゴイル。
もちろん映画「エイリアン」をまねたもの。
12世紀に起源をもつ歴史ある教会だけど、こんな遊びをしている。
くわしいことは下をクリック。
以上見てきたように、ガーゴイルとは恐ろしい(または気味の悪い)人や生き物の顔をかたどった像のこと。
目的は雨水を流す排水溝のほかに、悪魔などの邪悪な存在から教会という神聖空間を守っている。
The head was then mounted on the walls of the newly built church to scare off evil spirits, and used for protection.
Just as with bosses and chimeras, gargoyles are said to frighten off and protect those that it guards, such as a church, from any evil or harmful spirits.
西洋のガーゴイルは恐ろしい顔をして悪霊や魔物を怖がらせ、教会に近づけないようにしている。
これは鬼瓦とまったく同じコンセプトや役割だ。
龍安寺の鬼瓦を見て、アメリカ人がガーゴイルを連想するのも納得ですね。
おまけ
鬼瓦の起源はシリアのパルミラにあるという。
パルミラの建物の入口にメドゥーサを厄除けとして置いていた文化が中国に伝わって、奈良時代の日本にもやって来た。
この時代、日本人は遣唐使を派遣して唐の文化を受け入れていたから、鬼瓦もそのときに伝来した。
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ゴルゴネイオン(17世紀)
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随分昔の話、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂のサン・ピエトロ像は、来訪者が健康を願いながら次々と足を触るもんだから光ってすり減ってました。これって病気からの回復を祈る撫で仏のおびんづるさんと同じだなと思いました。
人の考える事って洋の東西を問わず似たようになるようで、文化的な収斂進化のようなものでしょうか。
病気などの困難からの救いを求める気持ちは人類共通ですから、似た部分も出てきますね。