16世紀末、豊臣秀吉による天下統一の少しまえ、ルイス・フロイス(1532~97)というヨーロッパ人がキリスト教を伝えるために日本へやってきた。
フロイスは重要人物で高校の日本史にも出てくる人。
ポルトガルのイエズス会宣教師。1563年に来日。京都で信長に謁見、秀吉とも親しくし、キリシタン布教の地歩を固めた。追放令で退去後、再来日し、長崎で死去。『日本史』を執筆した
「日本史用語集 山川出版」
フロイスの署名
戦国時代の日本と当時のヨーロッパを比較して、フロイスは「日欧文化比較」という小冊子をつくった。
日欧の違いを記したものとしては最も古い文書のひとつだ。
その中でフロイスは女性の違いについてこう書いている。
ヨーロッパでは、女乗りの大鞍(くら)もしくは腰掛で騎行する。日本の女性は、男子と同じ方法で騎行する。
「フロイスの日本覚書 (中公新書)」
ヨーロッパと違って日本では男女が平等だったのだ。
これは騎乗だけではなくて他の面でも見られる。
くわしいことはこの記事を見てほしい。
さてここからは、16世紀の日本と21世紀のサウジアラビアの「女性の権利」の話。
サウジアラビアがフロイスのいう「女性は、男子と同じ方法で騎行する」という水準に“追いついた”のは2018年の6月。
サウジアラビアはイスラーム教の影響がとても強い国で、女性が自動車を運転することを禁止する世界で唯一の国だった。
でも時代は変わって、女性の権利も向上する。
国王が女性による車の運転を認めてきょねん6月、サウジアラビアの歴史上はじめて女性が運転免許証をゲットして女性ドライバーが誕生した。
くわしいことはこの記事を。
16世紀の移動手段、馬は現代では車にあたるから、サウジアラビアは2018年に「女性は、男子と同じ方法で騎行する」という状態になったわけだ。
でも、変化には支持と抵抗がともなう。
サウジアラビアの国民すべてが女性の運転を歓迎しているわけはなく、このときから1年後の朝日新聞の記事を見ると、まだまだ社会的な合意は得られていない。(2019年6月21日)
女性の運転に反対する声も根強い。解禁直後には西部で女性の車が放火される事件が起きた。ジッダに住む女性(38)は「妹が大学に通うため免許を取ろうとしたが、未婚女性が好き勝手に動くのをよく思わない父親や親戚が反対している」と打ち明ける。
解禁後も…サウジ女性、ハンドル握れぬ理由 車に放火も
ちなみにサウジアラビアとはこんな国。
興味のない人は飛ばしてほしい。
面積は215万平方キロメートル(日本の約5.7倍)。
人口は3,228万人で、日本の約4分の1。
国民の構成は自国民が73%で、外国人が27%。
外国人の出身別:アジア20%,アラブ6%,アフリカ1%,ヨーロッパ1%以下。
首都はリヤド。リヤドは「庭園」という意味。
民族はアラブ人で、言語はアラビア語(公用語)。
宗教はもちろんイスラーム教。
以上は外務省ホームページのサウジアラビア王国 基礎データから。
サウジでの女性に人権についてはこちらをどうぞ。
サウジアラビアはイスラーム教の中で最も厳格なハンバル学派のシャリーアを国法としている。サウジアラビア国民の女性は外出時には必ずアバヤを身に着けねばならない。また一夫多妻制が認められている国でもある。
サウジアラビアの女性が着るアバヤと女忍者の衣装はわりと似ている。
先ほど、「未婚女性が好き勝手に動くのをよく思わない父親や親戚が反対している」という文があった。
戦国時代の日本人女性の移動について、フロイスはこう書いている。
ヨーロッパでは、夫が前方を、そして妻が後方を歩む。日本では、夫が後方を、そして妻が前方を行く。
「フロイスの日本覚書 (中公新書)」
男女平等を超えて女性のほうが強かったらしい。
サウジアラビアでは女性の運転は認められたけど、移動の自由は認められてはなく、夫や父親の「許可」を必要とする場合がある。
でもサウジアラビアは変化している。
女性の権利が高まりつつあって、父親や夫の許可がなくても女性が海外旅行に行けるようになるという。
朝日新聞の記事(2019年8月2日)が地元メディアの報道を引用してこう書いている。
21歳以上の女性は男性親族の許可を得なくても海外旅行やパスポートの取得ができるようになるとしている。
夫の許可なく海外旅行、サウジで解禁へ 人権批判受け
でも社会的な制度として可能になっても、現実的にできるかどうかは別問題だ。
運転免許の取得が認められたら女性の車が放火されたように、これも実際には高いハードルがあるはず。
「21世紀のサウジの女性の権利って、16世紀の日本と同じじゃね?」というのは女性の移動も同様で、フロイスの記述によると、16世紀の日本女性は外出のさい夫の許可を必要としていない。
ヨーロッパでは、妻は夫の許可なしに家から外出しない。日本の女性は、夫に知らさず、自由に行きたいところに行く。
「フロイスの日本覚書 (中公新書)」
戦国時代の女性は当時のヨーロッパ社会と比べても、高い権利や自由が認められていた。
そんな日本は世界の例外だったのだろう。
おまけ
イスラーム教の国・イエメン
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サウジの女性も気軽に参加出来るようになっているといいな。 だって女性ファンが圧倒的なんですからね。
それにしてもBTS人気ってすごいなーと思います。 J-POPもがんばって欲しい。
韓国政府は大嫌いだし、韓国人も好きじゃなくなったけど、韓国ドラマとK-POPは好きなのでちょっとジレンマ(笑)
日本における女が三歩下がっては江戸時代になってからなのか~。
そうなんですね!サウジでライブか。
ちょっと想像できません。
女性も行けるのか興味があります。男性とは別々かもしれませんけど。
東南アジアの人たちと話しても、J-POPは下火ですね。残念ですけど。
三歩下がって、というのは儒教の影響が浸透した江戸時代からです。「三従の教え」なんてのもありました。