最近、知人のイギリス人がSNSにこんな投稿をしていた。
「This is quite scary. Think I’ll be avoiding faux fur too then.」
これは本当に恐ろしい。こんなニセの毛皮(製品)は使わない、と言う。
近年、世界的に動物愛護の声が高まっていて、イギリスでは特に熱心な人が多い。
それでファッション業界からキツネの毛は消えつつあって、化学繊維などから作るニセ毛皮を使った衣類が作られるようになった。
ニセという表現はよくないけど、この場合は悪い意味ではない。
実物に近づこうとする努力は本物だ。
でも、上のイギリス人がシェアしていた英BBCニュース(14 November 2018)はむごかった。
Shops including Amazon and TK Maxx have been selling faux fur clothes and bags which are actually made from rabbit, fox and raccoon dog fur, a BBC Watchdog Live investigation has found.
「TK Maxx and Amazon among shops selling real fur as faux」
ニセ毛皮と宣伝していた毛皮は、実はウサギやキツネ、タヌキなどの毛から作られたガチ毛皮だった。
これは言い訳の余地なし。
会社側はすぐにこれらの商品を撤去する。
上のコメントに対して、別のイギリス人がこう書きこむ。
「I turned down a coat because I realised it had rabbit fur on it. The coat was almost perfect, but I couldn’t justify the fur!」
ほぼ完ぺきなコートがあったけど、ウサギの毛を使っていることで買うのをやめた。
どんなにすばらしい商品でも、毛皮の使用を正当化することはできない、というのがこのイギリス人の考え方。
完全菜食主義や絶対菜食主義と呼ばれるヴィーガンの人たちは動物の肉を食べないし、毛皮のように動物から作られたものも全て拒否する。
肉を食べないことでは共通しているけど、ヴィーガンにもいろいろな考え方があるから、くわしいことはここをどうぞ。
動物性食品を食べない、もしくは追加して動物製品を使わないということの実践とされる。食生活においてはほかの菜食主義の食生活とは異なり卵や乳製品も避ける。
ボクはヴィーガンの反対側にいて、ハンバーガーもステーキも食べるし毛皮製品に拒否感もない。ただし値段には距離間を感じる。
上の2人もあんなコメントをしているけど、ヴィーガンというわけではない。
とくに「I couldn’t justify the fur!」と書きこんだイギリス人は、自分の誕生日パーティーを焼き肉店で開くほどの肉好きだ。
このイギリス人の場合は、「生きるために人が肉を食べるのはいいけど、毛皮のように飾りのために動物を殺すことには反対」という立場。
食肉はかまわないけど、動物愛護の精神から不必要な残酷行為には反対という。
これが現実的な意見かご都合主義かは迷うところだけど、本人だけのポリシーで他人に押し付けることはないから、まあ好きにすればいい。
でもこんな感じにヴィーガンではないけど、その考え方の一部を取り入れているという欧米人にはわりと会う。
この米CNNニュース(2019.10.31)もその発想に近い。
フォアグラ提供禁止の条例可決、料理店など 米NY市
カモやガチョウに無理やりエサを食べさせて、人工的に太らせてからその肝臓をとる方法が残酷ということで、ニューヨークではレストランや食料品店でのフォアグラ提供が禁止された。
でも、七面鳥の丸焼きやフライドチキンなどは“保護”の対象外で、財布が許す限り好きなだけ食べることができる。
フォアグラと同一視するわけではないけど、日本で猿回しを見たアメリカ人やイギリス人が「あれは残酷で見ていられなかった」と言うのを聞いたことがある。
外国人と接する機会のある人は、「めどくさっ」と思っても「なるほど!」でもかまわないけど、とりあえずヴィーガンの人たちの考え方は知っておいたほうがいいと思う。
こちらの記事もどうですか?
肉食はいくらでもいいけど、毛皮は反対とする欧米人。フォアグラや猿回しは残酷ですか、なるほど。
豚の丸焼き(姿焼き)はどうなんですかね?犬食は?医薬品開発のための動物実験は?毛のない毛皮、つまり革製品・・・革製のコート、ベルト、靴なんかはどうなのでしょう?また三味線はどうですか?現在はほとんど犬の革で作られているらしいですが。
他民族の文化に対して、自分たちの価値観をあまり押し付けるべきではないと、日本人なら考えるのが一般的じゃないでしょうか。ただし、他民族の考え方を「知っておく」ことはたいへん重要だと思いますけど。
わたしの周りにいる人に価値観の押し付けはありません。
昔はキリスト教、近年は自由民主主義や共産主義などの価値観を世界に広めてきましたし、この傾向は変わらないでしょう。