ベルギーの都市アールストには、ユネスコから無形文化遺産に登録されたカーニバルがある。
でも先週、それが取り消されて世界的な話題となった。
ことし行われたカーニバルでユダヤ人を蔑視するような山車(だし)が登場して、ユネスコがそれを人種差別として無形文化遺産を抹消された。
くわしいことはこの記事をどうぞ。
問題となった山車(ツイッター画像のキャプチャー)
このニュースに対する外国人のコメントを見ると、この像や製作者への非難で埋められていた。
・Disgusting!
最悪!
・How dreadful. “They do not know what they do”.
なんて恐ろしい。彼らは自分が何をしているか分かっていない。
・This is nauseating. I am sorry to see this.
これは吐き気がする(胸くそ悪い)。気分が悪くなった。
・This is very bad. It’s as if history is repeating it’s self. Frightening.
これは本当にひどい。歴史はまさにくり返す。恐ろしいことだ。
・How is this even a thing, especially in Europe?Breaks my heart.
なんでヨーロッパでこんなことが起きたんだ?心が張り裂けそうだ。
・Who was behind the making of this float?
この背後にはだれがいるんだ?
このニュースに反応したのはおもに欧米人だろう。
ユダヤ人に対する差別的な思想や言動「反ユダヤ主義」が伝統的にあった欧米社会ではいま、ユダヤ人差別は絶対的タブーになっている。
ユダヤ教徒の礼拝
でも日本人の反応は対照的で、「この表現はアリでは?」という人が多い。
・現代的価値観でオンオフされる文化遺産ってなんじゃ?
・残すべき文化遺産のはずなのにそんな理由で取り消されるのか
やっすい遺産だな
・こりゃあ あからさまにヘイトだわ。
・中世にさかのぼる起源を持つカーニバルで、風刺を込めた山車やパフォーマンスが売りなら、“伝統的な風刺表現”として“銭ゲバのユダ公”ってのも当然ありそうな気がするけど。
・来年はユネスコ風刺する山車作ってくれ頼むぞ
・それも含めて文化遺産だろ
・どう見てもヘイトです。
ヨーロッパ社会と違って日本では、伝統的に「反ユダヤ主義」が存在しなかった。
ユダヤ人との接点がなかったから、知らない人間に憎悪を向けるなんてできるわけがない。
日本人がいつユダヤ人を知るようになったか分からないけど、日本での反ユダヤ主義については、ウィキペディアでは大正時代から説明が始まっている。
おもに同盟国のドイツから日本でもユダヤ人への蔑視や差別意識が伝わったけど、それが一般的に広がることはなく、限定的にあったようだ。
ナチ党の権力掌握から間もない頃には、東京朝日新聞などでもナチスのユダヤ人迫害に対して批判的な論調が見られた。しかし、ナチスに対する支持が増幅するについて、反ユダヤ主義的な見解が広がり、
個人的には20年ぐらい前に、「世界を陰でコントロールしているのがユダヤ人だ」といういわゆるユダヤ陰謀論を友だちが熱心に話しているのを見て驚いた経験がある。
ヤツはこんなトンデモ説をわりと本気で信じていたらしい。
でもひと昔、ふた昔前はこんなオカルトまがいの言説が本に載っていて、それを真に受ける人も多かったと思う。
友人の場合は何かのセミナーで聴いて、すっかりだまされていた。
そう言うボクにも失敗はある。
「ニューヨークにはユダヤ人(Jew)が多く住んでいるから、NYはジューヨークと呼ばれている」ということを何かの本で読んで、ニューヨーク出身のアメリカ人に少しどや顔でその話をしたら、「ジューヨークってなんだよ!初めて聞いたぞ!」と驚かれた。
これが彼のツボにはまったらしく、近くにいたイギリス人に「なあ、ジューヨークって知ってるか?」と話しかけやがった。
「ジューヨークってwwww」とダブルで笑われて、心に深いダメージを負ってしまった。
でも2人から、「そんな言葉は他で言わないほうがいいぞ」と注意されたから、知らないうち反ユダヤ主義に触れていたのだろう。
歴史的にユダヤ人差別がなかったから、日本ではその意識がうすい。
先ほどのアメリカ人は「日本人は鈍感なんだよ」と言って、その具体例として「しまむら」がハーケンクロイツのデザインを取り入れた商品を販売したことや欅坂46がナチスを連想させる格好をして欧米メディアから猛批判されたことを挙げた。
こうした失敗の背景にもきっと無知がある。
くわしいことはこの記事を。
日本人が犯した「ナチスの失敗」。しまむら・欅坂46・Jリーグ
欧米人と接する機会のある人なら、「反ユダヤ主義」について知っておく必要がある。
でないと、いつか軽蔑されるかダブルで笑われるから。
こちらの記事もいかがですか?
日本人も’挙手’に注意!ナチス敬礼で中国人観光客がドイツで逮捕。
日本人が犯した「ナチスの失敗」。しまむら・欅坂46・Jリーグ
この記事自身のタイトルがもう非常識ですね。
「欧米では常識の反ユダヤ主義」ではなく、「欧米で(かつては)常識だった反ユダヤ主義」とすべきです。
記事にも書いてあるように、現在の欧米人は、反ユダヤ主義という考え方が昔は「世の中の常識としてあった」ことを知識として知っており、現在の彼等はそのことに反対しているのですから。
言葉の意味はその前後で決まります。
この場合は「誰でも知っている」という意味で、「みんなやっている」ではありません。
昔の話ですが、関西では常識だった同和問題を静岡出身のわたしは知りませんでした。
ただ確かに誤解を招きやすい表現だったので、訂正します。
ご指摘ありがとうございます。