きょねんの秋、リトアニア人(東ヨーロッパの国)とタイ人、そしてロシア人と一緒に富士山を見るために愛鷹山(あしたかやま)へ登ったときのこと。
ハイキングコースの入り口にこんなものを発見。
「これは鳥居ですね。ということは、ここは神社ですか」とタイ人が一人で納得する。
このときロシア人から、こんな日本語の質問をうけた。
「山には「やま」と「さん」の読み方があります。これはどう違うのですか?」
「やまは訓読みで日本の読み方、さんは音読みで中国の読み方なんです」と答えると、「それは知ってます。どんな時に使い分けるのかを聞いています」とストレートに言いやがるから、胸にじゃっかんの痛みを感じた。
顔で笑って心で泣いて、「山だけなら「やま」と呼んで、「○○山」と語尾につけるときは「さん」と読みます。だから富士山は「フジサン」です」と話す。
するとリトアニア人が「いままでに「フジサン」と「フジヤマ」の2つを聞いたことがある。フジサンが正しかったのか」と一人で納得する。
そういえばタイかどこかで「フジヤマ」という日本食レストランを見た記憶がある。外国人が使いそうな言葉だ。
英語版ウィキペディアで富士山を見ると、「山(さん)」についてこんな説明がある。
Compound of 富士 (Fuji, the mountain’s name) + 山 (san, “mountain, Mount”, generally only read as san in place names).
「さん」は一般的に地名で使われる読み方らしい。
このときはすぐに話題を切り上げて山登りをはじめたのだけど、ハイキングの途中で「待てよ」と思った。
「立山(たてやま)」「茶臼山(ちゃうすやま)」「笠置山(かさぎやま)「浅間山(あさまやま)」と、語尾にあっても「やま」と読むケースは山ほどある。
だからさっきの説明は正確じゃなかったな。でも、まあいいか。
あの理解でロシア人が今後の日本滞在で、致命的なダメージを受けることはないないだろうし。
それでも多少の罪悪感と興味をもって、「やま」と「サン」の違いを調べてみた。
日本語の使い分けならNHKの基準が参考になると思ってホームページを見てみると、かなり大ざっぱに両者の違いが書いてある。
「○○ヤマ」と耳で聞くと何となく小さめのなだらかな姿を思い浮かべますし、「○○ザン」は大きくて険しい感じを受けます。
「かちかちヤマ」や「花の木ヤマ」など昔話にでてくる「山」には「ヤマ」と読むのが多いのは、こういう語感が影響しているのではないかという。
これに対して「ザン」は、島根の恐羅漢山(おそらかんざん)、福岡県と佐賀県の境の雷山(らいざん)、青森県の恐山(おそれざん)などを例示して、「難しい漢字やいかめしい漢字が使われているものが少なくありません」という。
ただあいまいな場合もあって、徳島では眉山を「びざん」と言うけど、長崎県の島原にある眉山は「マユヤマ」と呼ばれている。
NHKでも「やま」と「さん」を一般的に使い分ける基準はなくて、「この山にはこの読み方を使う」と個別対応をしているようだ。
ということは、親しみを込めるときは「フジヤマ」、敬意を込めるときは「フジサン」でいいのだろうか。
ちなみに栃木県には皇海山(スカイザン)と読む、キラキラネームのような山がある。
さらに詳しく知ろうとネットサーフィンをしていると、かなり精度の高い情報を発見した。
個人情報が出ているのでここでそのリンクは貼れないのだけど、ある人が国土交通省の国土地理院にメールで質問をおくったところ、大体こんな内容の返信がくる。
「やま」と読むものは信仰の対象としないもので、「さん」や「ざん」と読むものは仏教信仰を対象としたもの。
寺の正式名称は「○○山△△寺」という呼び方をしているのがこの説を裏付けている。
もちろん日本中の山がそうではないし、「立山」は信仰の対象だけど「やま」と読む。
「やま」と「さん」の違いは、例外はあるけど、基本的な認識としては信仰の対象かどうかと考えていい。
そういえば「さん」は中国語の音読みで、日本は仏教を中国から「輸入」したからそのへんの関係もあるかもしれない。
ちなみに「嶽」という言葉は、多神教の信仰対象とされた山に付けられる傾向が強いらしい。
ということで、今度あのロシア人に会ったら教えてあげよう。
ついでに人を傷つけない質問の仕方も。
こちらもどうですか?
神聖で汚いガンジス川①インドの裁判所、川に’人権’を認める。動画付き
残念。信仰の対象有無は俗説で間違いです。
国土交通省も随分適当なことをしたものですね。そういう説もあります。くらいに回答すべきですね。
「やま」と「さん」の違いですが、実際にはよく分かっていないんですよ。
しかも同じ山でも地域が違えば呼び方が変わります。
前に言語学者に聞いたことがありますが、どっちで呼ぶかは昔のほうがバラバラで、多数派が生き残った。とのこと。
まぁそれぞれの立場で発言は異なりますから、言語学者が正しいとも言えないと思いますが。
>「それは知ってます。どんな時に使い分けるのかを聞いています」とストレートに言いやがるから、胸にじゃっかんの痛みを感じた。
>ということで、今度あのロシア人に会ったら教えてあげよう。ついでに人を傷つけない質問の仕方も。
???
どうも理解し難い考え方ですね。「私が知りたい情報はAに関することじゃなく、Bに関することであり、それをあなたに質問しているのです」って言ってるのでしょ? それは外国人(特に欧米人)ならば頻繁に使う言い回しだと思うのですが。私だって海外へ行けば現地の人にそういう聞き方をします。別に相手を非難しているわけじゃなし。日本人だからと言って、日本や日本語のことを全て知っているわけでないのだから、答えられないことがあっても当然でしょう。
どうして傷ついたり胸の痛みを感じるのですか?(ま、実を言うと私もある程度の想像はつくけど、それは外国人にはおそらく理解できない考え方でしょうね。)
「やま」と「サン」の使い分けなんて理由あるのですか? 伝統的にその山に対する呼び方として地元の人が使っている方が正しいんじゃないのですかね? 国土地理院のその説明も何だか後付けの屁理屈臭がする。
しょせん、表意文字(漢字)を主たる文字として使用している日本語に対して、唯一の正しい発音はどれかなんて、さほどの意味はないですよ。「日本」は、「にほん」でも「にっぽん」でも「ニッポン(ちゃちゃちゃ!)」でも「Nippon(アクセント先頭で「ニ~ッポン」)」でも、あるいは「ひのもと(の国)」でもいいと思います。
チコちゃんに叱られるところでしたねー(*^^*) お勉強になりました。
言われるとそうかも~って思いました。 四国の石鎚山ですが登る時は「やま」でお参りに行く時は「さん」って言ってます。 知らずに使い分けしてましたね~。
中国地方の最高峰は大山ですが「せん」なのはナゼ?(笑)
読み方だけだと御嶽山は富士山以上のすっごい山ってことになりますね~「御」に「嶽」に「さん」だもん。
この前の御嶽山の突然の噴火で登山者の方が命をなくされました。 太古から御嶽山ってそうだったのかも。
活火山に対しての畏敬の念が山の名前になっているんでしょうね。
それもひとつの見方ですね。
感じ方は人によって違うものですよ。
外国人の質問はけっこう日本を知るいい機会になりますよ。
「天然のエビと自然のエビの違いは何ですか?」というオソロシイ質問もありましたが。
登るときと降りるときで言い方が違うというのは面白いですね。
御嶽は何か厳めしいです。
畏敬の念が込められてそうですね。
あははー、国土地理院という「役所」が言うことだから「かなり精度が高い情報だ」と評価するっていうのは、伝統的な日本人の弱点ですね。役所の言うことが正しい、大手メディアの言うことが正しいなどと、そんな馬鹿げた迷信を信じている日本人は最近はあまりいないと思いますよ。バカバカしい。
役所だろうが、大手メディアだろうが、誰であろうが、言われたことを盲信せず「それは本当なのか? 根拠はあるのか?」と一度は疑って、自分で何かしら根拠を調べてみる程度のことは、ブロガーとしての最低限度の資質だと思います。
その努力を怠るようであれば、それはもはやブロガーでさえなく、単なるネット上の「フェイクニュース伝播者」でしかないですね。
けっきょく最後は自己責任です。
政府機関や大手メディアの情報を信じてもいいし、それより自分の情報のほうが信頼できると思えばそれを信じたらいいのです。
ブログの内容、とても勉強になりました
それにしても、このブログアンチ多いですねw
応援してます
神のようなコメントありがとうございます。
「愛の反対は憎しみではない 無関心です」とマザー・テレサが言ったらしいです。
無視よりはいいかな、と思ってます。
まあ限度はありますけどね。